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第9話 1月23日 ゲーム初日

「紫苑くんてさ、いつも部屋に籠っているけど、何してるの?」




学校の帰り道、いつも気になっていた疑問をぶつけてみた。




「あー、お前、記憶ないもんな…どうせ否定するから、教えない」


紫苑は、いつもの無表情で淡々と返答する。




「えー、何よ?人の趣味を否定したりはしないよ!…で、何?」


本当です、私は何であれ、人の趣味を否定しない、断じてしない!




紫苑は、言うか言わないか、少しだけ考えたようだが、


「…ゲーム。今は、ハンモンかな」




「ハンモンって、あのハンモン!?紫苑くん、やってるの?」




ハンモンというのは、ギルドに所属しているハンターが、襲いくるモンスターを倒していく、アクションゲーム【Hunters of Monster】の略称のこと。




「私もやりたい!紫苑くんの部屋に行っていい?」




「…お前、確か、ゲーマーを蔑んでいたよね?何か企んでる?」




想定外の返答だったのか、私を信用できないのか、訝しげな表情だ。




「ふふふ、私…多分、強いよ?」




「ハンモン、やったことないのに?」




「私にはわかる、私は強い!」




「お?じゃ、やってみるか?」




「やったろやないかい!」




二人並んで、玄関から早足で階段を昇り、紫苑の部屋に入った。


特に広くはない部屋に、PCデスク、ゲーミングモニター、ゲーミングチェアの圧倒的存在感。


あのヘッドホンは、ゲームをする時に使っていたんだな。




「THE・ゲーマーって感じの部屋だねぇ」




過去の私は嫌いだったようだが、今の私はこの感じ、嫌いではない。




「そっちは、別のゲームで使ってる。ハンモンは、こっち」




紫苑は、携帯ゲーム機を差し出す。



懐かしいな…そうそう、私、このゲームをやりこんだ気が…する?


一瞬、今、手の中にあるのとは違う色の携帯ゲーム機で、プレイしているビジョンが見えた。




「3月に拡張版が出るから、その時は…どうした?」




急に黙り込んだ私に、不思議そうな顔で、紫苑が尋ねる。




「…紫苑くん、私、本当に、ハンモンやったことないの?」




「やったことがないどころか、触れたことすらないはずだけど?」




…いや、確かに、このゲームをやっている記憶がある。


紫苑の知らないところで、やっていたのではないだろうか。




違和感を感じるが、気のせいだと思いたいような、思いたくないような。




「セーブデータ、見せてね」




セーブデータは、3つまで作ることができる。


そのうち、2つのデータがあった。




「上のが一番レベル高いから、これがメイン?」




ロードすると、最強の装備にレアな装飾品が揃っていた。


全武器、しっかり最高レベルまで作ってある。


こうなるためには、相当の時間と労力を費やしているはず。




「もう一つ、データがあるけど、これは?」




「メインデータは男キャラでソロメインやるけど、女キャラの装備も欲しいから、2つ目のは野良マルチとか気楽に遊ぶためのサブデータ」




つまり、男キャラは、速さを競ったり一人で強敵に挑むためのデータで、女キャラは、協力プレイなど、ゆるく楽しむためのデータということか。


なかなか、そこまでやる人はいない。




「ガチのガチですねぇ、兄貴」




「いや、それほどでも」


あの紫苑が、なんだか嬉しそうだ。




「この空いてる3つ目のデータ、使っていい?後で消してもいいから」




「別にいいけど」




「じゃ、ちょっと借りてくね」




紫苑に借りた携帯ゲーム機を、自分の部屋で始める。


まずは、キャラクターをカスタマイズして、新しくセーブデータを作る。


これには、プレイヤーの趣味嗜好が反映されると思う。


それは、理想像だったり、自分自身だったり。


私は、自分に似せてキャラ作っちゃう。




武器は、この合体武器。


火力を出すには手順を踏まなくてはならないけれど、当てた時の派手な演出とダメージがたまらないのよね。




…しかし、解せない。


やったことがないはずなのに、何の説明もなくここまで進められるなんて。


やっぱり、やったことがあるんだよ。




「紫苑くん、ストーリーここまで進んだよ」


ドヤ顔で、ゲーム機を差し出す。




「このキャラ、お前そっくりじゃん」




「私は、自己投影タイプなんです〜、自分が戦ってるみたいで楽しいでしょ。名前は、身バレ防止のため、多少もじっちゃうよね。絵梨花の梨から、”なっしー”」




「ていうか、お前、この武器使えんの?素人には難しいはずなんだけど」


紫苑が、私のデータを見るなり、驚いている。


かなり複雑な操作なのだが、指が覚えているかのように、難なく動かすことができるのだ。


「…不思議だよね」


絵梨花が実は隠れてやっていたのか、絵梨花の別人格が誰も知らないところでやっていたのか、そうでないと説明がつかない。


絵梨花の別人格であっても、絵梨花が未経験であることを、できるなんてことが、ありえるのだろうか。

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