季節がめぐる中で 158
駐車場に滑り込むスポーツカーに駆け寄る少女の姿があった。ナンバルゲニア・シャムラード中尉はその車の後部座席に誠の姿を見ると駆け寄ってくる。
「おい、どうしたシャム」
無表情で車の助手席から降りたアイシャ。それに続いて降りてきた要を無視してシャムは狭苦しさから解放されて伸びをする誠の肩を叩く。
「隊長が呼んでるよ!急げって」
そう言い残すとシャムは公用車のガレージの前につながれている彼女の相方の巨大な熊、グレゴリウス13世のところへと走り去る。
「なんだ、降格か?」
相変わらずの上機嫌で誠の肩を叩く誠。
「じゃあ先に着替えますから」
誠はそのまま珍しく正門から保安隊の隊舎に入った。
まだ時間も早く、人の気配は無かった。誠はすぐさま目の前の階段を駆け上がり、二階の医務室を横目に見ながらそのまま男子更衣室に入った。
そこには見慣れない浅黒い肌の少年が着替えをしていた。見たことの無い少年に怪訝そうな顔を向ける誠。少年は上半身裸の状態で誠を見つけると思わず肌を脱いだばかりのTシャツで隠した。
「新人君か?」
誠はそのまま自分のロッカーを開けてジャンバーを脱ぎだした。
「神前誠曹長ですよね?」
おどおどとした声はまるで声変わりをしていないと言うような高く響く声だった。
「ああ、そうだけど。君は?」
「失礼しました!本日から保安隊実働部隊第三小隊に配属になりましたアン・ナン・パク軍曹です!」
少年はTシャツを投げ捨てて誠に敬礼する。あまりに緊張している彼に誠は苦笑いを浮かべながら敬礼を返した。
「そんなに緊張することじゃないだろ?それにしても君は若く見えるね、いくつ?」
相手が後輩らしい後輩とわかると自然と自分の態度が大きくなるのに気づきながらも誠は少年にそう尋ねた。
「先月19歳になりました!」
直立不動の姿勢で叫ぶアンに誠は照れて頭を掻く。
「そうか、まあそうだよな。パイロット研修とかしたらそうなるよね。それにしてもそんなに緊張しないほうがいいよ。僕も正式配属して半年も経っていないし……」
そう言う誠にアンは安心したと言うように姿勢を崩した。
「やっぱり思ったとおりの人ですね、神前曹長は」
急にしなを作ったような笑顔を浮かべながらワイシャツに袖を通すアン。誠はそのまま着替えを続けた。
「僕はそんなに有名なのかな?」
「すごい戦果じゃないですか!初出撃で敵アサルト・モジュールを七機撃墜なんて常人の予想の範囲外ですよ。そして先日の法術兵器の運用による制圧行動。遼南でもすごい話題になってましたよ」
ワイシャツのボタンをとめるのも忘れて話し出すアンに正直なところ誠は辟易していた。
「ああ、そうなんだ。じゃあアン軍曹は遼南帝国軍からの転属?」
「はい、遼南南部軍管区所属二十三混成機動師団からの出向です」
はきはきと誠の顔を見ながらうれしそうに話すアン。誠はそのこびるような口調を不審に思いながらも着替えを続けようとズボンのベルトに手をかけた。




