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季節がめぐる中で 57

 隠れていたアイシャを追い返すとそのまますばやく着替えを終えて食堂に入る。いつものことながら技術部法術技術技師長、ヨハン・シュペルター中尉が食事当番の時の朝食は豪勢である。

 最高級のウィンナーとハム。それにスクランプルエッグが食欲を誘う。どれも材料は東和の有機栽培農場から取り寄せた最高級品とシャムの育てた菜園の恵み。食べることに人生をかけているヨハンは自分の給与を裂いてまで食卓の充実に力を尽くしていた。それを味わうこともなく口に詰め込む要。

「要ちゃんは味なんてわからないんでしょうね」 

 そう言いながら緑色のジャケットを着たアイシャがちゃんとマスタードを塗りながらウィンナーソーセージを食べている。

「そう言えば今日から隊長休みだったわよねえ」 

「知らねえよ、アタシは叔父貴の保護者じゃねえんだから」 

 周りは半分も食べていないと言うのに皿の隅に残った卵のカスを突くだけになった要が答える。

「殿上会。お前も恩位で伯爵の爵位を持っているんだから出ないといけないんじゃないのか?」 

 そう言いながらトマトを箸で掴むカウラをあからさまに嫌な顔をした要が見つめる。当主ではない要も一応は胡州の有力貴族の息女として女伯爵の位を持っていることは誠も知っていた。

「あんな公家連中の相手なんて想像しただけで吐き気がするぜ」 

 そう言いながらテーブルに置かれたやかんから番茶を汲む要。

「そう言って、実は康子様に会うのが嫌なんじゃないの?」 

 アイシャのその言葉にびくりと震え、静かに湯飲みをテーブルに置く要。

「康子様?」 

 不思議そうに要の顔を見る誠。その名前を聞いてから確かに要の行動がどこか空々しいものになっている。

「ああ、この胡州四大公筆頭西園寺要嬢のご母堂様よ。まあ胡州帝国西園寺基義首相のファーストレディーと言った方が正確かしら」 

 タレ目で迫力が減少しているとは言え、明らかに殺意を込めた視線をアイシャに送りながら要は番茶をすすっている。

「別名、遼州星系最強の生物」 

 そう付け加えると茶碗の中の最後のご飯を口に突っ込むカウラ。

「要さんのお母さんがですか?」 

「そう言ってたろ、こいつ等も」 

 ぎこちない動きを見せる要に思わず噴出しそうになる誠。だが、ここで噴出せばただではすまないと必死にこらえて茶碗のご飯を無理やり喉に押し込んだ。

「まあ康子様からの電話を取り次いだ時のあの隊長の恐怖に震える表情は最高だったけどねえ」 

 そう言いながら自分の手元にやかんを持ってくるアイシャ。

「あの人がびびる……つまり凄い人なんですね」 

「凄いんじゃねえよ、ただのアホだ」 

 誠の言葉に、要はそう自分の母を切って捨てた。

「あんまりそう言うこと言うもんじゃないわよ。それじゃあ誠ちゃん、シャワーでも浴びてきなさいよ。そのままじゃ酒臭くてかなわないわ」 

 アイシャはそう言うと誠の肩を叩いた。

「30分で支度を済ませろ。遅れたら置いていくからな」 

 カウラもそう言うと立ち上がった。誠は番茶も飲めずにそのままシャワーへいかなければならない雰囲気に立ち去らなければならなくなっていた。

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