第5話 狐姫との朝
ピピピ!ピピピ!ピピピ!
アラームが鳴り、甲斐が時計を止めると、両腕を上に向かってグ~ンと伸ばす。
「起きるか……」
時間は朝5時。まだ日が昇っていない時間帯だ。
朝早く起きて、時間までゆっくり過ごすのが甲斐のルーティンだった。
(うん?キッチンから物音が……)
キッチンを見に行くと、しえが朝食を作っていた。
「おはようございます」
「お、おはようございます。早いですね」
「4時ぐらいに起きました」
「早っ!」
「そうですか?今、朝食準備してるので待っててください」
「分かりました。ありがとうございます」
歯磨きをして、部屋で体操をして、着替えてリビングに向かうと朝食ができあがっていた。
「お、美味しそう……」
「味見はしましたが、お口に合うかどうか……」
「絶対美味しいですよ!」
二人が席に座ると、手を合わせる。
「「いただきます」」
甲斐は早速、味噌汁が入った器を持つと、飲み始める。
「……美味しいです」
「……!よかったです」
「他の料理も美味しそうですね。どれを食べようかな?」
甲斐の顔をしえがじっと見つめる。
「上手にできてますか?」
「美味しいですよ!僕よりも料理上手だと思います」
「それはないですよ。私……まだこの世界に来て3日なので……」
「それでこの朝食は凄いですよ!僕が一人暮らしを始めた時は自炊が大変で……慣れるのに数か月はかかったので」
「甲斐さんが?」
「僕はしえさんのご飯好きですよ?自信もってください!」
甲斐の微笑みを見ると、しえの表情も緩んで笑顔になる。
「ありがとうございます」
時間になると、甲斐は鞄を持ち、出勤の準備をする。
「そろそろ出勤するのでいってきます」
「あっ……」
甲斐が玄関で靴を履いていると、しえが恥ずかしそうにやって来る。
「どうかしましたか?」
「えっと……いってらっしゃい?を言いに……」
「あぁ……」
そう言われるのはいつぶりだろうか。大学卒業してから聞いてない気がする。
「じゃあ……いってきます」
「いってらっしゃい」
しえが見送ると、甲斐は少し嬉しそうに向かった。
会社で仕事をしていた甲斐は、腕時計で時間を確認する。
(もうそんな時間か……お昼行くか)
席を立ちあがり、ご飯を買いに行こうとすると後ろから声をかけられた。
「と、富田さん!」
振り返ると、後輩の住野瑞希が立っていた。
「住野さん……どうしたの?」
「お、お昼一緒に行きませんか?私も丁度終わって……」
「そうなんだ。じゃあ一緒に行こうか?」
「は、はい!」
瑞希は嬉しそうに返事をした。
「それにしても住野さんが声をかけてくるなんて……仕事の相談?」
「い、いえ!その……たまたまお昼に買いに行こうとしたら富田さんが出ようとしてたので……」
「そっか。悩んでることあったら言ってね」
「ありがとうございます!」
二人は近くのファミレスに入ると、席に座って注文する。
「カルボナーラをひとつ」
「私はミートソースパスタを」
「かしこまりました」
店員が去ると、瑞希は恥ずかしそうな表情で口を開く。
「と、富田さん……今日……時間あります?」
「今日?」
「はい。いつもお世話になっているのでお食事でも一緒にどうかと……」
「あぁ……ごめん。今日は早く帰らないといけないんだ」
「そう……ですか……」
瑞希のお礼をしたいという気持ちに答えたいという思いはあるが、婚約者がいる自分は断るしかなかった。
「ごめんね」
「いえ……その……何かご予定が?」
「予定……」
どうしよう……婚約者ができたことを言うべきだろうか。
しかも0日婚ということを……まだ会社にも報告してないし……
「さ、最近新作のゲームを買ってさ!それを早くやりたいなと思って……だからごめんね」
「そうなんですか……富田さんってゲーム好きだったんですね」
「ま、まぁね……」
普段はしないけど……
「お待たせしました。カルボナーラとミートソースパスタです」
「ありがとうございます」
料理が置かれると、二人は手を合わせる。
「「いただきます」」
食べ始めた二人は仕事の話をし始めた。
「富田さんが考案した案……採用されたって凄いですね」
「認められてよかったよ」
「順調に進めば昇格できるんじゃないですか?」
昇格……昇格すれば仕事の質が上がり、責任が増える。
それでも給料が上がって、しえとの生活に使うことができる。
「……そうだね。頑張る」
「頑張ってください!私も全力でサポートします!」
瑞希は仕事上等!とやる気満々の表情をしていた。
[あとがき]
※諸事情により、6話以降は不定期投稿となります。
投稿の際は、水曜18時に投稿します。




