クォ=ヨ=ムイ、年齢不明、職業?邪神
「ユウカさん、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
またドアがノックされて、今度はシェルミの声が聞こえてきた。もちろん石脇佑香は「どうぞ」と応えた。だがドアが開かれた時に見えたのは、シェルミの姿だけではなかった。
「六号室の方がちょうど帰ってこられたところですので、差し出がましいとは思ったのですが、せっかくですしお連れしました」
そう言ってシェルミが紹介したのは、一見すると普通の人間に見えた。ただ、ひどく眠そうな目をした気怠い雰囲気の、妙齢の女性だった。ユウカが受けた印象としては30前後くらいという感じか。スーツに身を包んではいるが、どこか夜の雰囲気も漂わせている気もする。
「ちょうどよかった。紹介するわ。彼女は六号室の住人で、クォ=ヨ=ムイ。何て言ったらいいのか難しいけど、まあ一言で言ったら<邪神>かな」
アーシェスがあまりにも普通にさらっと何の気負いもてらいもなくそう言ったので、ユウカも「あ、初めまして…」と言いかけたのだが、遅れて彼女の意識に届いた強烈な違和感に、声が詰まってしまうのを感じずにはいられなかった。
『は…?、え?、え…と、邪神…?』
「どうも…」
言葉にならず明らかに混乱してる様子のユウカに対して、クォ=ヨ=ムイは慣れているのか特に気にする様子もなく頭を下げてそう言った。
目を白黒させているユウカに、アーシェスが静かに語り掛けた。
「信じられないかも知れないけど、彼女は本当に邪神なの。この<書庫>は宇宙のありとあらゆることが記録されてて、それには神とか悪魔とか邪神とか言われる存在も記録されてるのよ。もっとも、彼女たち邪神は死なないから、情報だけが記録されてるんだけどね」
もう意味が分からなかった。邪神というものについては、彼女もすごく興味があったから良く知っている。クトゥルー神話などはラブクラフト全集を読破したこともあるくらい好きだ。特にニャルラトホテプについては、言い方はおかしいかも知れないが初恋の相手と言ってもいいくらいだった。
しかし今、自分の目の前にいる女性は…、いや、言われてみれば確かに綺麗だ。その気怠そうな雰囲気も含めて、何とも言えない色香を漂わせて相手を魅了しようとしている気もする。それは人間には容易なことではない気も…?。
「言ってもすぐには信じられないでしょうね…。やってみるのが一番よ…」
そう言ってクォ=ヨ=ムイが右手を軽く振ると、部屋の様子が一変した。それまで家財道具がほとんどなかったそこに、ベッドとカーテンと照明とカーペットが現れたのであった。




