季節がめぐる中で 133
深夜の闇の中、草木一つ無い荒れた山肌が続く。三機の保安隊第二小隊の05式が並んで進軍していた。追撃の様子は今のところ無い。機動兵器の数を考えれば反政府軍が戦力の温存を図っていることは明確だった。だが、誠には一つの疑問が頭に浮かんだ。
「カウラさん。こんなに通信つかっちゃって大丈夫なんですか?」
突然の質問にカウラは口を開いたまま固まった。要にいたっては笑い始めている。
『それは……』
『私から説明するわ』
ためらうカウラに管制任務を遂行しているアイシャが口を挟んだ。
『誠ちゃんの法術能力に依存したアストラル通信システムを使用しているのよ。つまり誠ちゃんがターミナルになって各通信の制御を行っているわけ。まあそれほど強い力を必要とするわけじゃないから安心してね。当然思念系通話だから敵にそれなりの力のある法術師でもいない限り傍受は不可能よ』
モニターの中で笑うアイシャ。カウラは進撃の指示を出す。
『つまりこの作戦は僕がすべてを決めるんですね』
そう言いながら誠には同じような光景が頭を駆け巡る。
先週の実業団野球のピッチング、大学野球での押し出し、高校時代のサヨナラエラー。
『硬くなるなよ。アタシ等がついているんだから』
要の言葉に誠は現実に引き戻された。目の前の川に沿って比較的整備された道が続いている。
『この道路を破壊する余裕はなかったようだな。とりあえず最有力候補のルートを通る』
カウラはそう言うと機体のパルスエンジンに火を入れる。震えるような一号機の動きに合わせて誠もエンジンの出力を上げていく。
「では僕も!」
そう言うと誠はすべるように道路を南に進攻して行く。
『まだレーダーに反応なしか。つまらねえな』
要の言葉に不機嫌になるアイシャ。
『こちらは何とかめどは立ったが……しかし撃墜せずにお帰り頂くってーのは面倒だな』
ランの言葉に安心する誠。
『まあちび姐御も役に立つんだな』
『でけー口叩くじゃねえか!あとでちゃんと落とし前つけてもらうからな』
笑いながら叫ぶラン。誠はレーダーをチェックする。このレーダーも法術系の技術が導入されていることは誠も聞かされていた。微弱な反応が続いているのは警備部隊が展開していることを意味するが、彼らはアサルト・モジュールと戦える兵器を保有していないようでじっと動かずにいた。
『反政府軍への援軍が先か、アタシ等の到着が先か。こりゃあ見ものだ』
要がいつもの不謹慎な笑みを浮かべていた。




