扉と外の世界
そんなある日のこと。
『今日は、騒がしいね』
いつもよりも、多くの人の声が聞こえた。
日に日に減っていく声に不安を覚えていた少女に、希望の光が灯る。
どこか心細さを感じていた少女にとって、それは嬉しいことだった。
しかし、扉は、少女の嬉しそうな顔に対して、嬉しそうにしてくれているような気はしない。
あまりうれしくないのかもしれないと少女は思った。
『君は、あんまり嬉しくないの?』
壊れた扉は、それに答えるようにゆっくりと揺れて。
少女は、そんな扉の様子が、不思議でありながら、よかったと思った。
扉は、多くの人を必要としていない。
きっと、自分を必要としてくれているのだと思えたから。
『大丈夫だよ、私は、上には行けないから』
少女は、自分の足を眺めながらつぶやいた。
足枷のはまった自分の足。
寝ている間に、成長に合わせ、いつの間にかデザインを変え、交換されているように見える足枷は、皮肉なことにサイズは少女にちょうどだった。
扉は壊れていたけれど、外に出られるわけもない。
少女は、そっと足枷に触れた。
『いつか、君と外にいけたらいいのに』
呟いた言葉は、かなわないことはわかっていた。
それでも、聞こえてくるにぎやかな声に、差し込む光に期待してしまう少女は。
壊れた扉にすがって生きるしかなかった。




