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俺、飼います。

とは言ったものの、流石に次の町まで歩くのは肉体的にも精神的にも辛い。

次移住する町の名前は、水産業が盛んな水の都、ノーアだ。

そこまで行くのにはあの遠くに見える山を越え、更にそこから流れる川に沿って数日。

到底歩いて行くには無理のある道のりだ。

そのため、荷馬を購入し、日持ちする食材を貯め込んで万全の状態で出発したい。


というわけで。


「うお、いっぱいいるな」

「・・・馬糞臭い」

「あるじさま、この子とっても可愛いです」

荷馬を飼いにやってきた。

種類は多種多様で、馬力、持久、歳、能力などによって値段が大きく左右されている。

俺が欲しいのは圧倒的に持久力なので、たくさん歩ける馬を選びたい。


ここの店員は接客タイプでは無いらしい、カウンター奥で腕を組み座っている。

値段や馬の特徴、能力などは全て区切られたゲージの横に書かれている為、何の問題も無い。

強いて言うならば、本当に細かな所までは分からない程度か。

「どれがいいと思う?」

適当に冷やかしながらミルと雪月に候補を問うてみる。

「このこ」

「あのこ」

「どの子だよ」

こんな所でコントしてる暇は無いっての。

「ほら、この子、なんか強そう」

ミルが頭を撫でている馬の所へと行ってどんなものかを見極める。

「ふーん」

顔立ちとしては確かに凜々しく、どこか力を感じる面持ちをしている。

がしかし、見かけ倒しとまでは言わないが、それほど能力が高いわけでも無く、性能としてはごく普通と言ったところか。

値段もそれに見合った価格だ。ここの店主はそういったお金の稼ぎ方をしない良心的な人なのかもな。

「他のにしよっか」

流石に普通の馬で耐えれるような道では無い。この馬はお預けだな。


「あるじさま、こっちです」

次いで雪月の馬。

雪月もミル同様馬の頭をなでなでしている。

「どれどれ・・・」

まずは顔。

ほお、この子はまつげが長くて可愛らしい顔つきだ。

能力は・・・うん、歳が若めで少し馬力があるくらいか。

悪くは無いんだが、何かピンと来ないって言うか、もっと良い感じの子が居るはずだ。

この馬も違うな。

「違う子にしよう」

やはり何かに、今回の場合持久力に特出していないと決定打に欠ける。


「このこ可愛い」

「うーん、まあまあありだな」

「このお馬さんは力強そうです」

「おー・・・。確かにステータスは良いけど歳がな・・・」

「こっちのこは?」

「まだ子馬じゃないか。却下」


いろいろ見て回ったが、やはり何かピンとくる奴がいない。

何頭かは自分の中の合格ラインに達していた奴も居たが、まだ妥協はしたくない。

よく見ていない馬もまだまだいる。焦るほどではない。

時間だって限られている訳じゃ無いんだし、ゆっくり選ばせて貰いますかね・・・。

「何を探しているんだ」

ゆっくり宣言をした矢先、カウンター奥に座っていたムキムキの店主が、どこか痺れを切らした様に片目を開け語りかけてきた。

「うおっ」

店主の事はオブジェクトくらいにしか思っていなかった為、その声に少し驚いた。

「山を越えるから、出来るだけ持久のある、根性のある馬が欲しいんだ」

「そうか。ついてこい」

簡潔にどういうものを所望しているかを伝えると、俺を先導する様に歩き始める。

どうやらそれに該当するめぼしい馬の所へ案内してくれるらしい。

それならばありがたくついて行こう。



†    †    †    †



「こいつはどうだ」

「・・・おお、いいな」

連れてこられたのは、見たところ周りの馬より一回り大きい、強そうな馬の前だった。

「ステータスは高水準・・・。歳も若めで持久力はもちろん馬力もある、か。うん、いいな。コイツにしよう」

「こいつは見た目通り力強いのはもちろん、一体でかなりの大きさの荷車を引くことが出来る」

「それは頼もしいな」

やはり体の大きさも関係してくるのだろうか。

なんにせよ、一目惚れだ。コイツはしっかりと面倒を見るか。

「さんきゅーなおっさん。それじゃ貰っていくよ」

「おう。毎度」




そこそこ良い値段がしたが、今後のための投資だと思えば安いものだ。

おっさんに馬の分の代金を渡したところで荷車の取り付けも行ってくれた。

メイフィスト北口までの見送りと馬の引き方をレクチャーしてくれた所で店に戻っていった。

おっさんに手を振り、見えなくなるまで振り続けた。

「さて、と」

これでノーアまでの足は確保は出来たわけだが、後は飯だな。

馬を見ると、ミルと雪月の二人は既に心を開いたらしい。

「ふふ、くすぐったい」

雪月は馬と戯れ、

「・・・広い・・・」

ミルと言えば荷車の中でくうくうと寝息を立てている。

「お前ららしいな」

いつも通りマイペースな二人に安心する。

「ミル、雪月、俺ちょっと食材調達してくるから馬のことは任せたぞ」

「ん」

「はい」

一応手綱を町の入り口にある杭にくくりつけておく。

「そんじゃ行ってくるわ」


まあ、だいぶ長い道のりになるだろうから、パンだったり乾燥肉だったりになるのかな。


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