7 出発(前)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
まだまだ文章修行中ですが、読んでいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
アキラは起きると、いつもの作業服に着替えた。
「今日から仕事! 気合入れていくぞ!」
荷物は昨夜まとめてある、ノーマルスーツはどのタイミングで着るかまだわからなかったため、荷物の一番上に入れてある。
リビングに下りていくと、アスランと父のシリウスがいた!
「お父さん!! 来てたの!」
階段を駆け下り、飛びつく。
シリウスは大きくなった娘を力強く抱きとめると「大きくなったな……」としみじみと言った。
そして、そっとやさしく降ろすと「ますます母さんに似てきたな」と微笑んだ。
アキラもにっこりする。
そこへヴェスが部屋から出てきた。
「おはようございます……、アキラ、おじさんに会えて良かったな」
「お父さん、私、ヴェスと結婚するよ。私の身体が変化し終わってからになると思うけど。……祝福してくれるよね?」
「もちろんだとも! 昨夜ヴェスから話は聞いた。幸せにな。
ヴェス、絶対幸せにしろよ。アキラが幸せじゃなかったら、ただじゃおかないからな!」
アスランが「こわー、ヴェス。こっちにも被害が来そうだから絶対アキラを泣かせるなよ」と言った。
そして、ちょいちょいと手招きしてアキラを呼び寄せると、ヴェスに箱を渡した。
「アキラ、昨夜みんなで相談したんだが、どうかビクトリアの我儘に付き合ってやってくれ、頼む!」
ヴェスが箱を開けてペンダントを取り出した。
「えー、いいのかな」
「はい後ろ向いて」とヴェスが言い、ペンダントの留め具をつけてくれる。
「あれ、これ留め具あったっけ? 鎖、短くない?」
「社長に言われて鎖変えたんだ。服の中にしまえるように短めのに」
「なるほど! それならいいね!」
「アキラ、調べたら濡れても大丈夫な素材と石だから、この仕事が終わるまで、ビクトリアの気が済むまでずっとつけ続けててくれ!」
アスランも手を合わせて頼んでくる。
「わかりました! この仕事でのお守りと思って外さないようにします!
ヴェス、荷物とノーマルスーツ、どこに積んだらいい?」
◇ ◇ ◇
朝食をすませ、ヴェス、アキラ、礼、マリウスの4人が最初に出発することになった。
ヴェスはバイクに自分とアキラの荷物を載せ、ひとり乗り。車は礼が運転しアキラとマリウスが同乗する。
玄関でシリウスとアスランが見送ってくれる。
「気をつけてな!」とアスラン。
「私たちも追いかけるようにしてフォローしていくから。
アキラ、ヴェスから絶対離れるんじゃないぞ、いいな!」とシリウス。
「おじさん、俺の方が絶対離れませんから、大丈夫ですよ!」
ヴェスがアキラの肩を抱いて言う。
「そうだな、頼む」
シリウスがヴェスとアキラに微笑んだ。
4人は駐車場へ移動し車に乗り込むと、ヴェスのバイクが先導するように動き、車もその後ろを進んで行く。
見送りながら、アスランが言った。
「さて、こちらも準備するか!」
◇ ◇ ◇
『こちらヴェス。周囲は良好。疑わしい車を見つけたら随時報告する!』
「了解、後方も良好」
ヴェスと礼が連絡を取りながら周囲に気を配っている。この通信は屋敷内のアスランとも共有している。
マリウスがアキラに話しかける。
「アキラ、昨夜話したかったこと、ここで話してもいいかい?」
「はい、礼が良ければ……」
アキラが前方のミラーを見ると、礼が頷いた。
「はい、大丈夫です。なんでしょうか?」
「変なことを聞くが……。君は……その……セレスシャルか?」
「……セレスシャルのことをご存じなんですか?」
「君に下の兄弟はいる?」
「いません」
「そうか……。いや、すまない。よく似た人を見かけたことがあって……。
その人がセレスシャルと聞いたので……」
「どこで? いつ?」
「ごめん、仕事関係のことなので守秘義務がある。これ以上は言えない」
マリウスは目を閉じてしまった。
これ以上話す気はないという意思表示。
礼がミラー越しにこちらをちらりと見て言った。
「一度本社に入ります」
『了解』
本社に着き、礼がアキラを車から降ろすと「やっぱりヴェスとバイクに乗りなさい!」と言ってきた。
「アキラがバイクに乗り込んだら出発まで3分、こちらの通信を切るから。その3分で社長に、マリウスへの対応を相談しなさい」
あわててヴェスのバイクに駆け寄りシールドを開けてもらう。
「バイクに乗ることになった」と言いながらすぐにシールドを閉め、「社長!」と呼びかける。
『なんだ、アキラ?』
「今本社。3分間、礼が時間をくれた。さっき、聞いてた?
マリウスにセレスシャルか? と聞かれたこと。マリウスは私によく似たセレスシャルと呼ばれる人を見たことがあるって!」
『どこで? と言わなかったんだな』
「仕事の守秘義務があるからって教えてくれなかった」
『うーん、シリウスには伝えておく。またわかったら個別に連絡してくれ』
「了解、私はヴェスのバイクに移りました。このままエレベーターへ向かいます」
『了解!』
ヴェスが礼に手を挙げ、バイクが動きだした。アキラはあわててシートベルトをした。
セレスシャル?
マリウスが見たというなら、地球か火星か?
下の兄弟ということは、私より小さいってこと?
「アキラ、今はエレベーターに無事に到着することを優先させよう」
ヴェスの言葉にアキラが頷いて言った。
「了解! 周囲を警戒します!」
その後、無事に軌道エレベーターに到着、ノーマルスーツを着込み、予定通りの上昇エレベーターに乗ることができた。
エレベーター内で移動ができるようになった時、礼の車から通信が入った。
『ヴェス、私と交代して!』
「了解、そちらに向かいます」
「礼がすぐ来るから、シールドは開けたままにしておけよ」
ヴェスが、礼が車から降りるのを確認しながらアキラに言った。
ヴェスと礼がすれ違いながら短く言葉を交わす。
「マリウス締め上げていいか?」
「だめ! こちらから触れないでおいて」
「了解」
「アキラ、お待たせ」
礼がバイクに乗り込んできて、車との通信を一時的に切る。
「社長とは話せたよ。お父さんにも伝えてくれるって」
「いきなりの爆弾発言だったわね。とりあえず、予定はそのままで進めるわ。
マリウスとは船の中でもふたりっきりにならないように!」
「気を付ける。でも、マリウスからは嫌な感じがしないんだよね。
私に興味があるというよりは、その見たことがあるセレスシャルを心配しているような……」
「もう社長とシリウスには伝えたんだから、そのことは置いときなさい」
「……わかった」
車との通信を再開させるとマリウスの声が聞こえた。
「私はずっと悩んでいたんだ。
私の周囲の、その……仕事関係の人物はセレスシャルを人とは扱っていないようで気にはなっていたが、私の意見は聞いてもらえなくて……。
私はどうしたらいい。なにかセレスシャルに対してできることはあるか?」
「セレスシャルって言うけど、アキラを見てどう思う?」
「普通の人間の少女だと思った。私が見たセレスシャルとは全然違う。アキラの方が普通なんだよな。
やはり、私の感覚が正常で、あっちがおかしいということか?!」
アキラと礼が顔を見合わせる。
やはりマリウスは敵ではない?
「人間もセレスシャルもないよ。セレスシャル以外にも異星人はいるけど、お互いを尊重し合えば問題ないだろ。なぜセレスシャルだけを問題にするんだ?」
「そうだよな……。ありがとう。だんだんわかってきた。火星に着いたら、自分にできることをしてみようと思う」
「仕事の依頼なら受けるから、助っ人が必要なら言ってくれ」
突然、社長からの通信が入った。
『ビクトリア達も無事に軌道エレベーターに乗った。
これから、こちらではおとり作戦を始める。宇宙船が出発までには結果が出るだろう。楽しみにしておけ!』
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




