季節がめぐる中で 152
「ああ、そう言えば島田先輩達は?」
間の抜けた誠の質問に要達は目を見合わせる。
「回収済みだ。島田はもう歩いてるよ」
「ああ、仕事は無理だから部屋で休ませているけどな……ったくうちに馬鹿が多いのは誰のせいかしら?」
明石の顔を見つめる明華。その視線の中でつるつるの頭の巨漢は婚約者に見つめられながら頭をを撫でながら苦笑いを浮かべる。
「じゃあ帰還中ですか」
続いている頭痛に顔をしかめながら明石を見上げる。明石は声も無く頷いた。そして彼はスポーツ新聞を誠に渡した。場違いな新聞に不審に思いながら頭を上げて記事を見つめる誠。そこには蛍光ペンで縁取られた記事が踊っていた。
「法術適正者の封印技術の発表?」
誠はしばらくこれが何を意味するか分からずにいた。自然に視線が向いた先のアイシャが紺色の長い髪をかき上げている。
「なんで私の顔を見るの?」
「いえ……あ!そう言えば今度の職業野球のドラフトって明後日じゃないですか?」
ようやく誠は話が飲み込めた。法術適正により東都職業野球のドラフトから排除されるはずだったアマチュアのスター達が復活し、アイシャの指名順が下がるかリストから消えるだろうと言うことを。
「なんて言うか……」
「どちらにしろワレは問題になっとらんからのう」
明石の言葉に照れ笑いを浮かべる誠。自然と左肩に手が伸びるのはまだこだわりを捨てきれないのかも知れないと思いながら誠は静かに手を話した。
「アイシャ。やっぱりプロ行きたかったんじゃないのか?」
ニヤニヤしながら切り出す要。だが、笑顔を称えたままでアイシャは首を横に振る。
「今の仕事は気に入っているし、そんな勝負の世界のギリギリの精神状況なんてこっちから願い下げよ。それに誠ちゃんが……」
笑うアイシャ。緊張が走るのを悟って誠は再び記事に目を通した。
「へえ、アマチュア競技のすべてで登録選手の検査実施と法術適正者の封印処置について地球連合保険局と遼州同盟厚生部局が責任を持つ、ですか。スポーツが平和貢献するとはなかなかいい話ですね」
そう言って誠は新聞を要に渡した。ドムが気を利かせてスポーツ飲料のペットボトルを誠に渡す。
「病人を刺激するのはそれくらいにしておいてくれ。あとはあれだ。脱水症状に注意しながら安静にしてれば何とかなる。まあベルガーはもう動いても大丈夫だぞ」
ドムの言葉にカーテンがひらかれる。上着をつっかけた姿のカウラがのろのろと起きだしてきた。明らかに顔色が悪いのは仕方が無いことだと誠は笑った。
「よう、飲みすぎ隊長殿。ご気分は?」
へらへらと笑いかける要を黙って睨みつけるカウラ。誠はドムからもらったペットボトルを飲み干すとそのままベッドに体を横たえた。
その姿を見て明石や明華は納得したように要達に目配せする。要は珍しくじっと誠を見つめた後、布団を誠にかけてやっていた。
「これでミッションは最終局面に入ったわけだ」
彼らを見つめながら吉田がそうつぶやくのが誠の耳に届いたが、次第に睡魔に襲われていく彼にその言葉を意識する能力はすでに無かった。




