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季節がめぐる中で 96

「わかりました」 

 そう言うとマスターは忙しげに手元のカップを並べていく。

「いつから気づいていた?」 

 吉田がそう言ったので誠は少し驚いていた。考えてみれば彼等がついてこないわけは無いことは誠にも理解できた。保安隊とはそう言うところだと学習するには四ヶ月と言う時間は十分だった。愛想笑いを浮かべる要達を眺める誠。配属以降、誠が気づいたことと言えば保安隊の面々は基本的にはお人よしだと言うことだった。

 アイシャが悩んでいると聞けば気になる。ついている誠が頼りにならないとなれば仕事を誰かに押し付けてでもついてくる。

「まあ……どうせお姉さんの車に探知機でもつけてるんじゃないですか?情報統括担当の少佐殿」 

 そう言ってアイシャはシャムの手に握られた猫耳を押し付けられそうになっている吉田に声をかける。

「でも実際はあいつ等がアホだから見つかったんだろ?」 

 ランはそう言って要とカウラを指差した。

「まあ、そうですね。あの二人がいつ突っかかってくるかと楽しみにしてましたから」 

 余裕の笑みと色気のある流し目。要もカウラもそんなアイシャにただ頭を掻きながら照れるしかなかった。

「で、結論は出たんか?野球の話の」 

 そう言ってアイシャを見つめるラン。子供の体型の割りに鋭いその視線がアイシャを捕らえる。

「まあ、ある程度は」 

 そう言うとアイシャは静かにコーヒーを口に含んだ。誠もまねをしてコーヒーを一口飲む。確かにこれは価値のあるコーヒーだ。そう思いながら口の中の苦味を堪能していた。

「実際どうなんだろうねえ。今回の法術問題。ドーピングやサイボーグ化とはかなり問題が異質だからな」 

 そう言いながら水を飲む要。その隣では吉田がついに諦めて自分から猫耳をつけることにした。

「何やってるんですか?」 

 カウラは思わずそんな吉田に声をかけた。

「えーと。猫耳」 

 他に言うことが思いつかなかったのか吉田のその言葉に店の中に重苦しい雰囲気が漂う。

「オメー等帰れ!いいから帰れ」 

 呆れてランがそう言ったのでとりあえず静かにしようと吉田はシャムに猫耳を返した。

「話はまとまったのかな?」 

 そう言うとにこやかに笑うマスターがランの前にコーヒーの入ったカップを置いた。

「香りは好きなんだよな。アタシも」 

 そう言うとランはカップに鼻を近づける。

「良い香りだよね!」 

 シャムはそう言って満面の笑みで吉田を見つめた。

「まあな」 

 そう言うと吉田はブラックのままコーヒーを飲み始めた。

「少しは味と香りを楽しめよ」 

 要は静かに目の前に漂う湯気を軽くあおって香りを引き寄せる。隣のカウラはミルクを注ぎ、グラニュー糖を軽く一匙コーヒーに注いでカップをかき回していた。

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