マニュハルクァク・ングラニャーァハガ、建築作業員。両性具有種(出産経験あり)
「次の二号室のマニは、男の人に見えるかもしれないけど、地球人と違って両性具有種だから性別とか関係ないからね」
「…え…?」
ここまででも結構大概だった気がするが、まだ属性が異なるのがいるのかと、石脇佑香はもうお腹いっぱいと正直思っていた。留守だった六号室の住人もまだだし、あと三部屋。持ち堪えられるのだろうか…。
そんな不安を抱えつつ、アーシェスがドアをノックする様子を息を呑みながら見ていた。
「マニ、アーシェスよ。いる~?」
その声に応えて「は~い」と部屋の中から声がした。だがその声はどう聞いても女性のものにしか聞こえなかった。と思うと、ドアが開けられて出て来たのは、まさに<肉の壁>とでも言うべき、ものすごい筋肉量の大きな肉体をピッチリTシャツとジャージで包んだゴリマッチョな男性だった。髭こそは生えてなかったが顔もいかつく頭も角刈りで、間違いなく男性に見えた。なのに、
「アーシェス久しぶり。聞こえてたよ。その子が八号室に入る子なのね」
と、声と口調は確かに女性だった。あまりに違和感に脳の処理が追い付かず、石脇佑香は呆然としてしまう。
「うん、予想通りの反応ね。あなたたちのように性別が分かれてる種の人達は大抵そういう顔するわ」
「…はあ…」
どう応えていいのか分からずに、そんな声が漏れてしまった。性別が分かれてるからとか分かれてないからとかいう問題でもないような気がするが、それは言葉にはならなかった。
「彼女は、子供を生んだことがあるから便宜上<彼女>って呼ぶけど、名前はマニュハルクァク・ングラニャーァハガ。発声しにくいと思うからマニでいいわ」
そうアーシェスが紹介するのに合わせて、マニは「うふん」とウインクした。って、子供!?。
「マニは運よく同種族と巡り合えて恋に落ちて、子供を生んだのよ。今はその子も大人になってそれぞれの人生を送ってるわ」
もはや訳が分からなかった。アニメとかではそういう無茶苦茶な話も出てくるが、それが実際に自分の前に提示されると人間はこういう反応をしてしまうのだと自分でも思った。それでも辛うじて気を取り直して、
「石脇佑香です。ユウカって呼んでください。よろしくお願いします…」
と、何とか挨拶をした。ここまでで多少慣れたのか、思ったより声が出た。
「こちらこそよろしくね、ユウカちゃん。じゃあ、私からのプレゼント」
と渡されたのは、サンダルだった。
「子供のために買ったんだけど、サイズを間違えてね、結局使わずじまいだったの。だからあなたに使ってもらえたら助かるわ」
こうして、ちょい外出用にサンダルを手に入れたのだった。




