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季節がめぐる中で 37

「それじゃあアタシはシャムの機体使うからな」 

 ハンガーに入って口を開いたランはそこまで言うとまた誠をにらみつけた。かわいらしい少女とも見えたが、その目つきの悪さは誠の背筋を冷やすのには十分だった。

「なんだ?その面は」 

 そう言うと近づいてくるラン。

「いえ!何でもないであります!」 

「声が裏返ってるぞ。まあいいや、さっさと乗れよ。パイロットスーツなんかいらねえからな」 

 そう言うとランは敬礼している整備兵達を押しのけてシャムの第一小隊二号機へと歩いていった。

「大変ですねえ、神前さん」 

 耳打ちをする西。彼と一緒に誠はコックピットに上がるエレベータに乗った。

「島田班長は本当についてますねえ、今の時期にクバルカンに出張で」 

「島田先輩がどうかしたのか?」 

 そう尋ねる誠に西は後悔をしたような表情を浮かべる。そしてゆっくりと語り始めた。

「班長は元々パイロット志願で、クバルカ中佐の教導受けていたんですよ。ですがクバルカ中佐はああ言う人でしょ?パイロットなんか辞めちまえ!って言われてそのままパイロットを辞めて技官になったんですよ」 

 エレベータが止まる。シャムの機体を見るとこちらをにらみつけるランの姿が見える。西は誠の後ろに隠れてランの視線から隠れた。

「まあがんばってくださいね」 

 コックピットに乗り込む誠に冷ややかな視線を浴びせる西。誠はそのまま整備の完了している愛機のシミュレーションモードを起動させた。点灯した全周囲モニターの一角に移るランの顔。鋭い視線が誠をうがつ。

「神前。秘匿回線に変えろ!」 

 鋭いランの一言に誠はつい従ってアイシャの映っているモニターに映像が映らないように回線をいじった。

「西にいろいろ言われただろ?アタシが島田をどつきまわしてパイロットをあきらめさせたとかなんとか」 

 まるで会話を聞いていたように言われた誠は静かに頷くしかなかった。

「まあ、アタシの教導は確かに厳しいと思っておいて間違いねーよ。だがな、それはオメー等のためなんだ。戦場じゃあ敵は加減なんてしてくれねーし、味方がいつも一緒に居るとは限らねー。自分のケツも拭けねー奴に何ができるってんだ。だからアタシは加減はしねーし怒鳴るときは怒鳴るからな」 

 相変わらず乱暴な言葉遣いのランがそこまで言うと、不意にこれまで見たこともないようなやわらかい子供のような表情を浮かべた。

「でもまあ、アタシは期待している奴しかぶっ叩いたりしねーよ。アタシはオメーに期待してるんだ」 

 そう言うとランの顔に無邪気な笑顔が浮かんだ。見た感じ8歳くらいに見えるランの見た目の年齢の子供達が浮かべるような笑顔がそこにあった。

「まあそんなわけだ。回線を戻せ」 

 そう言ったランはまた不機嫌そうな表情に戻った。その転換の早さに誠は唖然とした。

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