シェルミ555647、機械生命体、ガードマン
トイレから出て四号室の前に戻った石脇佑香に、アーシェスはまたにこやかに話しかけた。
「四号室のシェルミは、種族としてはこのアパートで一番変わってるけど、付き合う上では一番楽かもね。精神的に安定してるし。いろんな意味で」
『付き合う上では一番楽』。そう言われたのは幸いだが、しかし、『いろんな意味で』とは…?。が、その理由はすぐに分かった。
「シェルミ、いる?、アーシェスよ」
そう言ってノックすると、すぐにドアが開いた。そして姿を現したのは…。
『…え?、ロボット…、アンドロイド…?』
と石脇佑香が思った通りだった。その姿はどこからどう見ても人工物で出来た機械にしか見えなかったのだ。見る角度によって色が変わるマジョーラカラーと言われる色なのだと思うが、ぱっと見の印象は赤味かかった紫のようにも見える、プラスチックとも金属ともつかない、しかし少なくとも『肉』と呼べるような感じでは決してない無機質な肌を持ち、かつ女性らしいプロポーションを持ったその体は服を着ていなかったが、それでいて透明なヌラッカよりは艶めかしい感じではなかった。これなら服を着ていなくてもそれほど違和感はない気はする。
顔も、女性らしい印象のある造形ではあるが、水色っぽい光を放つ目と思しきそれには瞳がなく、鼻を思わせるでっぱりはあるものの鼻の穴らしきものも口もなかった。なんとなくマスクをかぶっているようにも見える。
「こんにちは、アーシェス。新しい住人の方ですか?」
いかにもアンドロイド然とした外見にそぐわず声は柔らかい感じで、しかも口調も穏やかで丁寧だった。『付き合う上では一番楽』と言われた意味は分かった気がした。とは言え、口らしきものが見当たらないので慣れるまでは話す時に違和感を感じてしまいそうではある。
また、硬そうな印象のある皮膚と言うか表面だったが、関節部分にはいかにもな機構が見当たらないのに滑らかに動いているので、実は人間の体と同じように柔らかい素材なのだというのも不思議な感じだった。
「初めまして。私はシェルミ555647。見ての通りの機械生命体です。ガードマンをしています」
自らを指し示すように胸に手を当て静かに丁寧に語る彼女の姿に、石脇佑香はホッとしていた。だから、
「は、初めまして。私は石脇佑香です。ユウカって呼んでください。中学生です」
とこれまでで最もまともな自己紹介が出来た。その様子を、アーシェスは満足そうな顔で眺めていた。どうやら何とかやっていけそうだと感じていたのだった。




