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季節がめぐる中で 134

『もうそろそろシュバーキナ少佐からの誘導通信が入るはずだがな』 

 カウラの言葉に要が表情を緩める。

『なんだ、マリアの姐御はこんなところで油売ってたのか』 

『油を売っていたわけでは無いわよ。誠ちゃんの使用する法術兵器の範囲指定ビーコンを設置してもらっていたの』 

 アイシャの言葉に納得したと言うように頷く要。

「でも敵の主力が集まってる地点なんてどうやって割り出したんですか?確かにマリアさん達警備部が特別任務で隊を離れていて、その間にビーコンを設置したと言うのは分かるんですけど、反政府軍のアサルト・モジュールの所有が判明したのは三日前……!」 

 誠は自分で言いながら気がついた。反政府軍がアサルト・モジュールを所有するに至った経緯もその侵攻作戦でどの侵攻ルートが使用されるかも、そして政府軍がどこで反政府勢力を迎え撃つかもすべて分かった上で嵯峨は胡州へ旅立ったと言うこと。

『なに難しい顔をしてるんだ?』 

 要が口元だけ見えるサイボーグ用ヘルメットの下で笑っている。

「西園寺さんはいつごろ気づいたんですか?隊長がこの混乱の発生を知っていたってこと」 

『まあ叔父貴が胡州の殿上会に出るなんて言い出したころからはある程度何かがあるとは思ってたな。まあうちは『近藤事件』については実績があるから。出口の近藤を叩けば当然入り口のカントを叩くってのは当然だろ?これで『近藤事件』は解決するわけだ、アタシ等にとってはな』 

 闇の中に吸い込まれそうになるのを感じながら要の言葉をかみ締めるようにして誠は前方を見つめていた。

『運がいいというべきかそれとも何かの意図があるのか、それは私も分からないが自分の手でけりをつけるのは悪くないな』 

 先頭を行くカウラの言葉に誠も頷いた。

『おい、神前!アタシだとなんだか腑に落ちない顔してカウラだと納得か?ひでえ奴だなオメエは』 

「そんなつもりは無いですよ!西園寺さんの言うことももっともだと思いますよ!」 

『西園寺さんも?やっぱりアタシはついでかよ……!』 

 要が急に表情を変える。そして誠の全周囲モニターに飛翔する要の機体の姿が飛び込んできた。

『敵機か?』 

 闇は瞬時に火に覆われた。パルスエンジンの衝撃波を利用してミサイルを誘爆させる防衛機構であるリアクティブパルスシステムで未確認機から発射された誘導ミサイルが炸裂していた。

『各機!状況を報告』 

 落ち着いたカウラの言葉に火に包まれた誠は正気を取り戻した。

「三号機……異常なし!」 

『二号機オールグリーン!ってレーダーに機影が無いってことは車両か……それとも自爆覚悟の防御陣地か?』 

 ライフルを構えながら先頭に着地して周囲を見回す要。

『まずいぞこれは反政府軍の時間稼ぎだ!西園寺、先頭を頼む!』 

 カウラはそう言うと後詰に回った。

『はなからアタシに任せりゃ良かったんだ。とっとと片付けて酒でも飲もうや』 

 そう言うと要はパルスエンジンの出力を上げていく。誠も遅れまいと機体を軽く浮かせた状態で要機の後ろを疾走した。

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