表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

奔放な姫を守るナイトって感じ -side亜由美-



恋に近い感情だったんだと思う。


カリスマ性って、運や努力じゃなくて、持って生まれたものなんだと思った。



子役としてそれなりに頑張ったと思うし、モデルもまぁ自分で納得できるくらいやったと思う。


女社会は怖い。


可愛いし実績もあるし、話し方もこんなんだし、アタシは標的になりがちだ。


コンテスト出場者全員で受けるレッスンの休憩中、あからさまに陰口を言われて、めんどくさいからアタシもだんまりを決め込んでいたのにエスカレートして。

アタシはハイハイまたその感じねぇーって飽き飽きしてたんだけど、急に麗さんが「ねぇ誰か爪切り持ってないー?ささくれ痛いのー」って明るく割り込んでくるから、そんな空気が霧散しちゃった。


変な子と思ってたら、アタシの後ろを通り過ぎるときにポンと肩を叩かれて、助けられたんだと知った。

慣れっこだしどうでもいいと思ってたのに、それがこそばゆくて、動悸がしばらく止まらなかった。


麗さんが何か言われてるとき、アタシは知らんぷりしてたのに。

あーあ、スタッフや講師として来てる人と仲良くなって目立ったらそりゃいろいろ言われるわよバカねぇって感じで。


あの、一言で空気を変えられる才能を、カリスマ性と呼ばずして何と呼ぶのか。

これが、ほぼ同世代の友達がいないアタシと、友達の多い“人たらし”の彼女との違いか。

何故か、それから、彼女を目で追ってしまっていた。


そして何の因果か、コソコソと麗さんの持ち物にイタズラしている場を見てしまって、すかさず証拠写真撮った。

気付いて慌てふためく麗をクスクス笑うその子達に、変えたてのネイルを見ながら、スマホで写真をチラチラと見せてやった。


「ふぅん、さっきアナタ達がその子の荷物漁ってるとこ見ちゃったんだよねぇ。アタシ全然興味ないんだけどぉ、手が滑って運営の人に送っちゃうかもねぇ?そしたらぁ、コンテスト出られないかもねぇ?」


怒りと恐怖に表情の固まるその子達。

こんな些細なことで出られないことはないだろう。スタッフや審査員からのイメージは大幅マイナスだろうが。こういうハッタリは残念ながら得意だ。


「フフフ、ひっどい顔ぉ。アナタ達、性格“も”ブスなのねぇ?」


人を貶める趣味はないが、報いる方法は無数に知っている。

ニコニコとその子達に二度とやらないと約束させて、写真を目の前で消してあげた。もちろんバックアップはそのまま。


まぁ、しばらくは大人しくしているでしょう。

めんどう事に首を突っ込むなんて、らしくないことをした。


それを呆然と見ていた麗さんは、その子たちが去るとアタシに駆け寄って来て両手を握られた



「亜由美さん!ありがとうーー!!」

「別に助けたわけじゃないですよぉ。あの子らにムカついてただけですぅ。」

「えっ!何それ可愛い!」

「ちょっ、くっつかないでよ!」

「ツンデレってやつ!?ときめいちゃう」

「やめてよ恥ずかしい!はーなーしーなーさーいーよぉぉぉ!!!」


ぎゅうぎゅうと同世代の女の子に抱きしめられたのなんて、初めてだ。


そして麗さんはことあるごとにアタシに構うようになった。

何そのコミュ力。


結局、コンテストではアタシがグランプリ。

麗さんが審査員特別賞だったのに、麗さんの方が楽しそうで生き生きしていた。


それが、今後を考えるいい機会だったんだと思う。

正直モデルとしての限界を感じていたし、いつまで続けるんだろうって思っていた。

親は続けて欲しかったみたいだけど、親の意向でずっと子役もモデルもやってきて、いい加減自分のやりたいことをやるのだと大喧嘩の末やめることにしたのだ。


「あっ、ねぇ亜由美ちゃん、モデル辞めるんだって!?」

「…まぁねぇ」


急に連絡してきて、最初は引き留めに来たのかと思った。

まためんどくさいなぁと思ってたのに、


「あのね、あたしモデルやめて会社作るんだけど、一緒にやらない!?」

「はあぁぁぁあぁ!??」


作った笑顔や練習した表情じゃなくて、最後にいつしたかわからない地の表情で、思いっきり出したこともない声が出た。


「SNSのことやるんだけど、発信苦手で!亜由美ちゃん写真とかめっちゃ綺麗でコメントもマメでしょ!亜由美ちゃんが紹介したコスメ欲しくなるもん。だから手伝ってほしいの!お願い!ね!」


と、拝み倒されたのだ。


アタシのことを知って、評価してくれていたのが嬉しかったんだと思う。

だって、いつも褒められるのは完璧に取った自撮りか、フォロワーの数だったから。


モデル辞めても何をやるかも決まってなかったし、押し切られる形で手伝うことになった。


うちの親なんて反対してても何でもよかったのに、麗さんってば、ちゃんと挨拶に来て丁寧に回答していて、最後には親の方からうちの亜由美をよろしくお願いしますと言っていた。

今や帰る度に「麗ちゃんはどうしてるんだ」と両親に聞かれるほど。


かと思えば想像以上にノープランで「アンタバカなの!?もぉちょっと考えてから動かして!!」と説教しながら、2人で徹夜したのはいい思い出だ。もう二度とやりたくない。

そして近くにいるとわかるけど、美容にかけてる時間がアタシの半分以下。それにムカついて八つ当たりしたこともあった。


そんなのが遠い昔に思えるくらい、麗さんはその才能とカリスマ性でメキメキと頭角を現していった。


アタシはアタシで経理や事務処理、仕事のリマインドなど、こまごまと動くのが向いていたようだった。

引っ張って行くのが得意な麗さんの補佐、社内の緩んだところを締めるのがアタシの仕事。


足の引っ張り合いの中生きてきたアタシは、人の悪意を見定めるのも得意だった。アタシを舐めて本性出す輩も多いので、好都合。

嫌われ役も汚れ仕事も結構好き。

ごめんねぇ、ふわふわしてるのは外見と喋り方だけなのぉ。

すぐ人を信じる麗さんといいバランスだった。




あれっと思ったのは達海秋という男だった。

創業期に見返りなく力を貸してくれるから少し警戒したが、その実ただの厚意…いや好意だった。


写真の腕は文句なし。

聞けば親もフォトグラファーで、小さい頃から教わっていたのだそうだ。それ故顔も利く。その人脈も上手く活用できる度胸と愛嬌もある。

飄々として穏やかに色気を振りまいて、王子なんて呼ばれたりするくせに、麗さんの前だと小学生のようだった。


麗さんも麗さんで、秋くんには気を許して甘えているようにも見える。

普段は意思決定も早く、堂々とした立ち居振る舞いは女王様さながらなのに。

アンタそんな顔、彼氏の前でしないでしょう。

困った顔も、怒った顔も、不機嫌な顔も、照れた顔も。


だいぶ前だが、秋くんに彼女ができたと聞いたとき、キラキラした顔で詳細を聞こうとして突っぱねられ、後から取り憑かれたように仕事に没頭していた。そんなことするくらいなら本人の前で凹んで見せたらいいのに。ちなみに秋くんも凹んでた。ホント何やってんのよアンタたち。


作業の合間の休憩中、目の前で繰り広げられるじゃれ合いを、ご飯を食べながら見守ること多数。最初こそ気を利かせて席を外していたが、まるで意味がないことに気付いてからは一緒に食べている。未だに進展する気配はない。


「そうだ!ねぇねぇ亜由美!次はこれやりたいの!」

「はぁい、今度はなんですかぁー?」


アタシは食べかけのおにぎりを一回置いて、ノートパソコンを引き寄せた。

そうやって出してきた麗さんのジャストアイデアをパソコンに打ち込みながら、深掘りしていく。

同時進行で脳内でどこに誰をアサインするかや段取りを組み上げていく。


「あぁ、それはその人に話さない方がいいですぅ。多分邪魔してきますよぉ。後からアタシを通してください」

「えっ。そうなの!?」

「櫻井さんと橘さんは力になってくれると思いますよぉ。」

「そうと決まれば!話通してくるね!」

「ちょっとは考えてから動いてくださぁい」

「わかってるって!行ってきます!」


思い立ったら即行動の麗。止めても止まらないなら、その先でフォローするしかない。

また忙しくなるなぁとパソコンに案を打ち込みながら、必要なところへ先回りしてメッセージを送った。

一部始終を見ていた秋くんが肩を揺らしている。


「亜由美さんって、奔放な姫を守るナイトって感じですよね」

「言い得て妙ですねぇ。それ見抜く人なかなかいないですよぉ。女王様とメイドはよく言われますけどぉ」

「ビジュアルなら女王様とメイドが妥当ですね」


きりっといつでも人の輪の中心にいる美人な女社長、その社長を支える妖精のような愛らしさの社長秘書。

麗さん、付き合うならその本性がわかってる男がいいと思うわよ。


「ナイトは早くお役御免になりたいのでぇ、奔放姫を掻っ攫ってさっさとまとまってくださーい。拗らせ王子?」

「……亜由美さんさぁ、その性格、外見に合ってなさすぎ」

「こうでもなきゃあ、社長秘書なんてやってられませんよぉ」


社外でも社内でも、麗さんを守るナイト。

嫌われ役のNo.2という役回りはなかなか天職なんじゃないかなと思う。


ナイトが気に入ってるのはホント。

姫を掻っ攫ってってほしいのも、ホント。


惚れたのは才能か、人柄か。


麗さんとキスやらそれ以上をしたいわけじゃない。

恋愛対象は男性だ。


でも、友情というには激情で、憧れというには現実味が強い。

うーん、やっぱ恋かな。


それを秋くんに言ったら、可哀想なくらい狼狽えていたから、


「冗談だよぉ。悪い魔女に取って喰われる前に、しっかり姫を捕まえといてくださぁい?ヘタレ王子?」


今後誰にもーー本人にもーー言うつもりのない感情を、冗談ということにして、そっと蓋をした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ