第11話 開門
街で買い物を終わらせたミノーラとカリオスは、サーナより指定されていた通りに街の正門へと向かっている。
これから街を出るとのことなので、当面の食料と二人の装備品なんかを買いに出ていたのだが、彼女は正直、今日買ったものをそこまで当てにはしていない。
食料は彼女にとって買うものではなく狩るものだし、装備品だって今まで準備したことなど一度もない。
故に、旅をするにあたって準備をするようなものは無いと考えている。
ところが彼女は、耳を出せるタイプの赤いチロリアンハットと小さなリュックを身に着けている。
それらはどちらも、彼女のお気に入りだ。
「新しい街についたら、また別のおしゃれを探しましょう! なんだか楽しくなってきました! カリオスさん! あの聞いてます? せっかくだからカリオスさんも一緒におしゃれしませんか?」
ピョンピョンと飛び跳ねて全身で楽しさを表現しているのに、このカリオスと言う男は全く乗ってこない。
それどころか、呆れたとでもいうように首をゆっくりと横に振りながら両手で天を仰いでいる。
そうこうしていると、正門へと到着した。王都と言うだけあって、非常に堅牢な門である。
ミノーラが知っている小さな集落の門とは比べ物にならない。
しばらくすると、門を見上げていた彼女達に声を掛ける人影がやって来た。
「およ! お二人とも準備はできたみたいですね! ほほぉ! ミノーラさんすごく似合ってますよぉ! カリオスさんも! その籠手! カッコいいですね! 流石はアタシのデザイン。ってなわけで、とりあえずお二人にはここから西の町へ向かってもらいます。一応、そっちでもアタシの名前は通用するはずだから、これを渡しておきますね」
褒めてもらえたお礼を言う間もなく、言葉を紡ぎ続けるサーナ。
そんな彼女はカリオスに何やら封筒のようなものを手渡した。
「念を押しておくけれども、それはラブレターなんかじゃあないんだからね? 決して、一人っきりの時に開けて中身を読んでみようなんてことはするんじゃあないよ? それからぁ、街の場所について! そこは今、少しばかり厄介な状況なんだけど、あの男の目撃証言があったから、行く価値はありだよぉ!」
「厄介な状況とは、どういうことでしょうか?」
サーナの言葉の中から重要な情報を抜き出すのに慣れてきた彼女は、すかさず質問をする。
「そうだねぇ、気になるなら、行ってみればいいと思うよ! 為せば成る! 行けば分かるよ! 何もかも! ってね!」
質問に正しく答えてくれることはないのだと、ミノーラは再度認識を改める必要性を感じた。
それがサーナと言う女性なのだろう。
「街の名前は『ミスルトゥ』。とりあえずはそこを目指してくれればいいかな。あ、そうそう、カリオス君。アタシが居ないからって逃げ出そうなんて考えないことだよぉ? それを外せるのはアタシだけなんだからねぇ。ちゃんと役割さえ果たしてくれれば、お礼はしっかりとするつもりだし」
そういうと、サーナは門番の下へと歩み寄り、門を開けるように指示を出した。
言われるままに、門がジワジワと上昇を始め、この王都を囲む壁の外が露になる。
「ミスルトゥ…どんなところなんでしょうか。風が気持ち良い場所だったら良いですね」
門の外から吹き込んでくる風の冷たさを、鼻先で感じ取ったミノーラはなんとなくそう呟く。
その呟きを聞いていたのだろうか、カリオスは額に手を当てながらため息をついている。
サーナはと言うと、ミノーラに対して含み笑いをした後に、こう言い放った。
「大丈夫さ!少なくとも、この王都よりは風通しが良い筈だからねぇ」




