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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
魔獣両断、月華勝負
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連理の鶴翼【後編】

『剣聖』の刀が折れた。

『剣姫』の少女はこれを好機と見てーー。


「ワリャが黙っとる訳あらへんやろッ!!ドアホ!!」


少女の脳天を木刀が揺らした。

『鉄打ち』の少年が割り込んだのだ。


「悪い、抜かった…けど。俺の刀が…」


「分かっとる」


糸目の少年が一本の刀を『剣聖』の少年に渡した。

銘は『縁徹よすがとおし』。


『鉄打ち』の少年が最初に作った刀は三本ある。そして、それらは三本一組の刀だった。


少女の『久遠護くおんのかみ』、それには少女と『剣聖』の少年が護られるように願いを込めた。


『剣聖』の少年の『永遠結とわむすび』には少女と『剣聖』の少年が結ばれるように願いを込めた。


そしてー鉄打ちの少年が持っていたこの刀、『縁徹よすがどおし』の由来を少年は誰にも言わなかったが、それにはーー。


二人の良き友でありたいと、そう願いを込めた。


皮肉な話で、唯一『鉄打ち』の少年の願いだけが成就していた。


この場に於いてすら糸目の少年は二人の親友であろうとしたのだから。


「ワリャの刀や。…かがりの目ぇ覚まさせれるんなら使い潰しても構わへん。…征けよ、親友」


『剣聖』の少年は糸目の少年から刀を受け取り、抜刀した。


「ちょいと使い潰させて貰う…感謝するぜ、親友」


『剣聖』の面構えはいつの間にか変わっていた。


そこには悩みの一片もありはしない。

晴れ渡る空の様に眼前の少女の心に届く一刀を放たんとする気概、それだけが残っていた。


「『比翼の羽根』改め…『連理の鶴翼』。俺は一人じゃない…」


故にこそ、勝機は何度でも訪れる。


剣戟の極致、『連理の鶴翼』。

その効果は手数の増大だけではない。


一撃、一撃と重ねれば重ねる程に疾くなる。


「これが、俺の…俺達の絆の力!ーー『断影』!!」


少年が分身するーー。


上昇し続ける速度が生み出す残像が少女を惑わせる。


「すなまいな…かじ


戦闘が始まってから初めて少女は口を開いた。


「私は…」






「もう、惑う事は無い」



突き、それは攻撃パターンの中で最速を誇る。

『剣姫』のものとなれば威力、速度、共に正に破格の威力を持つ事になる。


『鉄打ち』の少年はそれを見てしまった。

『剣聖』の少年の胸に、血の紅い花が咲き乱れたのを。


『剣聖』の少年は呆然とした表情で少女を見つめていた。


少女の額には鬼の角。少女は人間であることを放棄して越えてはいけない一線を越えた証があった。


「あ…あぁぁ……っ」


『鉄打ち』の少年は余りの光景に言葉を失う。


月を背負って血にまみれながら恍惚に浸るその少女の姿はーー正しく空想上の産物、『鬼』だった。


「すまないな、梶。お前が生まれ変わったら何度でもまた私が殺してやるから待っていろ」


少女の姿が変わるーー。

美しい黒髪は月に映える銀髪に。

鬼の意匠のある籠手を付け、赤い瞳は爛々と輝く。


「魔獣、カガリノマエ。月の晩に決闘する者。私に殺されたい梶は来るが良い」


『手打ち』の少年は『剣聖』の死体を担ぎながら逃げた。

振り返らずに。


『剣聖』の死体に執着しそうなものだが、カガリノマエにとってもうそれは愛した少年の抜け殻でしかない。


生まれ変わって、再び殺して愛をする為に月の晩に鬼は現れ続ける。



■■■■■■■■■


《一凩》



「そっからワリャ何度も魔獣に挑んだ。その度に負けて来た…曰く、『梶以外は殺さない』んだと。要するに…剣の冴え方が『剣聖』並じゃないとマトモに取り合わないって塩梅での。そんなこんな、ワリャも『比翼の羽根』を使えるようになっても負け続きで、の」


ワリャが話を切るとハールーンは既に寝とったわ。


寝物語にしてくれって言った手前何も言えへんけど。


「ねぇ、一」


「およ、ジャックは寝とらんかったんかい」


南瓜頭がカタカタと揺れる。


「君はもしかして、篝の事が好きだったんじゃないかい?」


少し考えて…ふっと笑う。


「かも知れんの。あの一途さにゃ憧れるし、好ましいと感じてたわ。あんな嫁さんがいて、息子がいて、毎日誰かの為の刀をこさえてさ。そんな生活があったかもしれないなら…それはきっと幸いなんやろな」


「君、ハールーンと同い年位だよねぇ。しっかりしてるなぁ」


心底そう思ってるのか頻りに頷くジャックに意趣返しとばかりに言い返す。


「そんな事あらへんよ?お宅のハールーンも…ワリャの親友にそっくりや。今の状況でグースカ寝とれるのも大物の証やさかい」


さいで、とジャックは首を傾げながら一応の同意を示す。


「さて、そろそろワリャ達も寝るかの」


「僕もそうしようかねぇ」



ゆっくりと夜の帳が下りていく…。

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