俺、育ちます。
「シュウ、今日、行くの?」
親父が帰っていったあと、部屋から出てきたミルにそう問われる。
「あぁ、行くよ」
俺は即答する。
「俺はまだまだ成長できるみたいだからな」
過去は振り返っても仕方ないと切り捨てていたが、やっぱり少しくらい振り返って、あの頃はと笑える方がもっとずっと生きやすいと。そう思った。
「そう」
ミルは包み込むように、そっと言葉を置くように相槌を打つ。
「雪月も準備できてるか?」
「はい。万端です」
よし。
ふうっと少し息を漏らし、そして。
「待たせた。んじゃ改めて、行くか!」
今度こそ本当の『冒険』が始まる。
† † † †
「何だか懐かしいな・・・」
「うん」
俺たちはガールヴン火山・中腹に来ていた。
相変わらず禿げた地面とどこから流れているのか、綺麗な川がある。定番コドラは勿論、以前来た時は戦わなかった、デスワーム、カラーデビル、サンドゴートなどがいる。
「そんじゃどーすっかな・・・」
周りを見渡す。テラリプトンに比べれば屁でもないファントムばかりだが、どれから倒そうか。
「あるじさま。私、少し行ってきます」
一歩前に出てそう宣言する。
「行ってくるって、何処に」
「数秒で終わります、少しそこで見守っていてください」
そう残し、歩みを進める。
「・・・?」
「・・・?」
ミルと顔を見合わせ、(何するんだ?)(・・・しらない)とアイコンタクトを交わす。
「・・・すう」
呼吸を整えてるのか、何やら胸に手を当て、深呼吸している。
そして。
「・・・百式開放。【プロパーガーティオ】」
静かに何かを唱えた。
「なん・・・だ」
まだ何も起きてないが・・・。
「ダガー」
その言葉と同時、
「うぉあっ!?」
突風と共に雪月を円で囲むように光を発するダガーが出現した。
その姿はまるで神の使いの如く神々しい、煌びやかなものだった。
「凄いな・・・それ」
ただ唖然としていた。ようやく出てきた言葉がこうなってしまうのも、目の前の光景があまりにも規格外すぎる為だ。
「これが百式開放です。私なんかよりもあるじさまの方がもっと凄いです」
こちらに振り返り、恐縮とばかりに首をふりふりする雪月。
「まじかよ」
「はい。でもこれからですよ」
俺の方を向いていた体を再び戻し、集中する。
「短剣演舞【ブレイドダンス】」
言うと雪月の周りに浮いていた短剣が回り始め、ランダムな方向へと解き放たれた。
途轍もない速さで飛び回る剣は辺りの敵を攻撃し始める。
剣一つ一つが意思を持っているかのように自由に空を舞い、敵を狩る。
それはまさに、踊っているようだった。
「デタラメだな・・・」
文字通り光の速さで切り付けられ、ファントムはなすすべなく霧散していった。
「・・・」
おかしすぎる。こんなのが一体に向いたら・・・なんて考えるだけで恐怖だ。
「あるじさま、終わりました」
そう言いひしっ抱きつき、とゆっくり腰に手をまわし、体を押し付ける。
「お、おう」
何だかお父さんになった気分だ。
「・・・」
まあ、ミルがめちゃ睨むけど。
それよりも。
「なあミル、見えるか」
辺りは金が沸いたかのように金貨が散らばっている。
ほんと、デタラメな力だな。
「うん。きれい」
少し感性が違ったが、良しとしよう。
「でも、これを使うと、少しの間この武器は使えなくなります」
俺から離れた雪月が説明に入る。
「武器って、チェーンソー自体がか?」
「いえ、今使ったプロパーガーティオがです」
「それって何か問題なのか・・・」
さっきの武器、というか技が他に何種類もあるんだと考えたら全く問題ない気がするが。
「百式開放ってのは、あとどれくらい種類があるもんなんだ?」
「無限です」
「・・・は?」
「無限です」
「・・・あ、そう」
あ~うん、強いね。そんなの。
「無限と言っても、想像できるもの全て、なので、考えが乏しい方は向かないかもです」
「なるほどな」
じゃあ俺向かないのかも知れないぞ・・・。
「さっきのでもまだあるじさまの力の半分にも満たない程度です」
だとしたら俺のチェーンソーはどれだけのバケモノになるんだよ。
「次はあるじさまの番」
後ろに回り込み、俺を押していく雪月。
「ふわぁ~・・・」
眠たそうに口元に手を置くミル。
「寝る前にゴールド拾ってけよ」
「うん・・・」
ほんとに眠そうだな。
「頭の中であるじさまの持ってみたい武器を想像してみてください」
「わかったけど、俺たちもゴールド拾うぞ、雪月」
「はい」
俺の持ってみたい武器か・・・。楽に敵を倒したいな。するとでかい何かになるのか・・・?
ゴールドを拾いながら使い方を考えていた。
それよりも範囲の広いもの・・・?あー、じゃあこんなのいいかもな・・・。
でも、いや、あ、大丈夫か?うん、行けそうだな。
「決まりましたか?」
粗方拾い終わって、またファントムがリスポーンし始めてきた。
「ああ。多分大丈夫だと思う」
周りにいるファントムを横目に見ながら用途を確かめる。
「うん、いける」
「それじゃあ、やってみてください」
「分かった・・・」
俺はそれを頭に思い浮かべた。




