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第25話 呪い【魔獣ジュリアス視点4】

「呪いだと!?」


 サイモンさんが目を見開く。


「はい。カルロスさんの足首にある黒い痣。それは魔法を跳ね返す呪いの力。それに、そのブーツを見るとすでに劣化が始まっています」


 僕は床に転がったブーツに目を向けた。

 ブーツは黒く変色した足首部分から、徐々に広がっている。


「これは、朽ち果ての呪いだと思います」


「朽ち果ての呪いだと……」


「その靴を履いた人は、革が劣化するように朽ち果てていくのです」


 僕の言葉にサイモンさんは愕然とした表情になった。


「呪いなんて嘘だろ……。革が劣化するように、ってなんだよ! その後はどうなるんだよ。カルロスは、いったい、どうなるんだよ!」


 僕は力なく首を左右に振った。それを見たサイモンさんは胸に抱いたカルロスさんをぎゅっと抱きしめる。


「なんだよ……。なんで、カルロスが呪いなんかに掛からなきゃいけないんだ……。俺たちばかりひどい目に……、呪いなんてあり得ないだろ……」


 サイモンさんが何かに気が付いたように僕をみた。


「そうだ! 呪いの腕輪や指輪なら、(つい)となっているモノがあるんだろ。それならば、このブーツと対となっているものを探せばいいんだ、な、そうだろ」


「それらは縛りの呪いです。腕輪や指輪に主従関係を掛ける呪いです。ですが、カルロスさんは朽ち果ての呪いをかけられています」


「じゃ、無理なのか……。誰もカルロスを助けられないって言うのか」


「呪いは強い呪怨から来るものですから、魔法でも解呪はできません。カルロスさんの場合は、そのブーツが原因だと見ます。ですが、どうしてカルロスさんが呪いのブーツなんて身に着けることになったのですか」


 僕はカルロスさんが履いていた黒く変色したブーツを見ながらサイモンさんに尋ねてみた。


「ちがう……。違うんだ。カルロスが呪いの靴を履いたわけじゃない。最初からカルロスが身に着けていた普通のブーツだった。だが、狼に噛まれて……。そうだ、あの銀色の狼の仕業だ」


 銀色の狼……。

 僕はその言葉にひっかかりを覚えたが、サイモンさんの話を黙って聞くことにした。


「あの銀色の狼のせいで、カルロスはこんなことになったんだ。今朝、この屋敷にドワーフが来て、その傍らに銀色の狼も居た。小汚いドワーフがこの街で商品を売りたいから、領主に取り次いでほしいとバカなことを言うから、俺が追い払った。だが、なかなか帰らず、大きな革袋を見せてきて、この袋の中には村で作ったものが入っている。これを街で売りたいと、また同じことを言うから、カルロスが、脅かすついでに、持っている剣でドワーフの持っているその大きな革袋をひょいっと取り上げた。そしてカルロスはドワーフに向けてこう言ったんだ。『人間の領地は、お前らドワーフが来ていいところじゃない。これは俺がもらってやる』そのときだ、ドワースの傍にいた銀色の狼がカルロスの足首を噛んだ」


 サイモンさんは忌々しいというような目で、黒く変色したブーツをみる。


「俺が剣で狼を切ろうとしたら、すでに奴らの姿は消えていた。カルロスはこれぐらいなんともないと平然と笑っていた。俺もカルロスの噛まれた右足首を見たが、ブーツに穴が開いているだけだった。だが、しばらくすると、カルロスは足が痛い、痛いといいだし、そのうち倒れてしまった」


 カルロスさんが噛まれた右足のブーツ。たぶん噛まれたときに朽ち果ての呪いが発動し、身に着けていたカルロスさんよりもブーツの方が先に劣化が始まった。そして今では黒くなっていたブーツはボロボロと崩れていく。


「銀色の狼……。そして呪いの力……」


 そう言っている僕の視線の先では、ブーツはサラサラと黒い砂のようなものになり、床の上に残された。


「なぁ、本当は呪いなんかじゃないんだろ。カルロスは、ただのケガじゃないか。いや、毒の可能性だってあるだろ。ちゃんと見てくれよ。だって銀色の狼といっても、見た目は普通の狼だった。そんな狼が呪いなど掛けられるはずないだろ」


 黒い砂のようになった靴をその目で見てもサイモンさんはそう言い続ける。本当はサイモンさんもこれが呪いだと薄々気づいているはずだ。でも、認めたくないんだ。どこかに希望を見いだそうとしている。その気持ちが僕にはよく分かる。


 けれど……。


「カルロスさんに呪いを掛けたのは狼じゃなく……、フェンリルではないでしょうか」


「フェンリル……? まさか!? フェンリルなど、伝説の魔物だろ。それにもし、あの狼が本当にフェンリルなら、もっとデカいはずだろ。俺が見たのは、普通の大きさの狼だった」


「まだ子供のフェンリルかもしれません。それにドワーフと一緒にいたというのなら、ドワーフの村で育てられていた可能性もあります」


「だから何だってんだ、そんな魔物がドワーフに育てられたからって……」


 そこまで言うと、何かに気が付いたように、

「まさか、ドワーフがフェンリルを操り、カルロスに呪いをかけたと言うのか」


「そこまではわかりません。ですが伝説の魔物フェンリルには特別な力があると古い書籍にも載っています。そんな魔物であっても、小さなころから育てると他種族に懐き、意思の疎通ができるとも書かれていました」


「本当にあの狼がフェンリルなのか……。なんてことだ……。どうすればこの呪いは解けるんだ……」


「すみません、わかりません……」


「くそ、くそ、くそ! どうすれば、カルロスを助けられるんだ……。お前がダメなら、誰が呪いを解くっていうんだよ……」


 カルロスさんを抱き締め、サイモンさんが絶望する姿に、僕はただ見ているだけしか出来なかった。


「いや、待てよ……、そうだ。あの女がいるじゃないか」


 サイモンさんの目が鋭く光った。


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