季節がめぐる中で 151
まず襲ってきたのは激しい頭痛だった。そして吐き気。嘔吐するがもはや胃袋の中に吐くものは無かった。そして目が見開かれる。
「おお、起きたぞ」
苦しみの中、誠が目を開けると見下ろしているのはタレ目の要だった。すぐにアイシャと明華の顔が目に飛び込んでくる。口の中には吐しゃ物の残滓が残り気分が悪い。
「水は……」
「とりあえずこれを飲め」
そう要に言われてゆっくりと上体を起こす。支えているのはアイシャ。要は色のついた液体を誠の口の前に運ぶ。ぬるくてすっぱい黄色い液体を誠は静かに飲み始めた。ようやくここが『高雄』の医務室であると言うことが分かって誠は恥ずかしさで顔を赤く染めた。
「まったく無茶な飲み方しやがって。まあ、あっちよりはかなりましだろうからな」
笑いながら要は隣のカーテンで仕切られたベッドを眺めた。時々うなり声がするので誰かがそこにいるのは間違いなかった。
「神前にも困ったもんだな。どうせ酔いつぶれればあの歌に耐えられるとでも思ったんでしょ?まあ世の中なかなかうまく行かないのはしょうがないけどね」
そう言って苦笑いを浮かべる明華。よく見れば明石や吉田の姿も見える。
「大丈夫ですよ。なんとかなりましたから」
「大丈夫だ?寝言は寝て言えよ」
軍医のドム・ヘン・タン大尉は呆れたというように誠の飲み干した液体のコップを受け取る。
「急性アルコール中毒。ひどかったんだぜかなり。瞳孔は開いてるし、時々痙攣まで起こすし……お前達どんな飲み方してたんだ?」
全員を見回すドムに明石が静かに頭を下げる。
「それと隣の。あいつはそれほど飲める体質じゃないって言ってなかったか?」
「いやあ、ビールじゃああなるとは思ってなかったから……」
要がうつむいてつぶやくが、すぐにドムに睨まれて黙り込む。
「隣ってもしかしてカウラさんですか?」
飲んだ液体のおかげで次第に意識がはっきりとしていく中で誠がそう切り出した。頭を掻きながらアイシャが頷く。
「あの娘も意地っ張りだからね。誠が飲むのに合わせてビールを飲み続けたら……」
「うるさい……静かにしろ……」
カーテンを開けて這い出してきたカウラ。自分が下着姿であることにまで気が回らないようで、しばらくぼんやりと青ざめた顔を外気にさらしている。
「おい、ベルガー。なんとかならんか」
明石の言葉に少し理性を取り戻したカウラがそのままカーテンの中に引っ込む。
「まあ飲むなとは言わないけどな。大人だろ?お前等も。少しは考えて飲むことを覚えてくれよ。それと今回のことで酒の持込を隊長に止めてもらうことが必要かもしれないな」
「おい!まじか?」
今度は要の顔が青ざめる。
「あの人の持ち込みは多すぎるんだよ。今回だって差し入れってことでウォッカ3ケースって……何考えているんだか……」
ドムの言葉に室内の空気はどんよりとよどんだ。




