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俺、失います。

ようやく戦います。まだ主人公弱いです。頭も弱いです。

2話 俺、失います。


そして今に至る訳なのだが。


「お前もそろそろ仕事せんとこっから追い出すぞ!」

「あー、おー」

「そうかそうか、一回シバかんと分からないか、そうかそうか、あぁ?」

「・・・じゃあ仕事するわ」

「よし」

「で、俺にできる仕事は?」

「・・・っ」

「・・・ねてくるわ」

「ま、待て、じゃあ俺の鍛治を手伝え、な?」

「素人が叩けばどうなるでしょうか。はい。時間と素材のムダです」

「・・・」

「まぁ、おやすみ」

「ちょ、まっ、そ、そもそも仕事と言うのは自分で探すものだろうが!」

「2年間探し続けてきた結果がこれだよ」

「あ・・・っ」

「おやすみ」


八方塞がりとはこの事だな。親死んだら完全に終わりだな。四面楚歌四面楚歌。


言ってしまえばただ働きたくなくてその言い訳としてこの厄介な能力を紋所のように掲げているだけなんだけどな。でも、この能力が使い物にならないことくらい親父だって知っている。だから言い返せないのだ。


そしてまぁ、こんな感じの日々が続く訳で。モブもいい所だよ、ほんと。

どこぞの主人公なら既にめっちゃ強ぇーファントムと戦ってハーレムでも築いてるんだろうよ。俺みたいなモブだと戦うことすら出来ねぇんだぞ。

ルックスも平凡、運動神経だって能力で上がっていなければそこらの幼児に劣るまである。

すぐ息切れするし。

そんな良いとこなしの俺でも優しく包むように守ってくれる母親の姿はいつもとても助かった。

落ち込んでベソかいて泥まみれになって帰ってきて、一人でふてくされている時に不器用ながらも愛情をくれた親父はいつも頼もしかった。

なんにも特筆する点の無い人生。でも、暖かい家庭で育った俺。周りから心ない扱いを受けていた俺でも家族と居れば、母親の作ったご飯があれば、楽しかったんだ。

物語の登場人物にすらなれない架空の村人Aでも、平凡ながらもちゃんとした一つ一つ紡がれた物語はあるんだ。


・・・でも、モブもモブじゃ居られなくなることってのもあるもので。


仕事がやいのと言われた約2ヶ月後のこと。

「・・・は?」

外泊して帰ってきた夕方。親父に言われたことを理解できずにいた。

「・・・急病で、かかると8時間も持たないと言われたんだ。なぁ、お前は何でそんな日に限って家にいないんだよ!なぁ!かぁさんは!かぁさんはなぁ!最期までお前を呼んでたんだよ!・・・俺あ、どーすりゃいいんだよぉ・・・」

母親が死んだ、そう親父は言った。

「・・・」

反応なんてもんは出来ない。ただこみあげてくる感情に流されるほか無いのだ。

「親父・・・俺は・・・」

ここで気の利いたことでも言えれば良かったのだが、生憎俺の脳内の引き出しの中には何もなかった。何も持ち合わせていなかった。

でも、それでよかったのだろう。無理に「大丈夫だよ、俺がいる」なんていっても親父は憤怒しただろう。それに俺にそれをいう資格もないのだ。無責任なことを言うくらいなら何もいわなくていい。そう思う。

目に映えるのは泣き崩れる父と白い布を顔に掛けた母。


物語にならない俺の人生が、止まっていたはずの歯車が、ここを起点に動き始めた。



それから数日が過ぎ、親父もそろそろ立ち直った頃。

「やっぱりお前、働け」

前振りもなく低い声音で威圧的に語りかける。

「でも仕事が」

「ファントムブレイカーになれ」

言わせないとばかりに口を挟まれる。

「ば、無理言うなよ。パーティー組んでくれる奴なんていねぇよ」

「なら、一人でやれ」

「なんで突然」

言うと親父は頭を沸騰させ、

「うるせぇ働けやぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「・・・な」

「金がねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

「なっ・・・!」

とんでもないこと口走りやがったこのじじぃ!

「早よ働け!んで出てけ!、ほら、ほら、出てけ!」

「ちょ、まっ・・・」

「お前も働け!」

ドスン!

思いきり腹を蹴られ、家の外に投げ出される。

例えるなら「うぁーん、いい子にするから中入れてぇ~!」の構図だ。

「え、は、はぁ!?」

おいおいまじかよ。

何回かドアをノックしても反応なし。そしてうずくまること約30分。ようやく中から声が聞こえた。と、思ったら

「お前、稼げるようになるまで帰ってくんなよ!てか、もう帰ってこなくてもいいからなぁ!」・・・。


俺、家失いました。ついでに、仕事をやる羽目になりました。



---------------------



家を追い出されて3日目。

「はぁ、腹減ったなぁ・・・」

これまで一口もなにも食べてないのだ。しかし、ただ途方に暮れてた訳じゃない。

「・・・よし、これでオッケー」

攻撃力も防御力もない俺が剣を振るっても、盾をかざしても、ファントムなんて狩れる筈がない。それならば、両方を合わせれば良いだけの話なのだ。

家の裏にある廃材を使い、手甲と脛当てを作ったのだ。

ただの手甲と脛当てでは何の効果も出さない。手甲は鉄を付け、その鉄を殴り倒し、出来る限りでギザギザにする。運良くヤスリも落ちていた為攻撃力は抜群だと思う。思うな。うん。脛当ても同様。茨装備とでも呼んでおこうか。

そして服。ニートの俺には甲冑なんて代物を着て立ち回ることなんてできる筈がない。だからただの服。

「いくか」

人知れず呟き、歩みを進める。


ファントムは街郊外に生息していて、街に近ければ近いほど弱く、遠ければ遠いほど強い。分かりやすくてありがたい。

「っと、早速か」

郊外にでてすぐ、ファントムと遭遇する。

名前はプッチー。ここらへんでは王道のファントム。人を襲うが、攻撃力は非常に低く、比較的安全ではある。毛で覆われており、見た目は毛玉。ほっそーい尻尾の先に、耳掻きのふわっふわしてるあの部分みたいなのがついてる。てなづければペットにも出来ると聞いたが、お金になってもらおう。

「ていっ」

ドシュっ。

軽く蹴ってやる。するといとも簡単に死んでしまった。流石茨装備。攻撃力は補えてる。しかし5ゴールド。しけてんなぁ。

ファントムは息絶えると蒸発するかのようにして霧散していく。色は基本的には青。アイテムをドロップしたら赤。レアドロだと黒。と分けられている。いずれもゴールドは落とすから出来れば赤か黒がいい。


狩り始めて早5時間。ゴールドは1250までになった。途中でドロップアイテムがあったり、レアファントムと出会い死にそうになったりしたが、何とか持ちこたえた。

「もうそろそろ帰るか」

武器を作ったとはいえ粗品。すぐにガタはきてしまった。

まぁ、ドロップアイテムでダガーをゲットしたし、明日からこれで戦おう。

最初のうちは殴っては逃げ、殴っては逃げを繰り返していたが、やはり慣れるものである。すぐに戦い方を変え、試行錯誤した末に流れ作業のような感じにできるまでにはなった。

帰るとはいったものの、今寝泊まりしているところは小さな公園で、木の下に簡易的な寝床を作り過ごしていた。そのため体は痛い。

粗方ファントムを狩り尽くし、街に向け歩き始めたその時。

「キュエェー!」

コウモリ型のファントムが迫ってきた。しかし、あんなのは見たことがない。ファントム辞典にも載っていない筈だ。では、あれは・・・?

考える間にも迫ってきている。

???が現れた!  どうする?

・戦う

・逃げる▽


しかし回り込まれた! どうする?


やべぇ、どうしよう。見た目弱そうではあるが、犬みたいなのがダンジョンの主って言うカオスな世界だし、コウモリだからといって侮れない。


仕方ない。こうなればヤケだ。 

・戦う▽

・逃げる


「てりゃあ!」

ドロップしたダガーを力いっぱい振り回し、コウモリにヒットさせた。

「キュエェー・・・」

シュワン。

黒い霧になってコウモリは消えていった。

な、なんだ、弱かったのか・・・。怯えて損したぞ。しかし、あんなファントムみたことがなかった。飛ぶファントムは少なくないが、小さいファントムで飛ぶような奴は今までいなかった。それに、ここら近郊では飛ぶファントムなんぞでない筈なのだ。だが、いずれにせよ、勝てたのならそれでいい。

「ってすげぇな!」

余韻に浸って戦場を見やると、倒したコウモリの下にはおびただしい量の1000ゴールド金貨が落ちていた。

枚数にして35枚。つまり35000ゴールドだ。これで少しは生計が立てられるな。

1日に満足な食事をするとすれば1200ゴールドは必要だ。今なら腹一杯食べられるじゃないかっ!

・・・あぁ、そういえば『黒い霧になって』消えたんだったな。てことはレアドロ!

「・・・って、なんだこれ」

落ちていたのは何か武器のような絵が書かれた古びた紙切れだった。

手にとってよく読んでみる。

「ええと・・・?これはユニークウェポンです。この紙を手に取った方のみが発動出来る特殊武器です。・・・へぇ、良いじゃん」

なんだか良さげなもの拾ったなぁ。

「発動条件はここに親指を置く・・・こうか?・・・って、うぉ!?」

紙が突然金色に光り、その武器が姿を現し・・・。は?


「・・・なんだよこれ」 


なんだよこれ。




次回、武器は私達が扱っていたら若干恐怖を覚えるアレです。

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