季節がめぐる中で 136
「やっぱり付いてくる……二機」
誠は自分の機体の武装を確認する。両腕が法術兵器でふさがっている以上、本体の固有武装に頼るしかなかった。ミサイル系ならば旧式のM5ならどうにか対抗できるが、05式と一つ世代の違うだけのM7に出くわせば目くらまし程度の効果しか期待できない。
「逃げおおせればいいんだ」
自分に言い聞かせる誠だが、明らかに全身の筋肉が硬直していくのを感じている。
そんな脳裏によぎるのは最悪の展開を見せた場面ばかり。練習試合のサヨナラ死球。サードの守備の隣を抜けていく白球、そして肩に違和感を感じた大学四年の春のマウンド。一度ネガティブになった心に鼓動が高鳴る。そして視線はレーダーの中で接近を続ける二機の敵アサルト・モジュールの信号に吸いつけられた。恐怖。心はその言葉で満たされて振り回される。
「やっぱり無理ですよ……僕には……」
アイシャに聞かれているにもかかわらず誠は自然にそうつぶやいていた。
『そうね、そんなに心が弱いようじゃこれから生きていくのも難しいかも知れないわよ』
頭の中で言葉がはじけた。それは通信システムを通して発せられたものではなかった。
「アイシャさん!」
誠は叫んでいた。
『言いすぎだぞ!アイシャ。誠!アタシは信じてるからな!お前の根性見せてみろよ!』
次に響いたのは要の声だった。誠は我に返り、モニターでも捉えられるようになった二機のM5の姿に視線を移す。
『やれるはずだ。お前は私達の希望だからな』
カウラの声に誠は口元をぎゅっと引き締めた。
「格下相手ならこれで十分!」
三人に火をつけられた誠の心。むやみにレールガンを乱射するM5の弾道はすべて誠が無意識に形成していた干渉空間にはじかれる。
「こっちも丸腰じゃないんだ!」
雄たけびと同時に誠は全ミサイルを先頭に立つM5に向けて発射した。
ミサイルは一斉にM5を捉えてまっすぐ突き進んでいく。方向を変えようとしたM5の上半身に降り注いだミサイルの雨に形も残さないほどに砕け去る敵。僚機を失って残りのM5はひるんでいるのが誠の目にもわかった。レーダーに映る敵影は要、カウラ、ランの活躍により次第に数を減らしていく。
『神前!早くしろ。予定時刻より1分以上遅れているぞ!』
通信に割り込んできたのはマリアだった。漆黒の荒涼とした山並みの中に光のサインが見える。
「一気に行きますよ!」
そう言うと誠は法術非破壊砲のバレルを展開させながら一気に山を一つ飛び越え着陸地点を確保しているマリアの隊に合流を果たした。




