嵐もしくは竜巻とかいて恋する乙女と読む。
お久し振りです。
「ふふっ、リンクったらどうしたの?
久々にあえて嬉しいわ。」
いつのまにか目の前に移動してきたユリが転げ落ちたリンクを助け起こす。
そこそこの距離があったはずなのに、一瞬である。
無詠唱で魔術を発動した事に気付いた魔術科の生徒たちがざついた。
ユリは妹スミレにはちょっとおよばないくらいの魔力の持ち主であるが、
あくまでもそれは父ゼノンに比べてである。
一般的に見て化け物と呼ばれてもおかしくない領域の力の持ち主であった。
「あら?
まだご飯の途中なの?ごめんなさいね、リンク。
食べてかまわないわ。」
「え?うん、そうする。」
「むかいに座ってもかまわない?」
「ああ、どうぞ。」
いつになく優しいふんわりした対応にリンクは戸惑いつつも、息をするように自然に椅子をひきユリをエスコートした。
目指すはゴリマッチョの細マッチョなリンクであるが、紳士的あれと家族に叩き込まれてきたので学力はあまりないけれども礼儀作法等完璧にこなせたりする。
ユリは手を組んだ上に顎をのせ微笑をたたえながら食事をするリンクを見つめる。
その間、アオイは完全スルーである。
アオイもあえてそんな姉には声をかけず食事を再開する。
のんびり歩いてきたスミレは挨拶するとアオイの隣に座った。
「アオ兄、後で説明するからとりあえずご飯食べて。」
「分かったよ。でもビックリしたよ。」
「ドッキリ大成功…?」
ぽつりぽつりと会話をする兄妹だが、はたから見ると姉妹にしか見えない。
どこから調達したのか、スミレの執事のクロードが白のカップに紅茶をいれ、スミレとユリの前に置く。
そしてスミレの後に控えた。
ちょっとした非日常空間にあっけにとられていた周囲の人間も少し落ち着くと、なんとか話して御近づきになりたい…とソワソワしだした。
微笑を浮かべた女神様と、無表情な妖精さん(妙な威圧感を放つ笑顔の番犬付き)。
どちらが声をかけやすいかといえば、女神様に軍配が上る。
意を決した一人が、ユリに近付き名を名乗った。
すると我も我もと押し寄せ、ちょっとした押すな押すなの騒ぎとなった。
「少し静かにしてもらえませんか?」
聞き惚れそうな声でユリが言った。
途端に騒ぎは静まり、身内以外の皆が耳をすませた。
「私、リンクを見つめるのに忙がしいの。
雑音は控えてくださらない?
うふふ、髪が1cmと2mm伸びたのね…日にも少し焼けたし、身長は…5mm伸びたわね…筋肉も増えてるわ…」
誰が声を掛けようと、名乗ろうとユリはリンクを見つめたまま微動だにしない。
そして周囲の声を雑音とバッサリ切り捨てた。
女神のごとき外見で言われるとダメージ増量となり、周囲はハートをへし折られた青少年で死屍累々だ。
しかしながらユリは全く気にしない。
ひたすらリンクをガン見中である。
リンクは無の心境でひたすら食べ続ける。
「姉さん、相変わらずだね。いや、ちょっと酷くなってる…?」
「会えない時間がそうさせたの…」
姉の重すぎる愛に若干引き気味の弟妹達であった。




