2 突然の休暇終了(中)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今作はSFですが、恋愛の感じは異世界物みたいだな!と楽しく書いています。
あきれずに最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
よろしくお願いします。
アキラの頭の中で思考が高速回転した。
ヴェスの部屋はだめだ、同じく私の部屋もだめ。キスだけで済まなくなりそうだから。
ここリビング?
リビング、リビング……。毎日過ごす場所だよ。そんなとこで……。
母屋から様子を見に来ることもあるし。
ど、どうする?
「アキラ?」
「えっと……、ちょっと待って!」
ヴェスの部屋の方をちらっと見る。廊下があり、その向こうにドアが見える。
あそこの廊下なら、母屋から渡り廊下を通り抜けるまでは死角になってるし、さすがに押し倒されたりはしないだろう。
「じゃあ、そこの廊下で練習しよう!」
「練習?」
「慣れるためなんだから、練習だろ?」
アキラが真面目な顔で言う。
「練習……、なんか意味が違う……」
ヴェスがぶつぶつ言っているが、アキラはヴェスの部屋の廊下の方へ進むと立ち止まって、振り返った。
そのまま、目を閉じて顔を上にあげた。
「アキラ?」と戸惑ったようなヴェスの声。
アキラは片目を開けて「少しずつだから、キスだけな」と言って、再び目を閉じた。
ヴェスはそっと両手でアキラの下顎から頬のあたりを包み込む。
「ひんやりしてる……」
そう言うと唇を重ねた。
やさしいキス……と思っていたら、ヴェスが右手をアキラの首筋を添わせるように動かし肩をつかんで押してきて、そのまま壁に押し付けられ、アキラは動けなくなる。
キスをやめないヴェスにアキラは顔を下に向け抵抗しようとするが顎を持ち上げられていてできず、思わず「ヴェス……」と言いかけて口を開いてしまった。
ヴェスの舌が入ってくる。
「!!」
これはもうヴェスの気が済むまで付き合うしかないか……と思い力を抜いたら、ヴェスも力を抜き、そして離れた。
アキラは大きく息をついたが、またヴェスの顔が近づいてくる。
あわてたアキラは手でヴェスの身体を押し返しながら「おやすみ」と言った。
ヴェスも動きを止め「おやすみ」と言い返してくれ、アキラを離すと自分の部屋に入っていった。
アキラも階段を上り自分の部屋に入ると、ロックをかける。
とたんにものすごく恥ずかしくなり、ベッドに突っ伏すよう倒れこんだ。
ヴェスがちゃんとやめてくれたのはよかったけれど、後からすっごく恥ずかしくなるんですけど。
こんなのどうやったって慣れる気がしない……。
じたばたした後にベッドの上に置いていたタブレットにメールが届いていることに気づいた。
礼からの返信で、明日の午後1時に買い物に行くため車で迎えに行くとあった。
「あ、明日はのんびりしよって、言っちゃったなあ。ヴェスに出かけること伝えた方が、いや、今会うのとても恥ずかしすぎる……。明日の朝言えばいいか……」
次の日、朝食の時にアキラから、午後1時から礼と買い物に行くことを聞いたヴェスはとたんに不機嫌になった。
「アキラが一緒にのんびりしようって言ったのに……」
一緒、とは言ってない気がするんだが……。
「ごめんごめん、夜に返信が来てたことに気が付いたから。礼も都合を合わせてくれてるし、こっちも特に予定ないだろ。行ってくるよ」
午前中、アキラとヴェスはバイクの整備をして過ごし、昼食を食べ終えるとヴェスは自分の部屋にこもった。
アキラは出かける準備をしてリビングにいるとトーマスに案内されて礼が渡り廊下を歩いてきた。
「アキラ、大丈夫だった?」
アキラはヴェスの部屋をちらりと見て指差してから、肩をすくめて見せる。
「すねるなんて子どもか!」と礼が小さな声で言って笑い、「ヴェス、アキラ借りてくよ~!!」と部屋の方へ大きな声で言った。
礼が連れて行ってくれたのは、最近話題になっている新しいショッピングモールだった。
「わー、ここ来るの初めて!」
アキラがあちこちを見回してびっくりしたように言った。
「アキラに似合いそうなブランドがあるの!」
「礼が好きな、ではなく?」
「私の趣味とは違うかな。……そういえば安心?」
「……礼の服は私には似合わないと思ってたので。それなら見てみようかな!」
礼が薦めてくれたのは色が明るめで中性的な感じのデザインだが、スポーティーでシンプルなものからフリルやレースがついていてかわいらしいものもあるという感じのブランドだった。
「あ、こういうの好きかも……」
アキラの言葉に礼が頷く。
「アキラには明るい淡い色が似あうと思う」
カフェで礼とお茶をしていると礼がアキラを見た。
「うん、アキラ、やっぱりその服似合ってる!」
「ありがとう、とてもいい買い物ができた!」
「でも、思ってたよりずっとかわいらしい服が好きだったのね」
何点か購入したが、せっかくだからと一番気に入った服に着替えさせてもらった。
淡い緑のワイドパンツと白いフリルの華やかなブラウスだった。
「ちょっとかわいすぎたかな……。フリルっていうより、布の張りとかドレープというかそういう質感が好きなんだよね。このブラウス、布の質感がとても素敵で着てみたいと思ったの」
「うん、ちょっと生成りっぽい白なのもアキラによく似合ってる!
次はアクセサリーとかも見てみる?」
その時、カフェに新しい客が入ってきて、礼がそちらを見て驚く。
「なんで、来るの?」
「えっ?」
振り向くと黒髪に赤いドレス姿のゴージャスな感じの女性がこちらに向かってきていた。
「誰?」とアキラが礼にたずねる。
礼は困ったような表情でアキラを見た。
「『火星の女王ビクトリア』って聞いたことない?
有名な歌手なんだけど。それで……」
「はーい、アキラ!」とビクトリアがアキラに手を差し伸べる。
訳が分からないまま、反射的にアキラはビクトリアの手を握り「はじめまして、アキラ・ハルキニアです」と名乗る。
礼がビクトリアに「何で出てくるんですか!!」と言っている。
「だって、アキラってば本当にかわいいんだもん! 見てるだけなんてできなくてよ!
私とも買い物しましょ! 娘になるんだから、なんでも買ってあげちゃう!」
「娘?」
アキラはビクトリアと礼とを見やって困惑している。
礼が観念したように言った。
「ビクトリアはアスラン社長の元奥様で、つまり、ヴェスの母親……なの!」
「えーっ!!」
えっと……、ヴェスと結婚したら義母?
んで、娘って言われてるってことは、ヴェスは連絡したの?
というか、何も母親について聞いたことないんだけど?
「アキラ、ヴェスは今ビクトリアが地球に来てることも知らない。
社長が言っちゃったの……。それでどんな子か見たいってなって、私と買い物する時に遠目から見るだけって話だったのに!!」
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!