日本山系の美味しい水、2リットルボトル、88円(日本円換算)
最後に、見た目はともかく一番の常識人で丁寧なシェルミを紹介してもらえたおかげで、石脇佑香は自分が落ち着くのを感じていた。何とかやっていけそうかなと思った。
そんな彼女を、アーシェスも穏やかな笑顔で見守ってくれていた。
「じゃあ取り敢えず一度部屋に戻ろうか」
そう言われて自分の部屋に戻り、マニにもらったサンダルとシェルミにもらった下着を置き、一息ついた。そこに、コンコンとドアがノックされる音が聞こえてきた。
「は、はい!」
慌てて応えると、
「七号室のメジェレナだけど、いいかな?」
と声を掛けられた。思わずアーシェスを見ると、にこやかに笑いながら頷いてくれた。応じていいということだと思った。
「どうぞ、開いてます…!」
少し声がうわずってしまったが、何とかそう言葉に出来た。するとドアが開けられて、ピンクの髪を逆立てた、褐色の肌と爬虫類を思わせる金色の瞳を持つメジェレナの姿が見えた。その手には、ペットボトルと紙コップが握られていた。それを示すように掲げつつ、メジェレナが言った。
「まだ、飲むものとかもないでしょ?。だからこれ、どうかなと思って」
そう言いつつアーシェスに視線を向けて、
「この子もミネラルウォーターでいいんだよね?。ジュース類は味の好みとかもあるから水が無難かなと思ったんだけど」
そんなメジェレナの言葉に、アーシェスが応える。
「そうね。ユウカは生物的にはあなたと大きな違いがないからその選択は正解だと思う」
アーシェスがそう言うと、メジェレナは確かにホッとしたような顔をした。自分の選択に不安を感じてたのがユウカにも伝わった。それを見て、『この人は本当はすごく引っ込み思案な人なんだな。私と同じなんだ』と改めて感じた。
三人で床に座り、まだテーブルもないから床に直置きになったが、見ればそのペットボトルには<日本山系の美味しい水>と書かれていた。しかも間違いなく日本語で。それにユウカは驚いた。
「え…?、これ、日本語?。どうして…?」
驚き過ぎてそんな感じにしか言葉にならなかった。その彼女に対して、アーシェスとメジェレナは顔を合わせて微笑んだ。
「ここは、宇宙のあらゆる情報が集まる<書庫>。そこでも、あなたの地球の、しかも日本と呼ばれる地域の商品は人気なんだよ。高品質で安全でってことでね」
まさかこんなところにまで日本の商品が浸透しているとは想像すらしていなかったユウカは、唖然とするしかできないでいた。でもそのすぐ後で、見慣れた日本語を見ることができてホッとして、また涙が溢れてきてしまったのだった。




