次に会う約束
アルベール殿下が帰国する日。
王宮の正門前には、見送りのため父上や母上、兄上、そして私たちが集まっていた。
荷馬車には既に荷物が積み込まれ、護衛騎士たちも出発の準備を終えている。
「短い間でしたが、大変お世話になりました。」
アルベール殿下が父上へ一礼する。
「こちらこそ、有意義な時間だった。」
父上は満足そうに頷いた。
「半年後には婚約発表会を開く予定だ。その際に、またティアーナへ来てもらうことになる。」
婚約発表会。
正式に両国へ婚約を公表する、大切な式典だ。
「承知いたしました。その際は、改めてよろしくお願いいたします。」
アルベール殿下は静かに頷いた。
これで、しばらく会うこともないだろう。
そう思っていると、
「陛下。」
アルベール殿下が父上へ声を掛けた。
「もしよろしければ、半年後ではなく、その前にも一度、エレノーラ王女殿下とお会いする機会をいただけないでしょうか。」
父上が少し驚いたように目を瞬く。
「ほう?」
「婚約者同士ですし、半年という期間は少々長く感じます。」
父上はちらりと私を見る。
「エレノーラ、お前はどう思う?」
突然話を振られた。
私は少し考える。
「私は半年後で構いません。」
皆の視線が集まる。
「公務もありますし、お互い忙しいでしょう?」
私は続けた。
「半年なんてあっという間ですわ。婚約発表会の後は、年に一度お会いできれば十分だと思います。」
その瞬間。
アルベール殿下の笑顔が、ほんの僅かに固まった気がした。
……気のせいだろうか。
「一年は、さすがに長すぎるかな。」
アルベール殿下は苦笑する。
「そうでしょうか?」
「私は毎月でも構いません。」
「毎月?」
思わず聞き返す。
「ええ。」
アルベール殿下は穏やかに微笑んだ。
……でも。
何故かその目だけは、少し意地悪そうに笑っている気がする。
気のせいだと思いたい。
「毎週でも、君のためなら喜んで来ますよ。」
「毎週?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
カナルド帝国とティアーナ王国は近いとはいえ、一国の王子が毎週行き来するなど聞いたことがない。
「そんなに来られたら大変ではありませんか?」
「大変ではありません。」
即答だった。
「私は構いませんから。」
何故そこまで。
私は首を傾げる。
父上は口元を押さえ、笑いを堪えているようだった。
母上はというと、何故かとても嬉しそうである。
兄上は完全に面白がっている。
「それでは、三か月に一度くらいが妥当ではないか?」
父上が助け船を出す。
「そうですね。」
アルベール殿下は満足そうに頷いた。
「三か月に一度、お会いできれば嬉しいです。」
皆の視線が再び私へ向く。
……これは、私が頷かなければ終わらない流れなのだろう。
「分かりました。」
私は小さく肩を竦める。
「三か月に一度でしたら。」
「ありがとうございます。」
アルベール殿下は、本当に嬉しそうに微笑んだ。
最近見慣れてきた、自然な笑顔だった。
「では、三か月後を楽しみにしております。」
「ええ。」
こうして私は、気付けば三か月に一度会う約束をさせられていた。
……後から思えば。
あれは完全に丸め込まれていたのだと思う。
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