表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/366

セクシーコマンド入力 すごいよラヴィーナちゃん

 俺の唱えた蘇生魔法で、踊り子と占い師――双子姉妹が復活した。


 まばゆい魔法の光が収まると、踊り子がその場でくるりとターンをする。


「ありがとねセイぴっぴ……あれ? アンタ誰?」


 講壇に立つ赤毛の少年に踊り子――ラヴィーナはきょとんとした顔になった。


 隣で仏頂面のまま、ルルーナが呟く。


「……姉さん。初対面」


「えー! 怒られたし。あのえっとね、アタシはラヴィーナ! 見ての通りのセクシーダンサーだよ? で、こっちの同じ顔してるのがルルーナ。占いが得意な妹ちゃんなの」


「……ちゃんは余計」


 ルルーナの方がじっとラステを見据える。


「……あいつは?」


 俺はどうやらルルーナにとって“あいつ“らしい。ラステがえへんと胸を張る。


「死にました」


「……そう」


 さらりと流す妹とは対照的に、またしても赤絨毯にorzになる少女が一人。


「セイぴっぴが死んじゃったあああああああ!」


 ラヴィーナが号泣する。一度会っただけなのに、ずいぶんと情の深い少女である。


「アタシいきなり未亡人で可哀想すぎる」


 が、どうやら俺の死を悼む涙ではなかったらしい。


 ルルーナが膝を折ってしゃがむと姉の頭をそっと撫でる。


「……よしよし」


「どうしようルルーナ! お腹にはセイぴっぴとの愛の結晶がいるんだよ?」


 ラヴィーナはそっと自分のおへそのあたりを手で優しくさすった。


「……育てるの?」


「も、もちろん! きっとセイぴっぴみたいなイケメンになるから、アタシがんばるね!」


「……そう」


 このやりとりに講壇の上のラステくんが、大神樹の影に潜む俺をにらみつける。


「キスしたんだ」


 こちらから他に何かした覚えはない。


 泣き崩れそうなラヴィーナにルルーナは手を差し伸べて励ますように告げた。


「……ほら姉さん立って」


「う、うん」


「……女の子一人で赤ちゃん育てるのは大変」


「じゃあ、どうしよう」


 スッとルルーナがラステを指差す。


 踊り子の顔がみるまに晴れた。


「そっか、ねえ! 名前教えてよ?」


 訊かれてラステが前を向く。


「え、えっとボクはラステっていいます。セイクリッドの代わりに……」


 ラヴィーナが瞳をハートマークにして、お腹をさすりながら嬉しそうに笑った。


「この子の新しいパパになってくれるのね!」


「え、ええぇ~」


 人間にドン引く魔王in教会。ここのところ連日開催中。


 ルルーナがそっとラヴィーナを小突いた。


「……姉さん」


「あっ! ごめんねー! けどさ、ラスティがセイぴっぴ死んだとか言うのがいけないんだよー」


 踊り子はケラケラと笑う。どうやらあの涙も演技だったようだ。


 あっけにとられて半分口を開けたまま、ラステが魂の抜けたような声を出す。


「じゃ、じゃあ、お腹の赤ちゃんって……」


「うーん、これからの話って感じ? けど、セイぴっぴっておかた~い仕事じゃん。アタシの魅力でメロメロにしたいんだけどねぇ。神官って誘惑できないのかな?」


 なまめかしい腰つきと、薄衣からこぼれそうな胸を弾ませて妖しく踊るラヴィーナに、ラステの顔が赤くなった。


「あ! やっぱアタシってイケてるし。ラスティ顔赤いよぉ?」


 さらにラヴィーナが激しくダンスをすると、ラステは腰を引っ込めるように前屈みになった。


「なっ! なにこれ……あああああああ!」


 健全な少年の肉体には刺激が強すぎた。


 魅惑の踊りに高ぶってしまったか。


 合掌。魔王に幸アレ。


「……あいつはどこ?」


 苦しげなラステの事など意に介さずルルーナは訊く。


「こ、殺す! ああんもう立ってらんない!」


 立っているのに立っていられないとはこれいかに。


 というか呪いを仕掛けた自業自得だ。


 踊り続けるラヴィーナに視線を奪われたまま、どんどん前屈みになっていくラステが吼えた。


「と、ともかく二人とも死んじゃうなんて情けない! ええと、がんばって使命をまっとうしてください! ほら帰った帰った!」


 雑すぎる。神官失格だな。


 とはいえ、流石に世間知らずな魔王では、人を食ったような双子姉妹相手は厳しかったか。


 こっそり転移魔法を準備すると、ラヴィーナがぴたりと踊りを止めた。


「がんばるかぁ。がんばってるんだけどね」


「…………」


 ラヴィーナとルルーナがお互いの顔を見つめ合うと、そっと右手と左手を合わせる。


 ラステが前屈みになりすぎて講壇の台の下に潜り込みつつ訊いた。


「なにか問題でもあるわけ?」


「ほんとはセイぴっぴに相談したかったんだけど、やっぱりアタシらの問題だし、自力でなんとかしなきゃだよね」


「……あいつに頼ると高くつきそう」


 ルルーナ正解。洞察力はなかなかのものだ。


 ラステがお尻をもぞもぞさせながら続ける。


「だったらぼくになら言えるんじゃない? 今日一日限りの臨時司祭代理だし」


 二人はもう一度お互いに視線を合わせると、同時にうなずいた。息ぴったりなところが実に双子らしい。


 饒舌じょうぜつな姉が言う。


「えっとね、アタシとルルーナの故郷にも魔族がいるんだよね。で、そいつを倒したいの」


 若き神官代理はようやく収まったようで、そっと講壇の上に姿を現した。


「強い魔族に挑んで負け続けてるってこと?」


「ま、そんなとこ。だけど、その魔族が条件だしてきてさ」


 ラヴィーナの声が暗い。普段の明るさもあって余計に影が濃く感じられた。


 少年司祭が促す。


「それで? どんな条件なの?」


「アタシが欲しいんだって。魔族なのにねー。もしアタシが結婚したら、アタシらの故郷のある地域から引っ越すって。そうなると、みんな喜ぶんだけど……ね」


 実にいやらしい。性的な意味ではなく、生け贄を求める方法が魔族らしい。


「それってラヴィーナを犠牲にして、みんなが助かるってこと?」


「そーゆーこと! アタシだっていやだよ。だけど……」


「……姉さん」


 ルルーナがラヴィーナの手をギュッとにぎる。


 ラステは講壇から降りてきた。


「だけど、なに? ちゃんと教えて!」


 その声は双子姉妹だけではなく、俺にも向けられていた。


 ラヴィーナは「あ、あはは。なんでもないよ」と力無く笑う。


 ラステは二人に迫った。


「言って!」


「……魔族は双子が嫌い」


 ルルーナが思い詰めたように呟くと、ラヴィーナが補足した。


「あのね、アタシが欲しい魔族って、アタシを独占したいんだって。同じ顔のルルーナの存在が許せないから、ルルーナを殺すっていうの」

蘇生魔法があるので生き返ることはできるのだが、それをさせない特別な『冒険者の殺し方』があるのかもしれない。

「魔族ってチョー勝手だよね。だから旅をして一緒に戦ってくれる仲間を探してるんだけどさ。勇者さまにはまだ言えてないんだよねぇ」


 まとめると――


 とある地方を支配する魔族がラヴィーナに求婚しつつ、ルルーナに殺害予告。


 ラヴィーナが嫁げばその地域から引っ越すという条件付きだ。


 つまりこれは――


 俺も一枚かませてもらった方が良い案件かもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 元凶の一つが神の心の弱さだったとは悲しいなぁ。 しかし、ラヴィーナは一体何がどうなったのか。ヨハネの言いようだとこの世に既に居ないようだし、セイクリッドが思い出せないのも何故なのか。 と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ