第五話「ひげき」
私は人間の手足などの外面のつくり
感情などの内面を作った
完成だ
これでやっと人間の幸せな営みを見ることができる
準備は整った
私は男女を家の中に配置した
「さて、どうなるかな」
私は二人の様子を観察した
最初はもどかしい関係だったが
次第に打ち解けて仲良くなっていった
二人は木に実っているリンゴをとり美味しそうにかじりながら会話をしていた
その様を私は微笑ましく見守った
二人は動物たちとも触れ合っていた
小鳥たちは彼らの手の上に乗り音楽を奏でるかのように鳴き
鹿などの動物たちは彼らを取り囲むようにして集まり彼らを喜ばせた
さて、私は他にも何か出来ることがないか試行錯誤した
「そうだ魂を作ろう!」
人間は老いて死ぬ仕組みになっている
魂を作り死後の世界を作れば人間は死んでもその先で幸せな生活を送れることが出来る
私は早速作業に取り掛かった
まずは霊界と呼ばれる居場所を作った
そこは今の地上世界と何ら変わりはない場所だったが
それ以上に自由に動けるよう設定した
死後の世界は人間のご褒美のようなものだ
そして魂を作成した
これを地上世界二人の男女の中に自然と入れる
「おや?」
女性のお腹が大きい
そう、彼らは生殖行為を行い子供を身ごもった
私はその子供にも魂を入れる
女性の一人が呻き声を上げた
出産だ
出産は草原の間で行われた
周りの動物たちや男がそれを見守る
緊張の瞬間
私は息を飲んだ
そして……子供が産まれた
「おめでとう!!」
私は喜びの声を上げた
新しい生命の誕生と同時に
私のシステムの改築に成功したことに喜んだ
その後も私は彼らの様子を見守り続けた
二人の男女の生殖行為は続き
合計20名ほどの子供たちが産まれた
何年か過ぎただろうか
子供たちも成長し大人に近づいていった
動物たちも子供たちと触れ合い
子供たちはそれに喜ぶ
幸せの空間がそこにはあった
そんな中悲劇が起こる
一人の子供が小鳥を食べたのだ
母さんである女はその子供を叱ったが
子供が”美味しいよ”と答えたらそれを試した
そして、驚いたことに”美味しいわね”と喜びの声を上げたのだ
私は大変ショックだった
動物たちは食べ物ではない
食べ物は充分与えたはずだった
次第に彼らは動物たちを殺し食料にしていった
この時私は思った
失敗したと
もっと入念に人間を作り上げれば良かった
しかし、後悔後に立たず
私は悲しみのあまり涙を流した
そして、私は思った
もっとちゃんと人間が幸せになれるシステムを作ろうと
私はそう固く決意し作業に当たるのだった




