28、ダンジョン探索(氷)③
投稿が遅れてすみません。
なんか、投稿予約してたのですが、それが上手くできていなかったようで……
さて、待ちに待ったダンジョンボス戦のお時間です。
敵は、氷のダンジョンの王者、アイスドラゴン。得意技は、敵に『氷結』を付与するニブルヘイム、高火力攻撃アイシクルランス、視界を奪うホワイトミスト、などなど。
(俺もニブルヘイム使いたいなぁ……)
「ほら、行くわよ!」
セリアの言葉で、現実に引き戻された。
ダンジョンボスの部屋には、真っ白なドラゴンが鎮座している。そして、羽根も生えている。
ファイアードラゴン、ウォータードラゴンのように、地面を這い回るということはないだろう。きっと、空を飛んでくれるはずだ。
俺たちが近付くと、彼はバサッ、バサッ、と翼をゆっくりと動かして、宙に舞った。
「おお、飛んだ。飛んでるぞ!」
「何喜んでんのよ。攻撃しにくいじゃない!」
正論はいいんだ、セリア。
これは、ロマンだ。
「なあ、ユリア。飛んでるドラゴンって、ロマンだよな?」
「う〜ん、ユリアはマロンケーキが飛んで来たら、うれしいかなぁ」
「こりゃあ、今日からユリアのケーキは、スポンジだけに決定だな。他のものは、認めん」
「えぇ、そんなぁ〜。……あっ。じゃあ、ご主人様がマロンケーキにして、ユリアと半分こにしよ?」
いや、それじゃ意味がないんだけどなぁ。
スポンジだけか、それをさらにフィーと半分こにすればいいか。きっと、フィーはショートケーキだろう。
「あのアイスドラゴン、倒せたら考えてやるよ」
「分かった。よしっ、お姉ちゃん、あいつを落として!」
「いや、無理よ。ねえ、もちろん作戦あるのよね?」
皆の視線が俺に集まる。
そんな当然考えているんでしょう、みたいな目で見られてもほとほと困ってしまう。
「そういえば、何も考えてなかったな。だって、空飛ぶなんて、聞いてないし」
俺の魔物についての情報源のほとんどは、いつぞやの王城の図書館で、あの時はドラゴンと戦うなんて思ってなかったしな。
冒険者ギルドでも情報は得られるけど、ユリアがダンジョン行く、って駄々こねてたしな……。
「そうだ!」
「何か思いついた?」
「全部、ユリアが悪い。うん、全部キミのせいだよ、ユリア君」
「ええー、ユリアなの!?」
ユリアのせいにしたとしても、ボス部屋に入ってしまった以上、あれを倒さねばならない。
フィーの結界は――敵の火力が分からない以上、危険だ。
「セリア、ジャンプしたら、『魔力拳』はあれに届きそうか?」
「ええ、行けるわ」
「さすが馬鹿力――いや、コ゚ホンコ゚ホン。さすがセリアお姉様。それで、ユリアはドラゴンの注意がセリアに向いているうちに、一発入れてやれ!」
「りょーかい!」
セリアが膝を曲げた。
すぐに、バネのように、上に跳ね上がった。
彼女の右手から、『魔力拳』が放たれる。
アイスドラゴンの左翼に当たり、ドン、という音がなる。
ドラゴンはバランスを崩して、左に傾く。だが、さすがダンジョンボス。そのまま、ジャンプから落下中で回避が取れないセリアに、その巨体ごと突っ込んでいく。
当たれば、セリアは吹き飛ばされるだろう。だが――
「ユリアもいるよ!」
ユリアがドラゴンに向かって、一直線に跳躍する。
しかし、そんなこと分かっている、とでも言いたいのだろうか、アイスアローの雨がユリアに降り注ぐ。
「フィー!」
「うん、分かってる」
あんな氷の矢程度、フィーの結界で防げないわけがない。
『反射』のおまけ付きだ!
ユリアを包み込む結界に当たった矢が全て、ドラゴンに牙をむく。
砕けたアイスアローが、氷煙となり、隠れ蓑を作り上げた。その一瞬は、ユリアにとって十分過ぎる時間だ。
ユリアの一撃が、アイスドラゴンのボディーに入る。
ここからでも、腹が凹むのが見えた。
(うわぁ、痛そうだ)
こいつがボス部屋の引きこもりで良かった。直前に飯なんて食われてた日には、目も当たられない惨状を見ることになる。
ギィーーー!
アイスドラゴンが、錐揉みのように落下しながら、悶絶の声を上げた。
なんか、可哀想な気もするが、俺は早く温かい飯と温かい布団にありつきたいのだ。そのためなら、犠牲は厭わない。
「セリア、ユリア、決めてやれ!」
「そこで、見てなさい!」
「仰せのままに!」
二人が、アイスドラゴンの真上に飛び跳ねた。
『限界突破』
『限界突破』
スキルを唱えた二人が、落下しながら右腕を引く。
地面ギリギリで、右拳を突き出した。
ドコ゚ンッ!
何かが砕けるような音。確か、そんな音だった気がする。
それより俺たちは、氷混じりの爆風で、悠長に音を聞いているどころでは無かったのだ。MPをケチらずに、フィーに結界を張ってもらえば良かった……。
「ご主人様ぁ! 見て見て!」
ユリアが慌てた様子で――いや、いつも通り走り込んできた。
もう、駆け込み乗車をさせたら、彼女の右に出るものはいないだろう。まあ、良い子の皆は、駆け込み乗車なんてしないでくれ。前に背負ったリュックが腹にもろに直撃して、結構痛い。
「どうしたんだ?」
「これだよ、これ。なんか、スゴいんだって!」
ユリアは、絡み酒なんだろうな。
珍しく、セリアが止めに入らないところを見ると、本当にスゴいのだろう。
元々かもしれないが、ユリアの語彙力が壊滅的になっている。「なんか、スゴい」とか、汎用性の塊のような言葉を使われても、全く状況が伝わってこない。
「ほら」
ユリアが自分のステータスを見せてきた。
「なんだよ、レベルが上っ――マジか……」
彼女のステータスを見たとき、息を吸うのも忘れるほど、そういう表現が正しいほど驚いた。
LV26 ユリア(猫又族) 17歳
JOB:無属性拳闘士
HP(体力):80/190
MP(魔力):30/150
PAT(物理攻撃):375(+225)
PDE(物理防御):30
MAT(魔法攻撃):20
MDE(魔法防御):15
AGI(俊敏):217(+122)
スキル
『魔力拳』『俊敏力上昇』『限界突破』
「確かに、スゴいな」
「でしょ」
「うん。セリア、ステータス見てみて!」
アイスドラゴンからのドロップ品を、せっせと回収しているセリアに声をかけた。
えっ! という声を上げたあと、慌ててドロップ品を両腕で抱えて、走ってきた。
「ちょっと、あれ、どういうことよ!」
「皆が強くなった……とか?」
「そんなわけないでしょ! 絶対、あんたのアレが原因よ。ねえ?」
セリアが二人を交互に見る。
フィーもユリアも、うんうん、と繰り返し頷いている。
どうやら、うちの女性陣の意見は決したようだ。
ユリアが神妙な顔つきをしながら、一歩前に出た。
「犯人はそう――あなたです、ご主人様。あなたしかいないんですよ」
「やっぱり、俺かぁ。まあ、そうかなぁ、とは思ってたんだけどさ」
「自白しましたね。判決――ユリアが褒めてあげます。さすが、ご主人様。よっ、天下無双の冒険者っ。……もー、とりあえず最強!」
探偵も、警察も、裁判官も一人でこなしたユリアが、お祭り騒ぎしている。
悪い気はしない。調合師という職業で誇らしくもある。
「ありがとな、ユリア。じゃあ、飯食いに行くぞぉー!」
「おーっ!」
思わず頬が緩んだ顔を隠すように、俺はユリアの手を取って走り出した。
その後を慌ててフィーとセリアが追いかけてくる。
「もう、ちょっと待ってよ〜」
「二人とも、待ちなさいよ!」
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