季節がめぐる中で 51
それを見たアイシャの反応は早かった。素早く誠の手からビール瓶を奪い取り、春子の盆からグラスを取り上げると真っ直ぐにランの前に座った。
「では、中佐殿お注ぎしますね」
満面の笑みを浮かべて、口元が引きつっているランのグラスにビールを注ぎ始める。
「おっ、おう。ありがとーな」
なみなみと注がれたビールを微妙な表情で眺めるラン。気付けば茜やシャムがビールを注いで回っている。
「オメエも気がつけよ」
そう言うと要は誠にグラスを向ける。気付いた誠は素早く要のボトルからラム酒を注ぐ。
「おう、じゃあなんだ。とにかく新体制の基盤ができたことに乾杯!」
そう言って嵯峨が音頭をとって宴会は始まる。じっとランが目の前の自分のコップの中のビールを見つめている。一口だけ酒や烏龍茶を口に含んだ一同はランの冷や汗を流している姿を見ていた。
「やっぱ、餓鬼には無理かねえ」
「無理じゃねーよ!」
要の挑発に乗るようにしてランはグラスに口をつける。そのまま伸びをするようにしてビールを飲み干していく。
「あ、あのう。大丈夫ですか?」
心配性なパーラが声をかけた。グラスのビールを飲み干したラン。彼女が思い切りゲップをする。
「汚ねえなあ……」
そう言う要を睨みつけた後、ランはアイシャにグラスを差し出す。
「もう一杯だ、注げ」
そう言われて慌てたようにアイシャは瓶を取り上げてビールを注ぐ。またなみなみと注がれたビール。覚悟を決めたと言うように一気に喉に流し込むラン。急にランの表情が変わった。飲み干して、じっとグラスを見るラン。
「うめーな」
ポツリとつぶやくラン。その言葉に要は慌てたような表情を浮かべる。
「嘘言うなよ、苦いの嫌いなんだろ?」
そう言ってラム酒を飲み干した要をタレ目で見つめるラン。
「馬鹿言うなよ。ビールは喉越しっていうだろ?舌で味わうと苦いばかりだったが、冷えたのを喉に流し込むと結構いけるじゃねーか」
そう言って飲み干したグラスを再びアイシャの方に向けるラン。




