冷凍食品とスナック菓子の差し入れ。約2300円相当
「ユウカ、お邪魔してもいいかな~?」
不意にまたドアがノックされ、声が掛けられた。それはキリオの声だった。
「は、はい、どうぞ」
石脇佑香が応じると、ドアが開いてキリオとヌラッカが入ってきた。ヌラッカはやっぱり服を身に着けていなかった。透明だし彼女は本来は不定形生命体だそうだから実際には裸とは言えないのかもしれないが、しかしその形は細部まで緻密に人間の体を再現していて、透明であることを除けば完全に人間の裸身そのものだったのである。
これにはメジェレナも困ったような顔をして目を背けてしまっていた。当然、ユウカもまともに見ることはできなかった。
そんな彼女の前に、キリオが折り畳みのテーブルを広げて置いた。
「やっぱりまだ何もないんだね。これももうボクたちは使わないからあげるよ」
そして広げられたテーブルの上に、ヌラッカが買い物袋を二つ置く。一つは、冷凍食品らしきものが入った袋で、もう一つにはスナック菓子らしきものが入っていた。
「コンビニで買ってきた…。これ、あげる。だからキリオの誘惑に負けないで…」
どうやら、ユウカがシェルミのランジェリーショップに入っている間にコンビニまで行って買ってきたらしい。しかし、これをあげるから誘惑に負けないでとは、先手を打ってきたということか。
「ははは…」
と、ユウカとメジェレナが乾いた笑いを浮かべる。メジェレナはキリオの好みに合わなかったらしくアプローチを受けたことはなかったが、キリオの性癖についてはそれなりに知っていた。とは言え、目の前にすると戸惑いを隠せないようだ。アーシェスは「はあ…」と頭を抱えて溜息を吐くだけだった。
「ヒドイなあ、ヌラッカ。ボクは君一筋だよ。ユウカへのアプローチはあくまで挨拶さ」
まるでイタリア辺りの伊達男のようなその振る舞いに戸惑いつつも、ユウカはこの二人は本当に仲がいいんだなっていうのを感じていた。だからこうやってお互いに堂々としてられるんじゃないかなと思った。それでつい、笑顔を浮かべてしまった。柔らかくて穏やかな笑みだった。
その笑みを見た途端、キリオが「ヒュゥ~ッ」と唇を鳴らした。
「君、やっぱり可愛いね。今度、この街を案内してあげるよ。いいお店知ってるんだ。一緒に買い物もしよう。ここでの生活に必要なものを揃えなきゃいけないだろ?」
どうしてこうスラスラとそういうセリフが出てくるのか。
ユウカは顔を真っ赤にして俯くしかできないのだった。




