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★毎日7時、21時に更新★王女エレノーラは婚約者の正体に気づかない ~悪役令嬢のはずが聖女になってしまいました〜  作者: ゆきまる


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王子がやって来るらしい

翌朝。

私はいつもより少しだけ機嫌が良かった。


理由は簡単である。

昨日。

食堂で働く許可を勝ち取ったからだ。

もちろん条件付きではある。


変装必須。

勉強優先。

フォレスト同行。


王家の影まで付くらしい。

少し大袈裟な気もするけれど、許可は許可だ。


勝利である。


「楽しみね」


朝食後、私は上機嫌で紅茶を飲んだ。

今日は食堂へ行く予定はない。

まずはお店で出す料理を考えなければならないからだ。


前世で食べていた料理はいくらでも思い浮かぶ。

問題は再現できるかどうかだ。

一応お城の調理場にお邪魔して調味料をみたところ

大抵の料理は作れそうだった。


「エレ」


向かいに座るフォレストが呆れた顔をした。


「また何か企んでるな」

「失礼ね」


私は胸を張る。


「考えているだけよ」

「お前の場合それが一番危ない」


失礼である。



「エレノーラ」


夕食後のティータイム。

お父様が私を呼んだ。


その瞬間、嫌な予感がした。


最近学んだのだ。

お父様がこういう呼び方をする時は、大抵ろくなことがない。


「何でしょう」


私は警戒しながら紅茶を口に運ぶ。


向かいにはお母様。

隣にはお兄様。 


少し離れた場所にはフォレスト。

今日も何故か呼ばれているらしい。


本来なら剣の訓練の時間だ。


「ご愁傷様」


私が小声で言うと、


「原因がお前だからな」


と返された。


「三週間後」


お父様が口を開く。


「カナルド帝国第一王子、アルベール殿下が来訪する」


私は瞬きをした。


ああ。

婚約者だ。


そういえばいた。


「そうなのですね」


私は頷いた。

お父様が少し首を傾げる。

反応が薄かったらしい。


だってまだ会ったことがないのだ。

知らない人である。

なんなら今この時まで存在を忘れていた。


「そして」


お父様は続けた。


「約一ヶ月滞在する予定だ」


私は固まった。


「えっ長くないかしら?王子って暇なのね。」


思わず口から出た。

部屋が静まり返る。


お母様が目を瞬いた。

お兄様が紅茶を吹きそうになった。


フォレストは顔を伏せている。

肩が震えているので笑っているのだろう。


「長いか?」


お父様が聞いた。


「長いです」


即答だった。


「一ヶ月ですよ?」

「そうだな」

「そんなに話すことあります?」

「婚約者だからな。まぁ我が国の視察も兼ねているのだろう。」


私は少し考えた。

そして真顔で言った。


「私はそんなに暇ではないのですが」

「暇じゃないのか」

「暇じゃないです」  


私は胸を張った。


「週四で魔法塔」

指を一本立てる。


「週三で食堂」

二本目。


「勉強もあるわ」

三本目。


「忙しいじゃない」

「忙しいな」


お兄様が額を押さえる。


「王女の予定ではないな」

「そうかしら」

「そうだ」


全員一致だった。


「エレノーラ」


お父様が真面目な顔になる。


「アルベール殿下は大切な客人だ」

「分かっています」

「時間は作りなさい」


私は少し考えた。

そして頷く。


「努力します。ちなみに夕食だけ共にするとかでもよろしいのでしょうか?」


お父様は何とも言えない顔をした。


おそらく、努力ではなく確約が欲しかったのだろう。

しかも夕食だけではダメらしい。


だか私にも予定がある。


魔法塔も大事だ。

食堂も大事だ。


婚約者は……まあ、うん。どうにかなるだろう。

視察でもなんでも好きにしたらいいと思うわ。



翌日。


私は食堂へ来ていた。


「お嬢ちゃん本当にまた来たんだね?」


おばあさんが少し心配そうにでも嬉しそうに言った。

私は胸を張った。


「ええ、もちろん約束は守るわ。今日はオムライスを作りましょう!」


沈黙。


「おむ……?」

「らいす?」


知らないらしい。


不思議な話だ。

ケチャップもある。

卵もある。

米だってある。

なのにオムライスだけ存在しない。


きっと誰も思いつかなかったのだろう。


「任せなさい」


私は腕まくりをした。

前世で何度も見た。

作り方は知っている。


完璧だ。



三十分後。

私は現実を知った。


「失敗したわ」

「そうだな」


フォレストが頷く。

卵が焦げた。



さらに二十分後。


「また失敗したわ」

「そうだな」


今度は破れた。



さらに三十分後。


「どうしてかしら」


私は卵を見つめる。

知識はある。


作り方も知っている。

なのにうまくいかない。


「なんで知ってるのに作れないんだ?」


フォレストが聞いた。


「知識と技術は別物よ」


私は真顔で答えた。

フォレストも真顔で頷いた。


納得したらしい。



そして、

四回目。


ついに。ついに。


「できた!」


私は歓声を上げた。


ふわりと焼き上がった卵。

その下にはケチャップで炒めたご飯。


完璧である。


たぶん。



「食べてみて」


私はおばあさんと息子さんへ皿を差し出した。


二人は顔を見合わせる。


そして一口。

沈黙。

もう一口。

さらにもう一口。


私は緊張した。


もし美味しくなかったらどうしよう。

そんな不安が頭をよぎる。


やがて。


「うまい」


息子さんが呟いた。

私はぱっと顔を上げた。


「本当!?」

「本当だ」


今度はおばあさんも頷く。


「初めて食べる味だねぇ」

「美味しい?」

「美味しいよ」


その言葉に胸が温かくなった。

なんだかとても嬉しかった。



「これなら売れるかもしれないな」


息子さんが言う。

私は満足げに頷いた。


「でしょう?」

「自信満々だな」


フォレストが呆れる。


「成功したもの」

「四回目でな」


細かいことは気にしない。

成功は成功だ。



帰り道。


夕焼けに染まる城下町を歩きながら私は満足していた。


新しい料理は成功した。

食堂の雰囲気も少し元気になった。


良い一日だった。


「そういえば」


私はふと思い出す。


「三週間後に王子が来るのよね」

「ああ」


フォレストが頷く。


「一ヶ月もいるらしいわ」

「そうだな」


私は少し考える。そして結論を出した。


「やっぱり長いわ」


フォレストが呆れ顔だ


「まだ言うのか」

「だって長いもの」


私は空を見上げる。


「魔法塔と食堂の時間は減らしたくないわね」

「そっちが優先か」


当然である。

私は大きく頷いた。


「ちなみにアルベール殿下とやらは今何歳かしら?」

「俺の一個下だったから九歳だ。」

「子供じゃない」

「お前も八歳だろ」

「それとこれとは別よ。」


そんな私を見て、フォレストは深いため息を吐くのだった。

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