↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア建国記 ー女提督は静かに切れる 婚約破棄から始まる独立戦記ー  作者: 尾道 汀
第1章 婚約破棄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/93

第1話 セルリア海

晴れた日には淡い青に染まり、古くから交易と航海の中心となってきた内海。


セルリア海。


東にそびえる大オリオン・南オリオン両山脈の間を抜けてきた風が、広い海上を西へ、北へと吹き渡る。この海では、一年を通して風が絶えることは少ない。


蝶が羽を広げたようなその内海の右の翼を、最終訓練を終えたエウリシア王国海軍第二練習艦隊が風上へ向けて進んでいた。


第二練習艦隊。艦隊の名を冠してはいるが、その実態は一番艦一隻のみで編成された新設部隊である。新たな航海術や艦艇運用を実海域で検証するために創設された、王国初の試みだった。


艦首に立つ女性の赤い髪が、陽光を受けて風に踊る。彼女は頬を撫でる潮風にそっと目を細めた。


少女の面影をわずかに残しながらも、その表情には一人の指揮官としての凛とした強さが宿っている。琥珀色の瞳は、穏やかなセルリア海の先を真っ直ぐに見据えていた。


彼女の名はイレーネ。


航海術を代々受け継ぐ海の名門、タラシア家の長女。若き海軍提督であり、第二練習艦隊司令官でもある。


次の瞬間、イレーネは鋭く命じた。


「スパンカー降ろせ!」


「司令官、風上で――」


「復唱!」


「スパンカー降ろします!」


十五、六歳ほどの若い練習生たちが、ベテランの水兵たちの檄を受けながら、慌ただしく帆を操作する。


「降ろせーっ!」


縦帆が消えた瞬間、艦首がわずかに風へ流れた。


その刹那――


海を渡る風が変わった。


主帆を大きく膨らませる強い追い風が艦を包んだ。


夏のこの時期、午後を少し回ったころになると、東のオリオン両山脈からセルリア海へ強い南東の風が吹き下ろす。船乗りたちはそれを、オリオン降ろしと呼んでいた。


イレーネは微笑み、乗組員たちを見回した。


「諸君、喜べ。予定より早く帰港できるぞ」

お読みいただきありがとうございます。

気に入っていただけましたら、ブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。