0046暗殺者たちと孤高の王
俺は口笛を鳴らす。
「凄えな。これが全部俺のものか。ははは、大したもんだ」
振り返れば、ズールがクラネアを抱きかかえたまま、数々の値打ち物を、今まで見たこともないとばかりに凝視していた。俺は鼻の下をこすった。
「ズール、俺はこれを全部持っていくほどがめつくはない。クラネアと一緒に生きていくんだろう? 半分持ってけよ」
「いいのか?」
「異名についてグランザルを勘違いさせた裏に、クラネアやガドニスの芝居があったんだ。それがなければグランザルは決して湖になんて飛び込みやしなかった。十分な貢献だ。この金銀財宝を使って、2人で充実した余生を暮らせばいい。それに――」
「それに?」
「月光を頼りに森の中を進んでいた際、あんたから、大海賊『骸骨』とリゲール国王との裏の癒着について教えられた。それで俺は最後の仕事を得た心持ちになったよ。今からそいつを果たしに行く」
ズールは眉をひそめた。
「まさか……」
「何、資金はここにある。たっぷり時間をかけて仕留めるつもりだ。危ないことは何もない」
クラネアは大男にしがみつきながら溜め息を吐いた。
「とことん暗殺者だな、お前」
「あんたとは知り合って少ししか経ってないが、今は戦友のつもりだ。遠く幸せを祈っているよ。……じゃあな、ズール。また会えて、助けてもらって、嬉しかった。チャベス、しっかりこの館を――財宝を守っててくれよ」
チャベスは首肯した。
「仰せのままに」
「それじゃ、俺とはここまでだ。……あばよ」
俺は少量の財宝を帯びて館を出た。振り返ることなく、森を歩いていく。そうさ、セグリット。俺はあんたの言う通り『水蜘蛛』だ。所詮真っ当な人間じゃないのさ。
(エピローグ)
大海賊『骸骨』元頭領グランザルがひっそり死んで半年後。
フネス国王リゲールは急死した。
7人の暗殺者に対して怯えつつ、それでも公務で川に架かる木製の橋を渡っていた際だ。
下の水流から突如垂直に投げつけられた槍に、股間から脳天まで串刺しにされたのだ。
護衛兵が曲者を探したが、川の中を悠々去っていったであろう犯人にほぞを噛むだけだった。
その後、ミゼッタ姫がフネス国初代女王となって、歴史の大河は茫々と流れていく……
これにて完結です。ご愛読ありがとうございました!(´∀`=)




