表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

男爵令嬢の呟き




 お父様とわたくしの元婚約者であった第一王子殿下のお話合いが終わって一週間も経たないうちに、その婚約はなかったことになりました。

 正確に言うなら、わたくしの立場は変わりませんでした。第一(・・)王子殿下の婚約者のままです。

 ならどういう事か、といいますと、何と元婚約者であった第一王子殿下が儚くなってしまわれたのです。故に、第二王子殿下が繰り上がって第一王子となり、わたくしが改めて彼のお方の婚約者となりました。

 元第一王子殿下……レムニス様の事ですか? 亡くなった理由……いえ、実はわたくし、詳しい事はあまり存じておりません。お父様に聞いても国王陛下に聞いても詳しくは教えてくださいませんの。ただ、お城の女官の噂話で、親しくしていらっしゃった女性が思い詰めて凶行に及んだとか、その女性に思いを寄せる殿方が、とか……ええ、色々なお話が出回っているようです。直接聞いてみてもやっぱり教えてはいただけないのですけれども。え、いえ、わたくしもはっきりと言えるのは、通達された事しか……ええ、病だそうです。なんでも王家や高位の貴族家には度々ある事なのだとか。レムニス様の側近候補の方達や母君たる王妃殿下、そのご実家の方々も同じ病でお倒れになったそうですので、流行病か何かなのでしょうか?

 お父様もお兄様達も、お母さま達もわたくしはまだ知らなくても良いことであると仰いました。この間拝謁させて頂きました陛下も、少しだけ疲れたような御顔で同じように仰いました。

 ……実のところ、ほんの少しだけですけれどもわたくし、ほっとしておりましたの。第一王子たるお方が儚くなられたのにそのような事を思うなど、本来あってはならいない事なのですけれども。

 五年前、七歳の私と十歳のレムニス様との婚約が成った時、あのお方は怒ったような御顔をなされておりましたので私、何か御無礼があったのではないかととても心細くなったのを覚えています。

 それから、家では十分にお妃さまとしての教育ができないとのことで王宮に上がり厳しいお勉強が始まりました。ええ、辛くないと言えば嘘になりますけれども、陛下や王妃殿下、何よりもレムニス様に喜んで頂きたいがために、寂しいのも我慢してずっと頑張ってきました。

 けれどもいくら頑張ってもレムニス様はいつも険しいお顔でわたくしを見るのです。まだ、まだ至らないのだ、と、そう責められているようにも思えていました。むしろ勉強を頑張れば頑張るほど、その表情は厳しくなっていたように思えます。

 今更ながら考えれば、おそらくあのお方はわたくし自身が気に入らなかったのでしょう。ええ、通常ならわたくしのような男爵家の庶子など王宮に上がる事は決してありませんもの。本来ならレムニス様のはとことなられる、公爵家の令嬢が婚約者となるはずだったのに、わたくしのような貧相な小娘を宛がわれたのですから、彼のお方がそうお思いになられるのも当たり前の事なのかと思います。

 ですから……ええ、わたくし、レムニス様に嫁ぐことが、とても怖かったのです。

 今の婚約者様ですか? ええ、とてもお優しいお方で、魔法の才能ではレムニス様には及ばないそうですけれども、とても優秀なお方なのだそうです。

 わたくしと同い年だそうですので、婚姻が成るのは早くても成人となる三年後ですけれども。ええ、仲睦まじくできるのならば……いえ、多くは望みません。ただ、そう、お国の為によいようになるのならば……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ