季節がめぐる中で 97
恐る恐る口にコーヒーを含むラン。次の瞬間その表情が柔らかくなった。
「うめー!」
その一言にマスターの表情が緩む。
「中佐殿は飲まず嫌いをしていたんですね」
そう言って面白そうにランの顔を覗き込むアイシャ。
「別にいいだろうが!」
そう言いながら静かにコーヒーを飲むランにマスターは気がついたというように手元からケーキを取り出した。
「サービスですよ」
そう言って笑うマスター。
「これはすいませんねえ。良いんですか?」
「ええ、うちのコーヒーを気に入ってくれたんですから」
そう言って笑うマスターにランは、受け取ったケーキに早速取り掛かった。
「あーずるい!」
「頼めば良いだろ?」
叫ぶシャムを迷惑そうに見ながら手元のケーキ類のメニューを渡す要。
「なんだ、ケーキもあるじゃん」
そう言いながら吉田はシャムとケーキのメニューを見回し始めた。
「それにしてもアイシャさん。本当に軍人さんだったんですね」
「軍籍はあるけど、身分としては司法機関要員ねあの保安隊の隊員ですから」
「そーだな。一応、司法執行機関扱いだからな」
そう言いながらケーキと格闘するランはやはり見た通りの8歳前後の少女に見えた。
「チョコケーキ!」
「あのなあ、叫ばなくてもいいだろ?俺はマロンで」
吉田とシャムの注文に相好を崩すマスター。
「何しに来たんだよ、オメエ等」
「いいじゃないか別に。私はチーズケーキ」
要を放置してケーキを注文するカウラ。誠は苦笑いを浮かべながらアイシャを見つめた。コーヒーを飲みながら、動かした視線の中に誠を見つけたアイシャはにこりと笑った。その姿に思わず誠は目をそらして、言い訳をするように自分のカップの中のコーヒーを口に注ぎ込んだ。




