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龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
少年期
4/41

それぞれのやり方

 あれから五年が経過した。

 リッパーナ王国の東端、オキナ山中腹がヨーフの隠れ家だった。

 その家から五分ほど歩いた先にある、森の広場。



 ユージンの金の前髪がわずかに散る。

 フィーロの大剣の威力は、それほどまでに凄まじい。

 が、その大振りは全て空振りに終わっていた。


「……ねえフィーロ、そろそろやめない?」


 ユージンの剣も両手剣だが、フィーロのそれよりも圧倒的に軽い。

 というか、フィーロの大剣が人並み外れて大きいのだ。齢十歳で振れるだけでも大したモノだが、その威力に比例して重量も尋常ではない。


「……続ける」


 滝のような汗を流しながら、フィーロは無愛想で頑固だ。


「確かにそれ、強いけど、当たらないと意味がないよ」


「そうだな」


「このままじゃ、試験で勝てないんじゃない?」


「一発当てれば、勝てる」


「そりゃそうだけど。フィーロがタフなのは認めるけどさ」


「それよりもっと大きい威力がいる」


 ぶん、とフィーロは重い大剣を振った。



 汗だくに成りながら、フィーロはまだ素振りをしている。

 いつものように、倒れるまで続けるだろう。

 一方ユージンは休憩だ。適度な休憩を入れなければ、逆に身体を壊してしまう。

 広場の端で、陶器の杯で酒を飲みながら二人の修業を見守っていたヨーフに、ユージンは水を飲みながら尋ねた。


「……って話なんですけど義父さん、どう思いますか? 龍騎士団の入団試験って、現役団員との手合わせもあるんでしょう?」


「まあ、そうなんだが。ただ、あれはあれで正しいんだよなぁ」


 フィーロの剣風は、ここまで届いてきそうだ。


「どういう事ですか?」


「ドラゴンは、でかぇ」


「はい」


 ユージンの記憶にも、刻み込まれている。

 あの龍達は、その一体一体がこの森の木々よりも巨大だった。


「対人とはまったく違う。だから、あの大振りもある意味合理的なんだよ。アイツの想定している対戦相手は、人間じゃない。振りゃあ当たるんだから」


 ただ、防御とか完全に無視してるけどな、とヨーフはぼやく。


「……お前らと会った時、龍を殺す方法が二つあるって言ったよな」


 不意に話が変わったが、ユージンは頷いた。


「それも憶えています。その一つが龍騎士団に入ることだと。龍の皮と鱗で作った鎧、骨で作った剣。そして人間ならではの集団での狩猟ですよね。ボク達が目指しているのも、それです。でも、もう一つは無理ですよね」


「お伽噺の世界だからな」


 無精髭を撫でながら、ヨーフも苦く笑った。


龍狩(ドラゴンバスター)。龍と拮抗可能な単一戦力でしたっけ。でも、フィーロなら……」


「無理だっつーの。人のままじゃ龍には勝てねえよ。まあ、それに近付く方法ならあるんだが、お前には伝えとくか……アイツと違って分別があるからな」



 ユージンはそれを聞いた。


「ボクには無理です」


 それが彼の答えだった。

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