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★毎日7時、21時に更新★王女エレノーラは婚約者の正体に気づかない ~悪役令嬢のはずが聖女になってしまいました〜  作者: ゆきまる


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プロローグ

どうぞよろしくお願いします!

城下町の食堂。

昼時の忙しさがようやく落ち着き始めた頃だった。


店内には焼き魚の香ばしい匂いと、煮込み料理の優しい香りが漂っている。先ほどまで満席だった客席も今はちらほらと空席が見え、常連客たちが食後のお茶を飲みながら談笑していた。


私は木製のテーブルを拭きながら大きく息を吐く。


今日も忙しかった。

けれど嫌ではない。


王宮では聞けない町の人たちの話を聞けるし、美味しい料理の匂いに囲まれて働くのは意外と楽しいのだ。


その時だった。


カラン、と扉の鈴が鳴る。


「いらっしゃいませ!」


反射的に笑顔を浮かべて振り返る。

すると、見慣れた姿が目に入った。


黒髪に青い瞳。

すらりと背が高く、何気ない服装をしていてもどこか品がある。


常連客の中でも特に目立つ青年だった。


「いつもの席、空いてるわよ」


窓際の席を指差すと、青年は小さく笑った。


「ありがとう」


その笑顔を見て、私はほんの少しだけ眉をひそめる。

相変わらず胡散臭い。

優しそうな笑顔なのに、何を考えているのか分からない。

まるで仮面でも被っているみたいだ。


どこか――。

私はふと首を傾げた。

どこかで見たことがある気がする。


思い浮かんだのは、一人の人物だった。

アルベール・ヴァン・カナルド。

隣国カナルド王国の第一王子。

そして私の婚約者。

三、四か月に一度顔を合わせる相手。


完璧な礼儀。

完璧な笑顔。

完璧な王子様。


だからこそ胡散臭いと初めて会った頃は思っていた。

あんなに完璧な人間がいるわけがない、と。

最近は変わってきた気がするが彼に似ている


「どうかした?」


いつの間にか青年がこちらを見ていた。

私は慌てて首を振る。


「別に」


ただ少し似ていると思っただけだ。

もちろん、顔は全然違う。


髪の色も違う。

瞳の色も違う。


そもそも、アルベール殿下がこんな食堂へ来るはずがない。


だからきっと気のせいだ。


私はそう結論付けると、注文を取りに向かった。


――この時の私は知らなかった。


目の前の常連客が、まさにその婚約者本人だということを。

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