第28話 土葬屋 10
28話目投稿しました!!
次は明日に投稿したいと考えてます!
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私は魔王軍四天王の一人、土葬屋のノームリア。
私の能力は“生物に呪いをかけて、その生物の胎児の身体を乗っ取る事が出来る“と言うものだ。
実質、私の本体はその呪いだ。
解呪されてしまえばそれまで、死んでしまう。
少し昔話をしようか。
それは私が初めて生を受けた時のことだ。
私の両親は人間とアラクネイヤ。
何やら数百年前、魔界から人間界に迷い込んだアラクネイヤが人間に恋をして子供を作ったらしい。
しかし母のアラクネイヤは私を産んだあと直に死んでしまった。
残された父は私を一人で育てるようになった。
幼少の時は背中から蜘蛛の脚が生えていたり等のアラクネイヤの特徴は無かった。
しかし歳を重ねる毎に背中の脚は生え、長くなり隠す事が不可能になってしまった。
父は気にする事なく私に名一杯の愛を与えてくれた。
私も父の事が大好きだった。
しかし、私が他の人間から見て普通ではないという事に、村の人間が気付いてしまった。
そして、私達は殺された。
家に火をつけられて。
そのときに死んだのは父だけだった。
父は燃え盛る家の中、私の蜘蛛の脚をナイフで切断した。
その後父は外へと送り出してくれた。
父を殺した馬鹿な人間たちは私が普通の人間の姿をしているのを見て勘違いで殺してしまったと錯覚し、その後私は父の知り合いの子供のいない夫婦に引き取られた。
そこで私が愛される事は無かった。
人間という生き物は一度疑うと永遠に疑い続ける、浅ましい奴等だ。
彼等にも子供が出来たらしく毎日愛おしそうにお腹をなでていた。
羨ましい。
何故まだ姿を表していないのにも関わらず愛されるのか。
やはり自分で産む子供でしか愛せないのか?
私は、嫉妬で狂いそうになった。
いや、そうになったではない、狂っていたのかもしれない。
そこで私はあの能力を手に入れた。
これで私も愛される、この忌々しい身体からおさらば出来る。
私は夫婦が寝付いたあと、呪いをかけた。
そして私は森の中に入り人知れず一人、木に縄を括り付けてこの世を去った。
不思議な感覚が私に降りかかってきた。
精神だけ抜けたのか、私の魂は流水の様に呪いをかけたあの人に流れ込んだ。
そして私は産まれた。
これでまた愛される、幸せになれるんだ。
しかし、忌々しい背中の脚は付いたままだった。
案の定彼らは揉めに揉めていた。
何故人間では無くこんな化け物なんだと。
アイツの呪いか? 恨んでいるのか?
私はそんな彼らに喋りかけた。
私を愛して、と。
そこでまた死んだ。
今度は一瞬の苦しみではなく、蹴る殴るの暴力を受けた末、いつの間にか死んでいた。
そしてまたあの感覚が起こった。
次目を覚ました時は、辺りには如何にもという風貌をした男たちがおり、一番近くの男はナイフを握り締めこちらを怯えた表情で見つめていた。
私はナニカから這い出る。
私が這い出てきたナニカに視線を向ける。
それは私の母だっただろうナニカだった。
目の前の男が腹を切り裂いたのだろうか?
私は栄養が足りなかったのでナニカを食べた。
男達はその様子を震えながら見つめていた。
なんだ? 餌にでもなってくれるのか?
遠慮なく頂いた。
私はただ愛して欲しいだけだった。
男達を頂いた後、私は自分の能力について研究し、何ができるのか試した。
様々な応用の仕方を知り、いつの間にか私の隠れ住む洞窟は、人間界で凶悪な勢力の一つとして数えられていた。
ある日の事、隣国の権力者達が私を危険だと判断したのか討伐隊を派遣してきた。
人を攫って解剖したり、子供を強制的に産ましたり等、非人道的な行為の数々、許されるわけが無かった。
戦闘能力が皆無な私はすぐ捕らえられ殺されそうになった。
その時、ある一人の青年が目の前に現れた。
青年はとんでもなく強く、1000人以上はいた討伐隊を皆殺しにした。
青年はこう言った。
「お前の望むものは?」
「愛が欲しい」
彼は、私に愛をくれた。
それはけして彼が私を愛してくれる訳ではなく、彼の愛という欲望、力そのものだった。
私はそれを受け入れ強くなった。
能力も向上し、それにより子供達に自分の魂を少し分け、自分自身の分身を作り出す事にも成功した。
これでもっと効率よく愛してもらえる。
しかし、生まれ変わりを続けても必ず産んだ母は死に、父には恐れられた。
だから呪いなのかもしれない。
この呪いはかけられる生物に対しての呪いでは無く、この呪いをかける本人自身を蝕む呪いだ。
決して欲望が叶うことは無く、日に日に肥大化していくばかり。
そんな事を繰り返していく内に今の私になった。
残りカスが今の私だ。
残りの魂が、彼から、魔王様から頂いた愛という欲望の力に支配されそうになっている。
……勇者は私を愛してくれるのだろうか。
ふと気が付くと暖かい光に包まれた空間にいた。
自分の身体を見ると醜い赤ん坊の姿だった。
背中からは蜘蛛の脚が生えている。
急に誰かに持ち上げられた。
そちらを見ると勇者が私の事を抱いている。
「私は貴女を愛します。貴女は沢山の人を殺しました。それは貴女なりに理由があったから。理由があるから殺してもいいとは言いません。ですが私は貴女を愛します。これまで愛されなかった分も、沢山愛します。だから、これ以上人を殺して自分も殺さないで」
……こんな醜い私を愛してくれるというの?
欲望に飲まれ、肥太った私を愛してくれるの?
もし、彼女から産まれれば彼女は死ぬだろう。
そしたら本当に愛してくれる人がいなくなってしまう。
……産まれたくない。
私は、産まれたくない、この人を殺したくない。
私は呪いを手放す。
彼女の心の片隅で生き続けよう。
私は瞳を閉じた。




