イベントスキット5 原因
清人、ジャックが苦戦を強いられる少し前、一、篝、アニの過剰戦力一向は悠々と茶色い道を闊歩していた。
流石に使える方の脳筋が集結した結果、一向が歩いた後は文字通り死屍累々といった風で、腐乱死体の山が乱立している。ーーそれでも後の清人のリスポン率には遠く及ばないが。
「あれ、何やろうな」
一の視線の先には立て札があった。ハザミでも立て札は結構な頻度で目にするもので、普段なら別段意識しなかっただろう。
が、ここは墓守の領域。罠の可能性も踏まえてキチンと読むことにすることにしたようで立て札の前に集合する。
「『武者修行』?」
要約すると立て札には、『押すとリスポン率が上昇する代わりにグループの進行が早まる』と書いてある。
「こっちは火力過多やし、あの二人が進行するんなら楽な方が良いやろ」
そう一が言うと篝も同意して傍に設置されたボタンに手を伸ばす。
それに待ったを掛けたのはアニだった。いつになく剣呑な雰囲気である。
「すとっぷ…そんなに上手い話しが本当にある?ここが敵地と考えれば怪し過ぎることこの上無い」
「そうやけどあっちは清人とジャックやもんな…」
こちらが過剰戦力ならばあちらは過小戦力。
燃費の悪い清人とそもそも出来る事の少ないジャックのペアでは途中でリタイアしてもおかしくない。
「それに…刻印の通話が出来ない。これが不安」
清人の右手に刻みつけられた刻印はアニとの通話を可能にしていた。
元々プライバシーを完全に無視した代物だったが、今日では携帯代わりに使用もとい悪用されている…のだが今は完全に繋がりが切れていた。
「アニは…いや、当人にそのつもりが無いのは百も承知だが愛が重いような気がする。…私も人の事言えないが、な」
そう言う篝の表情は明るい。彼女も彼女なりに気持ちが整理されたようで今では時折こんな自虐を口にするようになった。
「いえす。大丈夫、自覚あるから。でも、女の子は嫉妬深くてなんぼって清人言ってた」
「あいついつか後ろから刺され…あ、吸血はされとったわ」
「私は…団長が少し苦手だ。何だか正々堂々としてなくて…姑息?卑怯……悪知恵が回るところが男らしくないのが少しな」
「篝、それ相当貶めとるで。清人も可哀そうに…」
清人の感知しないところで壮大にディスられているのだが勿論本人は知る由もない。
「…そう考えると押しても良いような気がする。あの二人は取り分け女々しいから私たちが縛りをするのが道理ではないか?」
「ほいじゃ、押すわ」
言うのが早いか一はボタンを押してしまった。
そしてーー何も起こらない。
「…何も起こらんの」
「……もしかして、やはり逆だったか?」
「多分、めいびー…」
ヒッと一の声が漏れる。
それもそうだ、アニという殺意高い系女子の逆鱗に触れてしまったのだから。
「…篝。亭主には首輪位付けないとダメ」
「そうだな。…以降は気をつけよう。今回は私が助長した面も否めない。お叱りなら私共々頼む」
…その後、こちらに敵が全く出現しなくなったことが確定すると主に一は更に傷を増やす羽目になるのだった。




