俺、奮闘します。
完結設定になっていました!申し訳ありません!
これからもまだまだ続きます。今後とも、よろしくお願いします。
-9話 俺、奮闘します。-
-ガールヴン火山・山道入り口-
そう書かれた、所々欠けているボロボロの看板を過ぎて約5分。
山道に入ってから初めてのファントムと対峙していた。
「ミル、バフ頼む!」
「わかったっ」
ファントムの名前はバーンコドラ。
赤く硬い皮膚を持ったそいつの大きさは地面から人間のへその高さほどだ。尻尾は長く、背中から伸びた骨板は自らの強さを象徴している。二足歩行で、前足は常に胸の位置に曲げられている。
攻撃手段は3つ。
1つ目は噛みつき。顎の力は、岩をも砕くと言われるほど強く、腕を噛まれ一本になって帰ってきたファントムブレイカーも少なくない。
2つ目は尻尾振り回し。長い尻尾を振り回すことにより周りを受け付けず、当たれば骨の一本や二本を折ることなど、容易い事だろう。
最後、3つ目はブレス。そう、街近郊のファントムは魔法を使うことは無いが、火山など、別区域に入るとファントムの種類が変わり、コドラのように魔法を使うファントムが出現するようになる。魔法は特殊攻撃の為、防御力が上がっていたとしても意味がないのだ。対処法は装備を対魔法にする、もしくは味方のバフで耐性を上げる、この2つに絞られる。
俺達は対魔法の装備などもっていない。つまりミルのバフ頼りなのだ。
「ミル、このバフって対魔法も入ってるか?」
「入ってるはずっ」
「おし。狩るぞ!」
コドラめがけ走りだす。
コドラは口から火を見せ、ブレスの準備に入っている。
行動パターンを読めてしまえば楽だ。
火を吐き出す刹那、右に大きく3メートルほど跳び、範囲攻撃のブレスをかわす。
「せいっ!」
絶賛炎吐き出し中のコドラの左側をとった俺は地面を蹴り横腹を下から切り上げるのと同時にコドラの上を跳び、右側へと移行する。
「キュルルゥ!」
左横腹に線を付けられたコドラはブレスを止め、こちらに視線を向け、噛みつこうと飛びかかる。
俺はその頭を右回し蹴りで吹き飛ばす。
コドラは近くにあった木へ派手に激しくぶつかる。
立ち上がる前にケリをつけるべく、腰の後ろに付けていたタガーを抜き取り、その場で一回転回り、遠心力で思い切りタガーをコドラへと飛ばす。
狙い違わず、コドラの頭を貫く。
シュワン。
青い霧となって霧散した。
「お疲れ様、シュウ」
「ありがと」
ハンカチで汗を拭ってくれるミル。背伸びしてるのが可愛い。
「それにしてもやっぱりその杖、いいな」
「うんっ」
ただでさえ能力500%アップのバフをもらっているのにも関わらず、杖の効果でバフが2倍、さらにオークの魂霊球で攻撃力2倍になるのだ。単純計算で2000%攻撃力が上がっている事になる。強すぎんだろ。ニヤニヤしちゃうわ。
「シュウ、きもちわるいよ?」
「あ、すまん」
本当にニヤニヤしちゃってたみたい。うふふ。
「シュウきもい・・・」
「それにしてもコドラ、結構金持ってんだな」
コドラが落としたゴールドは3500。オークの2倍強ってとこだ。
「ほんとならこんなに楽じゃないの」
「運良いんだな、俺らは」
普通ならコドラの皮膚が硬すぎて何度か切りつけないと刃が通らないのだ。
しかし、前述したように2000%攻撃力が上がっているために刃が通ったのだ。それに、武器がチェーンソーだしな。斬るっていうか抉るっていうか。
「シュウ、おなかすいた」
ガールヴン火山・中腹に向け歩いていた。
ミルが裾をくいくいしながら上目遣いで何かたべよ?と提案してくる。
「あぁ。いいけど」
「けど?」
上目遣いをするなあざとい腹立たしい可愛い抱き締めたい。
「ああいや、食べよっか」
こんな禿げた地帯にどっから流れてんのか不明だが、透き通った川が流れている。
そこには川魚も生息している。
ここの川魚は身がプリプリで、脂がのってて美味しいと評判だった気がする。
「どおやって釣るの?」
『お』じゃなくて『う』な。「ど『う』やって」な。
「釣り竿を作るんだよ」
「つれるの?」
「わからん」
試してみるまでどうなるかなんて知ったこっちゃない。
「この木でいいな」
釣り竿にする木を決めたところだ。チェーンソーで木を切る。
「そのチェーンソー、木も切れるんだ」
お前、チェーンソーって何か知ってるか。本来こっちが本業だよ。
† † † † †
「出来たぞー」
木を削ってようやく完成させた二本の釣り竿。作るのに20分かかった。
紐はドロップアイテムの麻の糸。
「おーっ、これでつれるの?」
「そこに幼虫いるだろ。それを吊せばいけんじゃね?」
ファントムブレイカーからギャル男にジョブチェンジした俺。
「幼虫・・・。シュウ、頭悪そうに聞こえる」
開始2秒でリストラ。
「と、とりあえずよ、やってみようぜ」
「うん」
幼虫を吊した釣り竿を川へ入れる。
ミルも同様に幼虫を吊した釣り竿を川に入れる。
・・・。
・・・。
そりゃ、会話なんて無いわな。
・・・。
・・・。
ザーッと、風で木が揺れる音が鼓膜を伝う。
・・・。
のどかだな・・・。
少しして。
「お、何かかかったぞ?」
「私もかかった」
二人して魚ヒットの予感。
「おりゃっ」
「ん・・・よい、しょっ」
同時に釣り上げる。
「おぉ~!」
釣れたのは大きさ約40センチほどの、名前は知らんけど美味しそうな魚だった。
ミルも右に同じだ。
「大きいっ」
「これならお腹一杯になれるな」
「うんっ」
元気よく返事をするミル。
「シュウっ、焼こっ」
自分で釣れたのが嬉しかったのだろう。こころがぴょんぴょんしている。
「ああ、そうだな」
魚は下ごしらえをし、落ち葉などに火をつけ、その周りに木で刺した魚を立てる。
少しして、いい匂いを漂わせ始めた川魚。
「美味しそう」
「そうだな」
「そろそろかなっ」
「あぁ、いいんじゃないか」
じっくりと焼かれた魚は、脂を滴らせ食欲をかきたてる。
「「いただきます」」
二人揃って魚へとかぶりつく。
「・・・」
「・・・」
「うまいなこれ!」
「うんっ、おいしいっ」
口の中に広がったのは、魚の程よい塩分。そして、脂の甘み。それがプリプリの身とマッチし、最高のハーモニーを奏でる。
んまいんまいと貪っていたらいつの間にか食べ終わっていた。これ、美味すぎんだろマジで。
ミルは口が小さいため食べ終わってないが、満足そうに微笑みながら小骨を取り除き、器用に食べている。二人でピクニックにでも来ている気分だった。
そう、ピクニックにでも来ている気分のままでいたかった。
俺はどうしてこう、色々と巻き込まれなきゃならんのだ。
「グルルルル・・・」
魚を食べていた俺たちの20メートルほど先に、ヤツはいた。
「あ、あれ、よ・・・」
「シュウ・・・どうするの?」
現れたのは、危険指定ファントム、ガルドグリズリーだった。
次回、いや、勝てないから。




