季節がめぐる中で 32
気がつけば嵯峨の手には見かけない大型拳銃が握られている。
「ルガー?」
その特徴的なトルグアクションに視線を奪われる要。
「モーゼル・モデル・パラベラム。昔、オーストリアの伍長殿の起こしたどんぱちが終わってから作られたリバイバルバージョンだ。ガンショーとかでは結構いい値がつくんだぜ」
嵯峨はそう言うと素早くマガジンを抜いた。
「こりゃあずいぶん趣味的なチョイスじゃねえか。神前の豆鉄砲と交換するのか?」
そう言いながら手を伸ばす要。全員は彼女の手の動きに目を向ける。何度か安全装置をいじる要。
「なんだよ、じろじろ見やがって。オメエも持ってみるか?」
そう言うと肉を噛んでいたカウラに銃を手渡す。彼女も何度か手にした銃の薬室を開いては覗き込んでいる。
「あと二、三マガジン撃ってから調整するからな」
そう言いながら再び皿から牛タンを七輪の上の網に載せる嵯峨。食事を済ませたというアイシャも黙って彼が載せた肉を素早く取り上げて焼き始めた。
「グリップはウォールナットのスムースですか?」
カウラから渡された拳銃のグリップを撫でながらパーラがキムに尋ねた。
「俺はチェッカーの入った奴が好みなんだけど、オリジナルが良いって隊長が言うんでね。撃ってみて問題があるようなら交換するけど」
そう言うとキムは半焼きの肉を口に放り込む。
「拳銃談義はそれくらいにして、隊長の殿上会出席のための留守の勤務のシフトは……」
アイシャのその言葉に黙って手を上げる明華。
「それより私の知り合いに新しい職場を見たいという奇特な人が来るけどそちらの対応は……」
笑顔を要に向ける明華。明らかに気分を害したとでも言うように、要はパーラの焼いていた肉を奪い取って口に入れる。情けない顔をするパーラに、リアナが気を利かせて自分の焼いていた肉を渡した。
「それにしても殿上会で家督相続の承認……降りるんですか?普通そう言うのはしっかりした理由が無いと難しい気がするんですけど……」
誠はこの雰囲気に耐えられずにそう言った。そんな誠を無視するように要は彼の焼いていた肉を自分の口に入れる。
「まあ、上座の兄貴と大河内卿には根回しは済んでるよ。それにこの前の近藤事件で俺に貸を作った連中もこの件では俺と同調することになってる。あえて言えば烏丸卿の一派だが……」
「響子か。あいつはそれほど弱くはねえよ。確かに烏丸の被官の下級貴族の連中は親父を目の仇にして、なんでも反対で通すつもりだろうが、特権階級が胡州のお荷物で腐敗の元凶だってことぐらいわからねえほど馬鹿じゃねえよ。自称愛国者ってのも使いようがあるもんだ」
そう言って誠が載せた肉を再び奪い取って口に入れる要。
「烏丸女公爵とはお知り合いなんですか?」
誠のその言葉に、呆れたというように要は天を見上げた。




