これは・・・王道、ですなあ
だいぶ更新が遅れてしまってすみません!!!
現在時刻、午前九時。
僕はニッグさんが眠りについた後、食べ物が売っている場所に行き、ご飯を調達して食べ、少し散歩をした後、拠点(もと居た場所)に戻って起きたニッグさんに現在地と日本の位置、この世界の大まかな仕組みについて話していたところだ。
それにしても、海外というのは新鮮だ。どこかこう、非日常・・・異世界を味わえるというかなんというか。日本とは違うビルの並びや建築素材を見ているだけで、心が弾む。共感できるよな?
あ、そういえば、その散歩の時に僕は花と少し話したんだった。僕からはニッグさんのことや魔術、魔獣についてなど、知っていることをすべて伝えておいた。花からは、赤松が元気にしているという報告を受けた。いやー、良かった良かった。そっこー日本に戻ったらお見舞い行ったるわ!
「―――なるほど。人間のみが支配しているというのは、面白いな。私たちの世界では、大きく分けただけでも三種族以上の知性体で成り立っているというのに。」
ニッグさんは、僕がとってきたご飯を口に運びながら、感心したように唸った。
なんと、彼女の世界には、魔獣のような獣系や、ニッグさんのような人間系の他に、さらに異なる生物が跋扈しているらしい。まさに異世界という感じで、多くの人種が混ざり合っているのか。想像するだけで、こちらの常識が揺らぐねえ。
「まあ、そんなことよりも重要なのは、こっちの世界の生物は魔力もスキルも扱えないことだよ。どうやって生きているのだ?」
「僕の相棒・・・花の考察なんですけど。この世界の人間は、今の僕たちにはない『肉体』で霊体と魂がコーティングされていて、その肉体に魔力を流す機能が備わっているとかなんとか。要は、魔力操作はできないけど、魔力で生きることはできるみたいですよ。」
「ああ、そうなのか。」
ニッグさんは、いかにも「すべて理解した」と言わんばかりの凛々しい表情で頷いた。
だが、そのわずかに泳いだ視線と、少しだけズレた相槌で、僕はすべてを察した。
これは完全に一ミリもわかってないって顔だ。なのに、お姉さんぶって・・・。ヤレヤレ、お可愛い人だことと・・・ガハハ!
僕は内心にやにやしつつも、彼女のプライドを優先して、あえてツッコミは入れないでおいた。
「ま、なにはともあれ。そのこの世界は魔力放出とかしてないから魔力濃度が薄いし、その分、魔力に頼らず文明を発達させたから、クリサンセマムみたいに先進的なわけだ。」
再び、ニッグさんはそう言いながら深く頷いた。そのせいで、僕の頭にハテナが浮かんでしまった・・・
「はあ、そもそも魔力濃度が薄いとは何なんですか?それにクリサンセマムって何ですか?」
「なんか、一気に二つ質問されると困るんだけど?ワンターン制にしてくれない?」
「は、はあ。説明回のテンプレかよ。」
つーか、この人、やっぱり自分のペースに持ち込むのが上手いというか、なんというか。解せ――――ん!
「とりあえず、クリサンセマムから話すわ。簡単に言うと、私たちの世界で一番平和かつ、世界の頭脳が集まっていて、ギルド本部がある、言葉のごとく神の領域。あ、先に言っておくけど、ギルドはダンジョンっていう世界のどこかで出現する魔物が棲む迷宮のことで、その攻略をする世界機関がギルドっていうの。分かった?」
なんか、ニッグさんの試すような目気に入らないんだけど・・・まあ、それもそれで興奮するが・・・
「まあ、わかんないよね。だって、この世界にダンジョンないんだし、ダンジョンっていう名前も知らないんだし。」
というか、そうか。ニッグさんとは同じ言語で話しているけど、ニッグさんの言っている言葉の意味を僕たちが知らないように、ニッグさんもニッグさん自身が言った言葉の意味が僕に分かるのかも分からないのか。まったく、やれやれだぜ。
「いやー、ニッグさん。それが知ってるんですよねー」
「まあ、嘘はよしなよ、少年。」
「いや、ガチで嘘じゃないっす。」
「へ?」
彼女は目を丸くしてアホ顔でこっちを見る。顔おもろ。
「実はギルドだったらそれこそ七世紀ぐらい・・・千四百年前からありますし、ダンジョンの言葉の語源も、中世で千年くらい前からありますよ?」
「へー、そうなのか・・・」
ニッグさんはどこか顔をしかめながらも、興味深いと言わんばかりに口元を緩ませる。
「偶然って面白いですね。」
僕はパーッと、明るくそう言った。
「そうだねー」
ニッグさんは、そういいながら天井を向いた。
そのときの、彼女の桃色の双眸に僕は一瞬魅入ったが、すぐに正気に戻って質問を続けた。ちなみに、これは恋心じゃないからな。勘違いするなよな!
「それで、魔力濃度が薄いって何ですか?いや、魔力の濃さっていうのはわかるんですけど、あまり影響とかが分からなくて。」
「あーっと、うーんと・・・なんか魔力濃度が薄すぎると魔力量の回復とか動きづらくなったりとかして、魔力濃度が濃すぎると魔力量が急に回復して気持ち悪くなったり中毒になったりするわね。」
「なるほど・・・」
つまるところこの世界にいると動きづらくなるのか。僕たちはもともとこの環境に慣れてるからいいけど、ニッグさんを始め、魔獣たちは慣れてない分、本来の力が出せずに苦労していたんだな。
「・・・ん?てことは、実際の力を出せてないってことですか?」
「んー、まあそうね。極級魔術で身を守ろうとしたときに結構魔力食っちゃってね。間違えたーって感じで、大変だったわね。」
ハハハと、その時を思い出したかのように吹き出した。なんだこの人は急に笑い出して。ほんと・・・どういう属性もちなんだ?強がり・・・元気っこ・・・うーん、何なんだ?とにかく可愛いか?
あ、ちなみにこれも恋ではない!
「―――まあ、それで私たちの世界にいた時の半分ぐらい・・・いや、もしかすると、それ以下かもねえ・・・」
「えー。」
というか、半分以下の力で、慣れない土地で、魔力ぶっぱなしてるチートスキル持ちの僕たちと渡り合えていたというのか、あの魔獣たちは・・・さては強すぎないか?
「私も魔力回復瓶がなかったら極級魔術なんて使えたもんじゃないって感じ。」
ニッグさんはさらっと、なんてこともないと言わんばかりの表情を見せた。そう、「さらっと」。
「魔力回復瓶?!」
なんじゃその物は???
「あー、えっとねえ。まず離れて・・・」
「あ、すみません。」
あまりに中二チックな単語に僕は驚きを隠せなくて、つい詰め寄ってしまった。僕としたことが、ヤレヤレ。
「んん。気を取り直して、魔力回復瓶は名前の通り、魔力量を回復するダンジョンアイテムで、ダンジョンアイテムはダンジョンから出る宝物みたいなもので・・・分かるよね?」
急に説明放棄して草。まあ、分かるから良いんだけど。
「まあ、はい、わかりました。ほかにダンジョンアイテムでどんなものがあるんですか?」
「回復瓶とか、剣とか杖とか服とかかな?」
「マジですか・・・」
僕は妄想に妄想を膨らませた結果、 脳と顔が溶けてしまった。なんてったって、異世界にあこがれ、夢見ていた中二病オタクが、はるか昔から先人たちが伝承してきた、「夢物語」が実現可能ときた・・・激熱やろてー・・・といいますか―――
「というか・・・なんで、早口なんですか?」
しかも、さっきから足もじもじさせてるし、トイレか?
「少年。・・・便所はどこにあるのだ?」
案の定トイレだった。
「そこです。」
さっき、僕も使ったからなんなく、場所は伝えられたが、
「・・・使い方は分かりますよね?」
まあ、一応初めての便所だと思うからね。確認という意を込めて聞いてみた。
「赤ちゃんじゃないんだから、それぐらいわかるわよ。」
そう文句を言いながらトイレの中に入っていく、彼女。大丈夫か?
しかし、案じた通り、中に入った彼女からすぐに困惑の声が上がる。
「ちょっと、少年!嘘はついていないだろうね?綺麗すぎじゃない・・・?それに、水は何なの?もしかしてここに住んでいた人の・・・」
「な、る、ほ、ど・・・」
どうやら彼女の世界には水洗式はないらしい。ぼっとん式なのだろうか。可哀想に・
「それ、ただの水なんで、気にせず使ってください。下水システムが機能してないと思うので、そのままにしていいですよ。」
と投げやりな指示を出すと、彼女はしぶしぶ扉を閉めた。
そして、僕はベッドに座り、考えを巡らせる。
「うーん、これからどうしよう。」
日本にどうやって帰ろうかな。来たルートをつたって戻ったとしても高速バスでランプツィヒからフランクフルト空港まで行けるか分からないぞ。そもそも、飛行機が通っているかすらあやふやだ。さすがにあるだろうけど。まあ、とりあえず花に帰りのルート、調べてもらうとするか。
『う、う、う、うんこ。調子どう?』
僕はソウルコネクトを使用して花に連絡を取る。
『唐突なうんこやめてね。それでどうしたんだい?』
『ちょっと、お願いがあるんだけどさ。僕たちが日本に帰れるルート調べてくれない?』
『あーね、確かにそうか。』
『やろて?』
『伝えていなかったか。』
『へ?』
「伝えてなかった」って・・・どういうこと?も、もしかして・・・
『それってつまりもう調べてるってこと?』
『え、そうだけど?』
『おいおい、ベストオブ優秀じゃねえか。』
『まあね。』
花は照れくさそうに返事をしてきた。そして、僕は気づく。
『って、しっくた。つい褒めてしまった。僕って人が好過ぎるからすぐに褒めてしまう・・・』
『その一言で君という人間が成立していることをひしひしと感じるよ。』
うーわ。また遠回しに馬鹿にしてきたよ。これもうこいつの特殊なスキルかなんかだろ。スキル「コールド・ラフィング」つって。ガハハ!・・・笑い事じゃねえぞ。
『う、うお。含蓄がある。』
『はいはい。』
てことで、いつものごとく流されますと。なんやこいつ。
『じゃあ、今伝えた方がいいかな?今なら空いてるけど。』
『うん、頼む。なるべく手短に。』
『いや。無理だ。結構長くなる。』
『じゃあ、後でな。ニッグさんが来たら、「なーにスキル使ってんだぁ!」って面倒くさそうだし。』 『了解・・・あー、待って。』
通話を切ろうとした瞬間、花がそう言って僕を引き留めた。
『どしたん?』
『君とさっき話した時、栄花と帰ってたんだけど。話し終わった後でさ。なんとあることがあったのだけど、聞くかい?』
もったいぶるような花の口調。これは間違いなく、ろくでもない、そして極めて面白い話の匂いがする。
『え、全然聞く。気になるんだけど。』
『なんと・・・駅前で佐久間扶郎君と会ったんですよ。』
『・・・ほほぉーん?』
僕は思わずニヤリと口角を上げてしまう。栄花と扶郎が出会ったと・・・興味深いですなあ。
『それで、彼、何していたと思う?』
『おつかい、とかですかねえ。やはり、男子の家庭的な一面を見ることで、大概の女子は虜ですよ。まあ、その大概に栄花が入っているかは甚だぎもんですが、ねえ?』
『そんなものじゃなかったよ。』
『ほほーう。では、どのような姿を思い人に見せたのですか?』
『それがね・・・高篠といたんだよ。』
『それは・・・リアリー?』
『本当だ。一応話しかけないでおいたけど・・・なにやら楽しそうだったよ。』
あの扶郎が高篠さんと?若干予想外すぎる組み合わせの提示に、僕の脳内で良からぬ妄想の歯車がカチリと音を立てて回り始める。「もしかして、あの毒野郎を倒した日にあいつらと会って別れた後、ナニかあったのかな」とか。
『栄花はどんな反応でしたか?』
『栄花は・・・よだれを垂らしてたよ』
『まあ、彼女は初心で可愛げのあるものに目がありませんからねえ』
その光景を目の当たりにした栄花の限界オタクのような顔が容易に想像できて、たまらなく笑える。
『何していたのか、聞けばよかったかい?』
『いや、それはナンセンスだ。妄想に支障が出る。』
事実は時に想像の邪魔になる。ここはあえて余白を残し、勝手にストーリーを補完して楽しむのが嗜みというものだ。
『栄花って誓ったのに高篠に乗り換えた扶郎よりも、君の方が気持ち悪いということがよーくわかったよ。』
『それはぁ、何よりだ。』
花からの至極真っ当なドン引き宣言も、今の僕には心地よいBGMでしかない。
『そんなところかな。』
『では、またあとで。』
『ハッ、了解・・・』
通話を切った僕は、ふーっと満足げなため息を漏らして、ベッドに仰向けに倒れ込む。
「これは、うっひょーってやつですか・・・まったく、扶郎も高篠さんも、お盛ん、ですなあ。ムフフフ。」
天井を見上げながら一人で気味の悪い笑いを漏らし、ひとしきり妄想を堪能したところで、僕は思考を現実の帰還ルートへと戻した。
「でも、まあ。ひとまずは、か。」
「なにが?」
「うわっ!!」
気づけば、ニッグさんが真隣にいた。金色の髪を揺らし、桃色の瞳をギラつかせて僕を覗き込んでいる。こ、興奮・・・よりも怖いが勝つんだが。
「どこから・・・」
「『ひとまずは、か』ってところからかな。意外とそういう独り言を言うところあるんだね。」
ちょくちょくそんな片鱗はあったけどと、呟く。僕には羞恥心なんてないのか。いや、ある。まあ、でも、これは「あっぶね」ですまされるからいいけど、その前のセリフ聞かれてたら、ニッグさんからもっと、キモがられてたぞ?
「ところで、何を、していたんだい?」
ギロンと、少し頬を赤らめている僕を見つめる。僕はちょっぴり怖くて、
「い、い、い、いや!別にソウルコネクトで花とどうやって日本に戻るか作戦会議をしてたなんて、ことは・・・!」
と、嘘をつかず、言ってしまった。まあ、ぶっちゃけ、ニッグさんの前では正直に言ってしまった方がいいからな。まあ、少しダサいが、ピンチもわざとユーモアに変えちまうのが天才なんだぜ!
「ならー、私も混ぜてくれないかい?」
「は、はい。ちょうど今ニッグさんが帰ってきたら・・・みたいなノリだったので。」
「なーんだ。意外といい奴じゃないか、少年たち。」
「ははーそうですねー。」
「意外と」は余計じゃないか?と内心で毒づきつつ、僕は再び花へと意識を繋いだ。
だいぶ投稿不定期になりそうです・・・




