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五大老筆頭 徳川家康  作者: 牛熊


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5.唐入り -3

 一方その頃、豊臣政権には奥州・出羽以上に大きな問題が発生していた。


 天正19年1月22日、政権の要でありこれまで秀吉を支え続けてきた弟の秀長が病死したのである。

 加えて、後継者とされていた鶴松も同年8月5日に病死。

 

 これにより豊臣政権の運営・維持に大きな支障が発生することになる。




 秀長は秀吉から調整役として重用されており、その人柄から諸大名達からも信任が厚かった。


 また、秀吉が大きな計画を立ち上げる際、裏方として支え続けたのも秀長であり、一門衆が少ない秀吉にとって代替の効かない人材を失ったことは大きな痛手だった。


 秀長の仕事は政権内の他の人材に割り振られることになるが、現場で叩き上げてきた信頼厚い秀長の代わりが務まるはずもなく、人付き合いの下手な石田三成を筆頭に諸大名との軋轢が増え始めることになる。





 そして豊臣政権における最大の問題が鶴松の死亡である。


 秀吉には他の子供がおらず、この時点で血縁に従った後継者が皆無となる。

 養子はいるものの、正当な後継者として認められた者はいない。


 つまり秀吉が急死した場合、本能寺の変の後と同じように後継者を巡る争いが発生することになる。



 秀吉は天正19年8月に唐入りの決行を全国に布告し、肥前国に出兵拠点となる名護屋城を築き始めていた。


 この状況で国内の差配をするのも限界があり、そこで白羽の矢が立ったのが豊臣秀次だった。




 豊臣秀次。

 豊臣秀吉の姉の長男として生まれ、数少ない豊臣一門の中で第2世代の最年長者として活躍する。


 小牧・長久手の戦いでは失態を演じたがその後は様々な戦で功績を上げており、領内の当地や政治的な手腕も高かったことから秀吉からの信任も厚かった。


 また、教養の水準や剣術の腕前も高く、能楽などは後世に影響を与えている。

 女好きの側面もあり、類似点の多さから秀吉とも上手くやっていた。





 その秀次は11月28日に権大納言、12月4日には内大臣に叙任される。

 そして12月20日の秀吉による訓戒条を経て、12月28日に関白就任と出世街道を高速で駆け抜ける。



 秀吉の養子の中で他家に出ておらず、かつ功績が飛び抜けているのが秀次だったため、この人選自体は不思議ではない。


 加えて、秀次は教養が豊かなこともあり公家と親しくしていた。


 秀吉も能や和歌を始めとする教養の水準が高かったため、自身の代わりとして公家との折衝も多い政権運営を任せるには秀次はうってつけの人物だった。



 しかし、秀次は元々尾張の百姓の倅であり、秀吉並みの立身出世を果たすとは本人も思っていなかった。


 当然ながら政権運営を任せられるだけの人材も抱えておらず、秀吉から多くの人材を与えられることで対応することになる。




 こうして豊臣政権は唐入りを進める秀吉と、国内統治機構の整備を進める秀次という二元政に切り替わっていく。


 そして秀吉は年が明けた文禄元年3月、16万の軍勢を朝鮮に送り込み、本格的に唐入りを進めていくことになる。




 そんな中、家康は秀次に呼ばれ非公式に訪問していた。


 秀次は猿顔・小兵の秀吉とは似ておらず、厳つい顔立ちで体格もよく、まさしく戦国武将の鑑のような人物だった。


 しかし、その秀次の顔は疲れをにじませており、時折咳をするなど健康面に問題があるように見えた。



「お久しぶりです秀次様。顔色が優れないようですが大丈夫でしょうか?あと、このたびは内密にということでしたが、どういったご要件でしょうか?」


「...家康殿、私にはもう秀吉様のお気持ちが分からなくなりました」



 唐突な秀次の発言を聞いて、家康は気を失いそうになった。

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