第21話:罪の重さと、私たちの現在地
唇を離し、荒い息を整えながら、私たちは冷たい土の上に並んで座った。
いつの間にか太陽は沈み、木々の隙間から差し込んでいた最後の光も消えていた。暮れなずむ空にはまだ僅かな明るさが残っているものの、公園には夜の気配が静かに満ち始めていた。
高鳴る心臓の音が少しずつ静まっていくなかで、私はじっと自分の手のひらを見つめた。
そして、喉の奥につかえていた本当の言葉を、ようやくしっかりと飲み込んでから、ぽつりと口を開いた。
「ねえ、慧太郎」
「……ん?」
慧太郎は静かに私の方を向き、その瞳で私を捉えた。
「私たちはさ……間違ってたよ」
私のその一言に、慧太郎はわずかに息を呑んだ。
逃げでも言い訳でもなく、それはあの過去をくぐり抜けた人間だけが言える、動かぬ事実だった。
「あの時は、間違いだった。私は子どもだったし、あなたは大人だった。立場を利用して、関係を踏み外して、世間がそれを許さなかったのは当然だわ。社会的な制裁も、あなたが罪を背負ってあの場所へ行ったことも……全部、妥当だったんだよ」
綺麗事にして、私たちの関係を美化したり、正当化したりすることは絶対にしない。
あの愛がどれほど本物で、どれほど狂おしいほどに純粋だったとしても、社会のルールや法という物差しに照らし合わせれば、それはまぎれもなく「罪」だった。私たちが犯した過ちは、消えない事実としてそこにある。
慧太郎はうつむき、自分の膝に置いた大きな手をゆっくりと握りしめた。そして、掠れた声で静かにうなずいた。
「……ああ、そうだな。俺がしたことは言い訳できない罪だ。お前の人生の時間を奪い、周囲を傷つけ、社会の秩序を乱した。罰を受けるのは当然だったし、俺はあの場所でその重さを背負い続けた。……俺たちは、正しくなんかなかったよ」
その声には、もうあの頃のような自分を卑下する怯えも、言い訳めいた保身もなかった。
ただ、自分たちが犯した過ちの重さを、二人の両足でしっかりと受け止める覚悟があった。
罪は罪。
罰は罰。
あの時、私たちは確かに正しくなかった。
世間から見れば、私たちは許されない道を選び、道を踏み外し、相応の代償を払った。その現実が覆ることは一生ない。
「でもさ」
私は顔を上げ、彼のまっすぐな目を覗き込んだ。
罪深くて、間違いだらけで、誰からも祝福されないような関係だったとしても。
「それでも、私はあの時間を後悔しない。間違ってたって、罪だったって、あなたを愛した私の気持ちまで偽物だったなんて、絶対に思わないから」
慧太郎は驚いたように目を見張り、それから、今日一番の深く、穏やかな笑みを浮かべた。
彼はそっと手を伸ばし、私の冷えた指先を自分の大きな手で包み込んだ。
「……当たり前だ。俺だってお前を失うことなんてできなかった。たとえ世界中を敵に回しても、泥にまみれようとも、俺は……お前を愛したことを絶対に間違ってたとは思わない」
正しくなかった。
綺麗でもなかった。
許されることのない罪を背負ったまま、私たちはそれでも、ここで生きている。
気がつけば、空に残っていた僅かな明るさも薄れていた。夜の帳がゆっくりと降り始め、公園の景色が少しずつ暗闇へと溶けていく。
罪と罰の十字架を静かに背負いながら、私たちは立ち上がり、もう一度、自分たちの足で歩き出す。
誰に言い訳をするわけでもなく、誰の許可を求めるわけでもなく――これが、私たちの選んだ終わりの、そして本当の始まりだった。




