第三十話「想いの衝突」
剣と昼を済ませてトイレに行って出る時に、愛の目の前に明音が立っていた。
「あら、野々村さん。私に何か御用かしら」
黙ったままの明音。首を傾げてその場から立ち去ろうとした時。
「待って!」
明音が声を張り上げた。立ち止まり振り返ると明音が近寄って来て、左手を掴まれて一枚の紙を手渡された。何も言わず立ち去る明音。渡された紙を広げ微笑んだ。
放課後になり教室から出て行く生徒たち。剣も同じように変える準備をしている。
「明音。今日一緒に帰ろうぜ」
「ごめん。このあとちょっと用があるんだ」
「ふ~ん。そうか、分かった。じゃな」
鞄を持って剣がいなくなった。
「……」
時計を確認して明音も教室を後にした。
「まだ、来てないか……」
明音が到着したのは、四階の一番隅にある教室。今は、使われてなくドアを開けると机を椅子も何もないところ。その教室の真ん中に移動して立ち止まる。数回ほど深呼吸する。
「いましたわ」
愛がやって来た。黒板丁度真ん中の位置で明音と対峙する形。
「こんなところに呼び出して何かあるのですか?」
「今日は、七塚さんにハッキリ伝えよう思って呼んだ」
「何かしら」
口に手を当て微笑んでいる愛。
「七塚さん!剣のこと好きでしょ!」
「はい。好きですよ?」
「悪いけど剣は、渡さない!剣は、私のものよ!」
その言葉に反応したかのように、微笑んでいた表情がガラリと変化して目を細くなり、明音をジッとっ見つめる。人が変わったみたいに。
「その言い方は、いけないと思います」
「えっ?」
「私のもの……まるで剣君が野々村さんの私物、物みたいじゃありませんか?」
「それは……」
言葉が詰まる明音。
「そんな風に剣君見ている野々村さんに、剣君を渡す事は出来ません」
明音に近づく愛。二人の距離がほぼ無くなる。
「ハッキリ言います!野々村さんに剣君は、お似合いではありません!」
明音の耳元で。
「剣君には、私が相応しいですわ」
足に力が入らなくなり床に崩れ落ちる。それを見下ろすかに見る愛。
「剣君は私を助けてくれました。その時から剣君が好きなのです。だから、誰よりも傍にいたいのです。恋人になりたいと思ってます。野々村さんが剣君と同じクラスが羨ましいです」
そう言って明音を置き去りにして出て行こうとする愛。ドアの所で止まり振り向かずに。
「でも、公園でのことは、本当に心配しました」
言って愛は、教室を離れ明音は、立ち上がることができず下を向いたままだった。




