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星5SSRランク美少女が、無課金な僕にメチャクチャ課金してきます  作者: 黒鉄メイド
これさえ見れば、『3回転目 課金系美少女』がすぐ読める! 三分ちょっとで分かる総集編
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総集編2:『廃課金系美少女』

 やあ、みんなこんにちは。

 僕の名前は、無生七芽(むしょう ななめ)

 この物語の主な語り部であり、一応主人公らしい。

 僕の事は、『人生無課金主義者』であることだけ知っててもらえればいい。


 え? まずその『人生無課金主義者』がなんなのかって?


 簡単に言えば、人生のあらゆる無駄な消費を避ける生き方のことだ。

 詳しく知りたい方は、『一回転目無課金系美少女 第一話:人生無課金主義者』を読んでみてくれ。

 なに、たったの八百文字程度だ。片手間ですぐ読める。


 さて、僕の紹介も済んだことで――、

 ここからは、『星5SSRランク美少女が、無課金な僕にメチャクチャ課金してきます 二回転目・廃課金系美少女』の総集編だ。


 長い長い本編を読むのが面倒臭い。ダルいという人のための、コンパクトサイズなダイジェスト短編小説だと思ってくれて構わない。


 それでは説明もこれまでにして、早速に始めて行くとしよう。


 あれは、僕がゲーム内の友達である『シンデルヤ』というプレイヤーと一緒に、オフ会をすることになったことから始まる――。



◇◇◇

 


 シンデルヤと僕はスマートフォンゲーム『スターダスト☆クライシス』の知り合いであり、オフ会の誘いは彼女からだった。


 シンデルヤとは話題も合うし、波長も同じ。まさに理想的友人であり、僕の中ではもう親友も同然だった。

 だから前日は眠れぬ夜を過ごし、自宅のある千葉からオフ会の待ち合わせ場所である東京まで行くことになったのだ。


 だが、そこにはとんでもない人物が待ち受けていた――。


「あんたがジョーカーね! ほら! とっととオフ会を始めるわよ~!」


 待ち合わせ場所に立っていたのは上着を何十にも着込み、帽子! サングラス! マスク! という不審者コンボを決めた人物が立っていたのだ。

 ちなみに『ジョーカー』とは僕のゲームでのプレイヤーネーム。由来は小学生の時のあだ名である、『北小学校の切り札(ジョーカー)』からとったものだ。


 その人に連れられて付近のファミレスに入ると、その怪しい人物は酒を注文し、服を脱いだ(キャストオフ)

 すると、そこには――長身で、黒髪ロングの美人お姉さんが現れたではないか。


 おまけにお胸も大きくKカップくらいある。ボインボインだった。

 そんな僕の好みド直球だった彼女だが――オフ会は、まあ最悪だった。


 要件があると聞いて来てみたものの、蓋を開ければ酔っているためろれつは回らず、発言もメチャクチャ。

 ずっと笑いながら飲んでいるだけという状況に僕は耐えきれず、開始十分を待たずに、帰ることにした。


 こんなのただのつまらない飲み会と同じだ。

 何の生産性もなく、ただ時間だけが湯水のごとく消費されていく。なんて人生の損失か。これならまだZ級映画を見て時間を過ごした方が、有意義な時間を過ごせるだろう。

 

 しかしシンデルヤ、ここで僕を全力で阻止。腰辺りにしがみついて、酔っ払いの厄介さを見せつけてきたのだ。


「やらやら! 帰っちゃらめぇええっ!!」

「ええい離せ! この酔っ払いが! 僕が人生無課金主義者で、なによりも時間を無駄にすることが嫌いなのは知ってるだろうが!!」

「話ぅ! 話しゅからぁ!」

「へえ? それじゃあ、言ってみろよ」

「えーろっ……えへへへっ♡」

「笑って誤魔化すんじゃねえよ!」

「いてろ~! ひとりれろむなんてつまらないろ~!!」


 と、こんな具合に、僕はその後なんだかんだ、そんなシンデルヤの飲み会に付き合うこととなってしまい、電子書籍などを読んだりして時間を無駄にしないように過ごした。


 だが酒を大量に飲めば、その先に待っているのは爆睡。例に漏れずシンデルヤも爆睡。

 そんな彼女を放っておくこともできず、僕は肩を貸して、東京にあるシンデルヤのアパートまで彼女を送り届けることにしたのだが、ここから数々の事件、出来事が僕を襲うことになる。


 シンデルヤをアパートまで送り届けた後、帰ろうとする僕は彼女は覆い被さってきたのだ。


「どこいくろぉ……? まらろうらんりっれないんらろぉ……?」

「酒臭っ!」


 彼女から吐き出される酒の匂いと、前日の寝不足も相まって、ノックアウト。

 僕は眠りの世界に飛ばされてしまった。ぐうー。




 更に翌日、シンデルヤのアパートで目を覚ますと、ベッド蹲っている女性が、こんなことを言い出したのだ。


「あ……あの……あなたは一体……だ、だれ……なんですか……っ?」

「……え?」


 新キャラじゃないぞ。彼女はシンデルヤ。もとい、中の人である新人漫画家の灰被硝子さんだ。

 昨夜は酒を飲み過ぎてあんな状態となっていたが、本当はとてもか弱き美人お姉さんだったのだ。


 と、ここまではよかった。ああよかったさ。

 一見大人しそうに見える彼女だったが、とんでもない爆弾を抱えていたのだ。


「わたしの人生廃課金主義を直してほしいの」 


 彼女の悩みとは、『人生無課金主義』の対極に位置する、『人生廃課金主義』を直し、約束してしまった漫画の打ち合わせを乗り越えられることだったのだ。


 人生廃課金主義の意味は、一言で言えば『あらゆる事に我慢ができず、頼み事も断れない』ことを指すらしく。そのため硝子さんは、お酒を飲み過ぎ、欲しい物を我慢できず、人の頼み事も断れないと、そんな駄目人間スパイラルに陥ってしまった人だったのだ。

 

 僕も最初はそんな厄介ごと断ろうと思ったのだが――、


「ジョーカー……でもわたしあなたしかいなおぇえええええええええっ!!!」

「あああああああああッ!? 分かった! 分かったからもう喋るなっ!! お願いだから!!」

「でもまだお願いしでぇえええええええええっ!!!」

「引き受ける!! 引き受けるからッ!!!」


 このように口から大量のお酒を逆流させたマーライオンな硝子さんを止めるため、ほぼ強制的にやらさせるハメとなったのである。不幸だ。






 打ち合わせはゴールデンウィーク最後の五月六日。

 それを利用し、ゴールデンウィーク中は硝子さんのアパートに住み込みことにした。

 お酒を飲まないように監視する名目もあるが、主な理由は毎日千葉から東京まで移動するのが面倒くさく、時間も金も掛かるためだったからである。

 そんなこんながあってシンデルヤもとい、硝子さんの育成プロジェクトは始まった。


 僕が用意してきたレッスンは、全部で三つ。


 レッスン1は、代用品のバッカスチョコレートを食べて、お酒無しでも宅配便を受け取れるようになること。

 つまり、他人との接触に慣れることだ。


 硝子さんは、お酒無しでは外にすら出歩けないほどの社会不適合者。

 だからまずはそこから改善しようとしたわけだ。

 

 だが案の定困難を極めた。硝子さんは宅配便のお兄さんの声だけで気絶しかけ、僕の電話でのサポートを受けてなんとか受け取りに成功。レッスン1をクリアしたのである。


「宅配便を受け取ることは出来たじゃないですか」

「! ほ、本当だ……! や、やったよジョーカーくん……! わたし……できたよっ……! 褒めて褒めて……っ!」

「はいはい、頑張りましたね」


 レッスン2の内容は、買いたいという衝動を抑えること。

 硝子さんは原稿を終えた後に、自分へのご褒美としてついつい衝動買いをしてしまう。

 そこで僕が出したのは、


「無限ガチャアプリぃ~!」


 青い猫型ロボットよろしく出したこのアプリは、架空のゲームガチャを回してキャラクターを出す、ストレス解消アプリ。

 このアプリを使い、星5SSRキャラクターが出れば買ってもいいということにしたのだ。

 

 ただし、このアプリにはある秘密があった。

 なんとこのアプリは、排出率のパーセンテージを設定することができ、この時僕が星5SSRに設定した排出率は――0.1%。

 分からない人に言うと、ほぼ確実に出ない数値である。消費者センターに駆け込まれてもおかしくない。

 

 まあ後でそのことがバレて、色んな意味で大変な目にあったが、結果的に衝動買いが収まったので良しとしよう。


 そして迎えた、レッスン3。

 いいえを言えようになろうでは、外に出てやることにした。

 舞台はチェーン店のハンバーガーショップ。

 そこで店員さんのオススメを断り、注文出来るかどうかを試したのだ。


 店員さんの『お得ですよ』トークにも負けず、硝子さんは最後の難関を突破した。

 

「ここまでよく頑張りましたね。硝子さん、合格ですよ」

「う、うん……うん……っ!!」 


 よしこれで後は、明日の打ち合わせだけだ。などと胸の重りが取れた気がしてたのに、ここでまた事件が発生だ。

 本当によく事件に遭遇する。たった八日間に一体いくつの事件に遭えばいいだ。


 なんともガラの悪い人たち二人組みにぶつかってしまい、囲まれてしまったのだ。

 俗にいう、異世界転生物の序盤でよく見かける、雑魚敵に絡まれるイベントだ。

  

 だが僕は異世界転生主人公ではないため即落ちニコマ速度で瞬殺され、マジマジ言う雑魚敵さんに関節を決められてしまったのだった。

 硝子さんも捕まり大ピンチ!

 と、そんな僕らの前に現れたのは、一人の黒い風。



「――――私の七芽くんに、何をしてるの?」



 颯爽と登場したのは、敵意という黒い風を纏った、僕の友達の緩木結香(ゆるき ゆか)だった。

 結香は雑魚敵さんたちを即落ちニコマ速度で瞬殺。

 ああよかったよかったと思っていると、彼女は虚空の瞳を向けて僕を聞いてきたのだ。


「ところで七芽くん、そこの美人な女の人は誰なのかなぁ――? 是非とも教えてほしいなぁ――?」


 あーあ、出会っちまったか。そんなどっかの殺人鬼みたいなことが頭に浮かんだ。


 説明すると、緩木結香はとある理由から僕にゾッコンラブであり、課金と言うなの好意を貢いで僕を堕としたいと宣言するほどの恋愛モンスターなのだ。

 そんな僕ラブな彼女に、僕と硝子さんが一緒に歩いているところなんて見られれば、それは修羅場になる。

 

 またこの時僕が口を滑らせたのもいけなかった……。


「どうして僕の周りにはこう痴女しかいないんだよ!? あっ……」

「――――したの? その人と? ――ナナメクン、アサマデイッショ、ニガサナイ」

「違う違う!? 本当に硝子さんとは何もしてないんだよ!! それに仕事はどうするんだよ!?」

「『体調が悪くなった』て言って、休む」

「また仕事に穴開けるぞ!? 駄目だろ!?」

「休む、そして七芽くんと一緒にえっちするの!」

「せめてオブラートに包めよ!?」


 結香はあふれ出した負の感情を暴走させ、僕を何処かに監禁してセックス! しようと迫ってきた。


 こうなってしまった結香には言葉など通じず、絶対絶命の大ピンチ! 僕がパパにされちゃうんだよ! となりそうだったその時、あの対人能力に乏しかった硝子さんが、結香の前に立ちはだかり、僕を守ってくれたのだ。


「て、転校生ちゃんが、ななめくんのことを好きなのは、し、知ってるよ……? だ、だから、それだけ怒る気持ちも分かる……で、でも、それなら尚更、ななめくんの話を、ちゃんと聞いてあげるべきなんじゃないの……っ!?」

「――っ!?」


 この時の硝子さんは大人だった。今まで見た中で一番大人だった。

 硝子さんのこの言葉に結香の暴走は止まり、二人は和解。

 これでもう全ての障害を乗り越えたかのように見えた。


 だがここからだ――ああそうだ。これで何度目かっていうくらいに、よりにもよって最後の最後で最大級の問題が起きてしまったのだ。


 打ち合わせ当日の朝。

 後一時間後ほどで約束の時間だというのに、目覚めた僕の前にいたのは、泥酔しきるまで酒を飲んだ硝子さん、いやシンデルヤだった。

 

 しかも彼女は打ち合わせに行かないと拒み、僕にビールの缶やゴミを投げてくる始末。 

 一つずつ理由を聞いていくと、シンデルヤは泣きながら真相を話してくれた。


「転校生らゃんを見れ、諦めろうって思っら……友達でいようれ……っ! らから、この気持ちを抑えようと思っれ……でもそう思うろ、不安で不安で押し潰されそうになっれ……どうしようもなかったろ……っ!! わたしわ……じょーかーが好きなんらよ……っ!!」


 硝子さんは僕のことを好きになってしまったらしい。

 だが、僕と結香の関係を見て、その気持ちを諦めようとした。しかしそれは返って彼女の不安を増すことに繋がり、結果バッカスチョコレートの力を借りてお酒を買い込み、不安を消すため一気にがぶ飲みしたというわけだ。

 本当にこの時は参ったものだ。


「嫌ぁ……!嫌なろ……っ! いなくならないでじょーかーっ……わたし駄目なままでいい……っ! このままでいいかりゃ、らから……ずっと側にいてよっ……じょーかー……っ! うっ、あああぁ……っ!!」


 泣くシンデルヤを見て、僕は記憶を思い返す。

 確かに硝子さんとの日々は楽しかったし、何よりも彼女とは気が合う。

 見た目も僕好みの美人お姉さんだし、黒縁眼鏡をかければ、読書の似合う美人お姉さんにクラスチェンジする。

 まさに理想的な人だ。


 だから僕はこう答えたのだ。


「嫌に決まってるだろ」

「っ!」


 確かに硝子さんとの生活は楽しかった。

 だが、だからといってずっと彼女の面倒をみるためだけに人生を捧げろなど、僕は望んではいない。

 人の人生をなんだと思ってるんだと、怒りが沸いてくるくらいだ。

 

 僕のこの考え、この気持ちは僕だけのものだ。

 だから――、


「お前も自分の好きなように生きろよ、シンデルヤ。なに自分の気持ちに蓋してんだよ、吐き出すのは得意だろうが。お前の気持ちはお前だけのものだ。僕は抵抗はするけど、シンデルヤの気持ちまでは否定しない」

「……ふっふふ……分かったよ……ジョーカー……それなりゃわたし……いや、俺も……、いいえ、わたしたちは、ジョーカーに一杯課金するりゅ。課金して課金して、絶対にジョーカーを手に入れてみせりゅ」

「無駄な消費に終わるかもしれないぞ?」

「愚問らな、ジョーカー。廃課金ユーザーて言うのわ、出るまれ回すものらんだぜぇ?」


 どうにか硝子さんを説得した後、僕らはタクシーを飛ばし、編集社へ向かった。


 そこで待ち受けていたのは、担当編集者の須藤訂作(すどう ていさく)さんであり、シンデルヤの最後の試練が幕を開けたのだ。

 

 打ち合わせ会議は最初から難航を極めた。

 須藤さんは、シンデルヤの連載している漫画、『篭守さんは吐き出したい』の人気低下の話をあげてきた。

 新キャラや方向転換をするようアドバイスをしてきたのだが、シンデルヤはそれを自分の描きたくないものだと拒否し、それを却下した。

 そこを須藤さんは、プロ意識が低いと指摘してきたのだ。


「プロの漫画家の仕事は、売れる商品を作ることです。それを描きたくないから描かないというのはプロ失格としか言い様がありません。商品になった以上、これからはそのことも考えなくてはいけないんですよ? それを分かっているんですか?」

「……っ」

「風邪の件もそうです。体調管理だって仕事の内なんですよ? それすら出来ないのならば、あなたはプロの漫画家には向いていません」

「――――」


 須藤さんの刃物のように鋭い指摘が、シンデルヤの魂を刈り取りただの人形に仕上げた。 


 確かにシンデルヤも硝子さんも駄目駄目人間だ。

 だがそれでも、僕は今まで彼女の頑張りを見てきた。

 僕が遊んでいても、シンデルヤは必死に、そして楽しそうに漫画を書き続けていたんだ。

 その姿は少なくても僕には立派な漫画家に見えた。だから、僕だけは、彼女の味方であり続けようと思ったんだ。


「僕にとって……シンデルヤは立派な漫画家なんです! それだけは否定させません……っ!」


 僕がそう言った瞬間、シンデルヤは打ち合わせから飛び出し、何処かへ行ってしまった。

 追いかける僕に、廊下から響くものすごい音が聞こえてきた。


 オエエエエエエエッ!!


 その音は人の物であり、行ってみると涎を口元に垂らすシンデルヤがトイレから出来てきたのだ。


 その時の彼女の頬の色は、酔いの赤ではなく、通常時の白に戻っていた。

 そう、彼女は無理矢理胃の中の物を吐くことで、強制的に酔いをさましたのだ。


「ジョーカーくん、戻ろう。打ち合わせに。わたしは、自分の描きたい作品のために戦うよ……っ!」

「とりあえず、よだれ、拭いた方がいいですよ?」


 こうして硝子さんは正常な姿に戻り、僕らは再度打ち合わせに挑むことにした。

 須藤さんの刃物のような目線は相変わらずだったが、硝子さんはむしろそれに飛び込み、前のめりで自らの作品のこれからを捲し立てる。


「確かに今のままじゃ駄目だと思います。

 篭守さんは奥手だから、幼馴染みである彼に対してのアプローチも少なすぎました……。

 だから――これからはもっと色んな事をして、二人の関係を深めていきたいと思っています。

 それがわたしの描きたいもの。この作品にとって大切な物なんです!

 これからも二人は少しずつだけど仲を深めていって、色んな困難に立ち向かいつつも、それでも最後はハッピーエンドを迎えるんです! 絶対に二人で一緒に幸せになるんです! それがこの作品の売りであり、読者のみんなが求めている物で、そして、わたしが思い描く物語(ストーリー)なんです! だからこれだけは、絶対に譲るわけにはいきませんっ!!」

「――それでもし、人気が落ちてしまったらどうするおつもりですか?」

「その時はまた別の手を使ってチャレンジしてみるまでです――だから須藤さん、その時は一緒に考えてもらってもいいですか? わたしも、この作品を一人でも多くの人に楽しんでもらいたいんです」

「――そうですか。いいですよ、それが私の仕事ですから。でも話し合うのは今からです。人気が落ちてからでは遅すぎますよ、かふぇモカ先生」

「は、はい! よろしくお願いします……っ!」


 こうして二人の関係は修復され、打ち合わせは無事成功。

 これからの方針も決まり、僕の役割はようやく終わりを告げたのだ。


「ジョーカーくん、こんな駄目駄目なわたしだけど、これからもずっとよろしくね……っ!」






 と終わりを告げたのだが、ゴールデンウィークが終わった次の土曜日も、僕は硝子さんに頼まれて、一緒にサイン会へ出ることになった。

 もちろん僕が何かをするからではない。単に硝子さんの精神安定剤代わりなだけだ。もった柔らかく例えるならライナスの毛布だな。


 なに、少し座っているだけでお金が貰える簡単なお仕事だ。しかもその間僕の隣には、好みドンピシャなお姉さんが座っていて眺めていられる。悪い話ではない。

 僕はサイン会を頑張っている硝子さんを見守っていると、一人の怪しいお客さんが硝子さんの前に現れたのだ。


「か、かふぇモカ先生、大ファンです! サインをお願いしま――げっ!?」


 そのお客さんが掛けているサングラスを、何処かで見たことがあったので観察していると、その人は僕を見た途端、変な声を上げて固まったのだ。


 僕は記憶を辿ると、思い至ったのはある人物の名前であり、僕はその名前に驚きを隠せずつい口からその名前を言ってしまったのだった。

 こんな場所にいるはずがない、あまりにも不釣り合いな人物の名前を――。


「お前……綺羅星……なのか……?」

「どうして……どうしてあんたが、そこに座ってるのよ……っ!?」


 彼女の名前は綺羅星刹那(きらぼし せつな)

 トップカリスマ読者モデルであり、クラスのリーダー的存在。

 結香の友達で――そして僕の天敵でもある。


 そんな彼女が、僕たちの前に現れたのだった。



◇◇◇



 てなことがあったわけだ。

 それでは三回転目・課金系美少女の始まり――、


「ちょっと待ってよ! 七芽くん!」

「そうだよ……っ! ジョーカーくん!」


 え? 結香に……硝子さん……?

 なんでここにいるんだ? ここは総集編だぞ?

 本編キャラクターが出しゃばってきたら駄目だろ、おい。

 てかどうやって入ってきた?


「突然知らないメイドさんに声を掛けられて、ここに連れて来られたの! というか、七芽くんやっぱり硝子さんの家に泊まってたんだね……!? 私だってまだ七芽くんと一緒に寝たことないていうのに……っ!!」

「ふ、ふふぅん……っ! こ、これが親友の絆てやつなんだよ……っ!」

「私だって七芽くんとは親友ですぅ! それも子供の時からずっとずうっとっ!!」

「な、ならなら! わたしはジョーカーくんの大親友なんだよ……っ!」

「硝子さんよりも私の方が親友歴は長いんですぅ~! だから大親友も私のポジションなんですよっ!」

「「んにぃ~っ!!」」


 火花散らす二人は放っておくとして。それじゃあ、三回転目・課金系美少女の始まり始まり~。


「あ! 七芽くん!? まだ話は終わってないよ!?」

「あ! ジョーカーくん!? まだ話は終わってないんだよ!?」


 ええいうるさい! くらえ! 本編に戻ったら記憶が無くなるビーム!!


「「ががががががががっ!! がふぅ……」」


 ふぅ。危ない危ない。

 こんな本筋でもないところで、流血沙汰にでもなったら洒落にならないからな。


 それでは今度こそ、本編スタートです。

何らかのご意見、ご感想がありましたら、お気軽にお書きください。

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