表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

2 突然の休暇終了(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。


今作の世界はSFですが、異世界物が好きな方でも楽しめるんじゃないかな?と思います。


どうぞよろしくお願いします。




 降下が終わり、無事に地球に着くと、アキラがそのままバイクで礼を本社に送り届けた。

 本社はエレベーターの近くにある。ヴェスは着いてすぐ、一足先に家に帰った。


「ヴェスにあんなに余裕がないとは……。焚きつけるようなことしたりしてごめん。

 でも、無理しなくていいんだからね! 自分のタイミングを大切にしなさいよ!」

 礼がアキラにそうアドバイスして荷物を持って降りて行った。


「自分のタイミングなんて、わかんないよ……」


 帰らないと、ヴェスが待っている。

 

 とりあえず、自分で決めたことは『待って!』と思った時はヴェスにそれを伝えることだ。

 でも、さっきも待ってと言ったのにヴェスは止まらなかった。

 かなり不安であるけれど、その後に気持ちを伝えて『わかった!』と言ってくれたヴェスを信じるしかない。


「ま、ヴェスの家にはトーマスとアニスもいるからね」


 アキラは自分に言い聞かせるように言って、バイクを発進させた。




   ◇ ◇ ◇




「アキラです。ただいま~」

 

 家のインターホンに向かって言うと門が開いた。


 緩やかなスロープを下り、半地下の駐車場にバイクを停める。ヴェスのバイクもある。


 降りてフェイスシールドを外しバイクの中に収納してから、自分の荷物を持って階段を上がり、玄関に向かう。


 玄関前で執事のトーマスが待っていてくれた。

 アキラがこの家に遊びに来る前からいる執事だ。


「トーマス! 久しぶり!」

「アキラ様、お待ちしておりました」


 トーマスが荷物を持ってくれようとするのを制して「大丈夫!」と言う。

「そんなに重くないし! 自分の部屋まで持っていくし」


 トーマスがドアを開けてくれた。


「ただいま!」 

 アキラが元気よく言うと家政婦のアニスが「おかえりさないませ!」と言ってくれた。


 トーマスとアニスは夫婦だ。この家の管理をしてくれている。

 アキラにとってもう家族のような人たちでもある。


 アスランの趣味なのか、主屋敷は昔の西洋風でアナログな屋敷である。そのためかアキラはレムリアの元国王の屋敷に違和感を感じなかったが、今の時代、かなり珍しい様式の家と言える。


 屋敷の横に渡り廊下で増設されている建物があり、そこにヴェスとアキラの居住部屋がある。

 その建物は比較的新しいもので、センサーによる自動ドアや照明など宇宙船に近い無機質なデザインのものだ。


 1階の渡り廊下に入り、そちらの建物に入ると右側に広いリビングがあり奥に行くと、短い廊下があり突き当りにヴェスの部屋。

 渡り廊下からそのまま進んで行けば階段がある。アキラの部屋は2階なので階段を上る。


 階段を上り始めると「アキラ?」と声がしてヴェスが自分の部屋から出てきた。

「ただいま!」と階段の途中から声をかける。


「おかえり」とヴェスがまぶしそうに見上げた。


「荷物置いてくるから!」とそのまま自分の部屋に向かい入ると、考えてからロックをかけた。


 宇宙船の部屋は基本ロックできない。

 部屋は誰からも開けられるようにしておかないと万一の時、火事や事故の時、対処できないからだ。


 家の部屋にはロック機能があって良かった……。


 アキラがそう思いながらノーマルスーツを脱ぎ、作業着を脱ぎ、普段着に着替える。

 シンプルな黒い細身のパンツの上に薄青のシャツを合わせる。


「今度、服も買いたいな。礼に付き合ってもらおうかな……」と言いかけて礼の普段着ている服のデザインを考えて「礼の服はちょっと違うか……」と呟く。


 うーんと伸びをしてから窓から外を眺める。きれいな夕焼けが見えた。


 トントンとノックされ「あれ、ロック?」と怪訝そうなヴェスの声が聞こえる。

 

「あ、まだ着替えてるから! 下で待ってて!」

「……わかった」


 ヴェスがドアから離れる気配がした。


「自分のタイミングだもんな。少しぐらいなら嘘ついてもいいよな」


 タブレットを起動させると礼からメールが来ていた。

 

 返信で無事に家に着いたこと、今度都合がいい時に買い物に付き合って欲しいことを書いて送る。


「よし! ではリビングに行きますか!」


 リビングに行くとヴェスがソファーに座っていた。


 向かいのソファーに腰を下ろす。


「礼、無事に送ってきたよ」


 ヴェスがぎごちなく言う。

「隣に座っていいか?」


「……休暇をどう過ごすか話したいんだけど、向かい合わせじゃダメ?」


「あ、なら、いいか、うん」とヴェスが少し残念そうに言う。


 良かった。『わかった』と言う言葉は信じても大丈夫そうかも。


「アキラは何したい?」

「買い物は行きたいと思ってる。さっき礼に都合のいい時を教えてと連絡した」

「何で礼?」

「だって……、女性用の服も見てみたいし……。なら、礼に聞くのが一番かなと思って」

「……、そっか、そうだよな、わかった! 他にどこか行きたいところあるか?」

「今のところは……思いつかないな。ヴェスは行きたいところあるの?」

「……特に思いつかないな」

 

 アキラが笑った。

「オレたち、そんなに仕事人間だったんだ! 

 まあ、最近はずっと土星基地にいたし、休みあっても読書したりバイクの手入れで終わってたもん。

 明日はのんびり家で過ごしてさ。それから予定考えようよ!」


「あら、ずいぶん仲良さそうに!」

 アニスが夕食を運んできてくれた。


「リビングで話をしながら食べたいからと言っておいたんだ」

 ヴェスがアキラに言った。


「ありがとう、アニス!」

「そんなに仲がよろしいおふたりを見るのは久しぶりですね」

「あ、ずっとけんかしてたわけじゃないんだけど……」

 アキラが困ったように言うと続けてヴェスが言った。


「アキラと付き合うことにした。将来は結婚を考えている」


 アニスは驚きもせず「それはおめでとうございます」言い、真っ赤になって黙ってしまったアキラを見ながら「私はいずれそうなると思っていましたよ」と祝福してくれた。


 アニスがテーブルに食事を並べてくれて、母屋の方へ立ち去る。


「我が家はやっぱり落ち着くなあ。さあ、食べようぜ!」

「えっとヴェス、もしや、先に帰ってきてトーマスとアニスに話しただろ……」

「え、なんで?」

「アニスはもう知ってたから、今、ヴェスは恥ずかしげもなく言えたんだろ!」

「お前本当によく見てんな」


 

 夕食を済ませ、食器を母屋に下げるのを手伝って、部屋に戻ろうとすると、ヴェスが「なあ、俺の部屋に来る?」と言った。

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ