↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/125

第百五便 今日が何日とか訊かないでっ!

 心臓がドクンと大きく動いた。

 血液が体中を急激にめぐり始める。

 視界がぼんやりと、そして段々鮮明になる。


 なぜそっとしておいてくれなかった?


 なんてセリフが浮かんだ。

 でも、おかしい。

 お腹が空いてない?


 満腹、ってわけじゃないけど、さっきまでの、空腹で動けない、って感じじゃない。


「フッフ」


 お兄ちゃんの声。そして笑顔。


「おにい……ちゃん?」

「大丈夫、かな?」

「ええと」

「タンクの表示はもちろん、匂いや色も確認したし、試しに少量火をつけて試してもみた。問題ないとは思ったけど、一応ね」

「え?」

 オレの思考がようやくクリアになる。

「もしかして、ガソリン見つけたの?」

「ガソリン、ていうか、タンクトレーラーをね」

「タンクトレーラー?」

「うん」

 お兄ちゃんが森の向こうを指さす。

「ここから10分くらい歩いたところに、タンクトレーラーのトレーラー部分だけがあったから、ガソリンを拝借した」

「も、もしかして、タンクトレーラーって!?」

「うん。元の世界でぶつかりそうになってジャックナイフしてた奴。ドラレコのロックデータにあったのと同じだった」

「あ……」

 厨二病たちに南風のフェアリーの動画を見せる時、お兄ちゃんはデータをまるまるコピーしてたから、それを見たのかな?

「じゃ、じゃあ?」

「うん。レギュラーだけでざっと1万2千リットル。ハイオクも合わせれば2万リットル近く入ってるみたい」


 2万リットル!

 走り方次第じゃ、30万㎞くらい走れる!!

 地球なら7周半!

 光なら1秒!!

 ……は一瞬だから除外。


 とにかく、この島くらいなら、〝いつまでもどこまでも〟ってレベルで走れる!


「……でも、どうしてわかったの?」

「パラグライダーで飛んだ時、森の中にトレーラーが一瞬見えた」

「でも、オレ(ドローン)は気づかなかったけど」

「自走できるドローンと風に頼るパラグライダーの違いだろうね。後は高度の問題かな?」


 そうか。

 オレ(ドローン)は高度数十メートル、お兄ちゃんは数百メートル上空を飛んで行ったし。


「どうせならトレーラーのあるところまでつければいいのに」

「この森の中は、根っこやら倒木やらがひどくて、いくら四駆でも進めない。だから携行缶に20リットル入れて持ってきた」

「危険じゃない?」

「うーん。幸い、大型の動物とか爬虫類とかには出会わなかったけど。一応、事前にドローンで偵察はしたよ。フッフが眠ってて、OBD2と接続されてないスマホを使って」

「何だ。言ってくれればいいのに」

「確証があったわけじゃないからね。フッフをぬか喜びさせたくなかったから、黙ってた」


 お兄ちゃんらしいね。


「ただ、トラックの本体もドライバーも見えなかった。この世界の別の場所に飛ばされてた、とかじゃなきゃいいけど」


 人の心配してる暇あるの?


「一応、拝借した量はマジックで書いておいた。問題なのは、この世界での今日が何日なのかわからない、ってことだね」


 相変わらずまじめだよね。

 

「もし戻れたら、拝借した分は時価で支払おう。極端に値上がりしてないといいけど」


 ……そうか。


 お兄ちゃんはまだ、〝戻れた時〟のことを考えてるんだ。

 グリシーヌやヴィオレット、ついでに金髪も、お兄ちゃんの気持ちをこの世界に引き留めておけないんだ。


 そしてもちろん、使いきれないほどのガソリンがある状態でのオレ自身でさえも。

注1 「おれたちはばかだっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。